アウディのPHEV「A3 スポーツバック e-tron」に試乗|Audi
CAR / IMPRESSION
2015年11月19日

アウディのPHEV「A3 スポーツバック e-tron」に試乗|Audi

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

アウディのPHEV「A3スポーツバック e-tron」に試乗

ついに日本へ、アウディ初となるプラグインハイブリッド「A3 スポーツバック e-tron」が上陸した。外部から給電可能な大容量のバッテリーを搭載し、普段使いの距離ならばほぼEVとして、旅行などではガソリンエンジンの併用で長距離もこなすエコカーだ。そんなPHEVを、アウディというブランドはどのように仕上げたのか。小川フミオ氏が試乗を通じリポート。

Text by OGAWA FumioPhotographs by HANAMURA Hidenori

アウディの環境戦略車の嚆矢として注目したい

ついに、という言葉をどうしても使いたくなる。アウディ「A3 スポーツバック e-tron(イートロン)」が上陸。最初にプロトタイプが姿を見せたのは数年前だった。アウディ肝いりのプラグインハイブリッド(PHEV)。楽しみにしていたその実車が、ついに公道を走り出した。2015年内に日本の路上にもお目見得する。

A3 スポーツバック e-tronは、外部充電(プラグイン)でき、EV(電気自動車)モードによる走行距離が長いハイブリッド車だ。110kWの最高出力と250Nmの最大トルクを発生する1.4リッター ターボエンジンと、330Nmの最大トルクのモーターとの組み合わせで、6段Sトロニック(ツインクラッチ)変速機が搭載されている。バッテリーは軽量小型のリチウムイオン電池だ。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

外観的には、グリル、前後バンパー、サイドスカートが専用のものになっているというが、目立ったちがいはない。革新は中身にあるのだ。日本での価格は564万円で、輸入元のアウディジャパンによると「最大61万円のクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費が適用」されるという。

アウディは、いまプラグインハイブリッドに力を入れている。つい最近、親会社のフォルクスワーゲンが、トップモデルである「フェートン」の次期モデルは電気自動車になると発表して話題を呼んだ。アウディも同様で、現在は、ガソリンエンジンに電気モーターを組み合わせたe-tronをはじめ、天然ガスを燃料に使ったg-tron、水素を充填する燃料電池車であるh-tronといった、近未来の布陣を発表している。

2015年9月にフランクフルトで開催された自動車ショーにおいても、フルモデルチェンジを受けたばかりの「A4」に、g-tronも設定すると発表したばかり。

なにしろ、2020年に1台あたりのCO2排出量をキロあたり95グラム以下にするという、欧州委員会による規制をクリアするためにもプラグインハイブリッドは重要な役割を担っているのだ。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

A3 スポーツバック e-tronに話を戻すと、こちらは欧州の計測値でC02の排出量は37グラム。かなり低い。日本の実情に即したJC08モードでの燃費はリッターあたり23.3kmなので、りっぱな“エコカー”といえる。今後、新型モデルでe-tron仕様が次々に出てくることが予想されるなか、日本に入ってきたA3 スポーツバック e-tronは、アウディの環境戦略車の嚆矢として、大いに注目すべきモデルだ。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

アウディのPHEV「A3スポーツバック e-tron」に試乗 (2)

他車と一線を画すのは、まずクオリティだ。

A3 スポーツバック e-tronの魅力はどこにあるか。一足とびに結論めいたことを書くと、クオリティと価格のバランスだろう。これまでプラグインハイブリッドというと、日本ではトヨタ「プリウスPHV」(約321万円)と三菱「アウトランダーPHEV」(約359万円)。外国では、メルセデス・ベンツ「S 550e ロング」(1,622万円)、ポルシェ「パナメーラ S-E ハイブリッド」(1,498万円)、同「カイエン S-E ハイブリッド」(1,167万円)と、ラインナップは限られていた。

日本勢は装備が限られている一方、ドイツ勢はたいへん高価。これまで二つは大きく離れていた。A3 スポーツバック e-tronは、先行して発売されたPHEVである「ゴルフ GTE」(499万円)とともに、クオリティ感があって価格はそこそこというニッチ(すきま)をうまく狙っている。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

A3 スポーツバック e-tronを走らせると、静かで、走りは力強く、燃費はよく(と発表されている)、ボディの作りや内装の仕上げの品質は高い。EVモードだろうがエンジンが回っていようが、外部の騒音はていねいにシャットアウトされている、速度域にかかわらず、かなり静かだ。このところ自動車メーカー各社は、シャシー各部の防振、音が入ってくる部分のシーリングの見直し、窓ガラスのクオリティ向上など、静粛性を上げるのに力を入れる傾向にある。A3 スポーツバック e-tronも例外でない。

2,635mmのホイールベースを使って構築された室内空間は、居心地がいい。ダッシュボードはセンターコンソールを含めて、基本構成はシンプルだけれど、カーブを使った表面処理がクオリティ感を生んでいるのだ。そこに配されたアウディのアイコンともいえる、4つの円状のエアアウトレットがワクワクするようなメカニカル感を付けくわえる。そして各種コントロール類のクロームが上質感につながる。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

アウディのPHEV「A3スポーツバック e-tron」に試乗 (3)

走りも、意外なほど上質だった。

A3 スポーツバック e-tronは、4つのドライブモードを備えている。一般的なハイブリッド走行の「ハイブリッド オート」、充電量を維持しながら走る「ハイブリッド ホールド」、積極的にバッテリー充電をおこなう「ハイブリッド チャージ」、そして電気モーターだけで走る「EV」だ。

くわえて、Sトロニック変速機による制御が組み合わされている。Dではアクセルオフにするとクラッチがパワートレインと駆動系から切り離して燃費をかせぐコースティングモードに入る。いっぽうSではアクセルオフ時にはエネルギー回生が働いてブレーキ効果が得られるようになるのだ。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

走りはひとことで言って予想以上に力強い。バッテリーがフル充電の場合、走り出しから52.8kmは電気モーターで走る設定という。極力、走り出しはEVモードというのはドイツ車に多い設定だ。これはあちらの燃費計測法と関係している。ただ日本でも、330NmとトルクがたっぷりあるモーターによるEV走行の恩恵が大きい。スタートから無音のままぐいぐいと加速していく。

「Sモードで走るとかなりスポーティな加速が楽しめますよ」。アウディジャパンの広報担当者のアドバイスを受けて、それを試してみると、たしかに期待以上の加速力だった。ふと速度計に目をやると、思っていたよりはるかに高い速度が出ていて驚いたこともある。Dでハイブリッド オート モードを使っている時は、エンジンのオンオフは運転者に感知できないほどで、スムーズなドライブは高得点をあげたい。

乗り心地も、A3 スポーツバック e-tronで感心した点だ。路面の凹凸が伝わることはないし、大きな上下動も丁寧にコントロールされている。

今回試乗したのは、Sライン スポーツ パッケージ(18万円のオプション)だったので、少し足回りが硬めに感じた。より快適性を求めるひとはスタンダード仕様がいいかもしれない。いっぽうでSライン スポーツ パッケージは、ハンドルを切ったときのシャープな動きが特徴的で、スポーティさを重視するひとに勧めたい。

Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3 スポーツバック eトロン

A3 スポーツバック e-tronのライバルは、と考えると、プラグインハイブリッド車で探すと、なかなか見当たらない。燃費の点からいうと、メルセデス・ベンツ「C 220 d」(559万円)や、BMW「320d」(506万円)といったディーゼルのプレミアムセダンあるいはステーションワゴンがライバルだろうか。尿素SCR触媒により排ガス対策とパワーの両立をはかったクリーンディーゼルも魅力あるが、よりモダンな印象が強いA3 スポーツバック e-tronは強いライバルを相手にしてもきっと善戦するだろう。

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Audi A3 Sportback e-tron|アウディ A3スポーツバック eトロン
ボディサイズ|全長 4,330 × 全幅 1,785 × 全高 1,465 mm
ホイールベース|2,635 mm
トレッド 前/後|1,525 / 1,495 mm
車両重量|1,570 kg
エンジン|1,394 cc 直列4気筒 ターボチャージャー
エンジン最高出力|110 kW(150 ps)/ 5,000-6,000 rpm
エンジン最大トルク|250 Nm(25.5 kgm)/ 1,500-3,500 rpm
モーター|交流同期発動機<
モーター定格出力|55 kW(75 ps)
モーター最高出力|80 kW(109 ps)
モーター最大トルク|330Nm(33.7 kgm)
システム統合最高出力|150 kW(204 ps)
システム統合最大トルク|350 Nm
バッテリー|リチウムイオン電池(96セル)
バッテリー容量|8.7 kWh
トランスミッション|6段デュアルクラッチ(Sトロニック)
駆動方式|FF
トランクスペース|280 ℓ
最小回転半径|5.1 m
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / 4リンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ 前/後|225/45R17
最低地上高|145 mm
燃費(JC08モード)|23.3 km/ℓ
CO2排出量|100 g/km
ハンドル位置|右
価格|564万円

問い合わせ先

アウディ コミュニケーション センター

0120-598-106(9:00-19:00、年中無休)

           
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