新型プジョー 308に試乗する|Peugeot
Peugeot 308 |プジョー 308
新型プジョー 308に試乗する
フルチェンジごとに大きくしていたモデル名の末尾数を固定化したプジョー。ニューモデルの「308」は、308の名前のまま、最新プラットフォーム、1.2リッターのダウンサイジング ターボと、第2世代へとあたらしく生まれ変わった。すでにヨーロッパでは、欧州カー オブ ザ イヤーを受賞した新308だが、普段の足として従来型の「308SW」を愛用する小川フミオ氏は、新型をどう評価するだろうか。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
ナチュラルが魅力
ハッチバックはフランス車の得意とするところだ。さかのぼれば、プジョーは1972年の「104」に端を発し、83年には「205」を大ヒットさせている。2014年に日本発売された新型「308」も、奇をてらったところのない、ハッチバックのルールブックどおりの定番的な作りだ。完成度は高い。長年の経験が生きているのだろう。
新型308をひとことで評してみるなら、ナチュラル。エンジンのフィール、トルクの出方、ハンドリング、乗り心地、それにインフォテイメントが、おもったとおりに動き、操作する人間の感覚に抗わない。みごとなフルモデルチェンジと感心する出来だ。
先代「308」はハッチバック車のなかでは上限ともいえる全長4,290mm、全幅1,820mmのボディサイズをもっていたが、2代目になる新型は、新世代のプラットフォームを得たことで、環境適合性を含めて、明確にあたらしいコンセプトの下で開発されたとわかる。車体は、全長4,260mm、全幅1,805mmと、少しコンパクトになった。とりわけ車重は、従来型の1,360kgに対して1,270kgとだいぶ軽量化している。
運転して印象に残るのは、エンジンだ。そもそも、今回は環境適合性を視野に、1.2リッター3気筒という、さらなるダウンサイジングが進められた。先代は1.6リッター4気筒だったから、大きな変更である。
排気量はだいぶ小さくなった。それでも最大トルクは230Nm/1,750rpm と、先代(240Nmを1,400rpmから)とごくわずかなちがいしかない。
この新世代の3気筒エンジンが、すばらしいフィールだ。ちょっと乗っただけで、走り出しも、中間域での加速も、力がたっぷりあり、かつエンジンの回転にがさつなところはなく、音質ともどもかなりスムーズ。
確実に進化をとげたと感じさせる出来なのだ。
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ゴルフの好敵手?
プジョー308は、日本だとフォルクスワーゲン「ゴルフ」がライバルになるだろうか。ボディサイズを比較すると、308が全長4,260mm、全幅1,805mm。全高1,470mmでホイールベースが2,620mmであるのに対して、「ゴルフ」は4,265mm。1,800mm、1,460mmのボディでホイールベースは2,635mmとなる。ほとんど同寸だ。
エンジンを比較すると、ゴルフにも(「ポロ」にも)1.2リッター仕様があり、4気筒だが、最高出力77kW(105ps)、最大トルク175Nm。いっぽう308は96kW、250Nmと数値上ははるかに上をいっている。BMW(と「MINI」)の3気筒しか体験したことがないひとは、ぜひプジョーの3気筒も体験すべきだと声を大にして言いたいぐらいだ。
308を操縦した感覚は、さきにも触れたとおり、とてもよいエンジンのおかげで、かなり好感触だ。数値だけでなく、実際に低回転域から太いトルクが発生する。軽くアクセルペダルを踏んだだけで、すっとクルマが前に出る感覚は気持ちがよい。ボアが75mmであるのにストロークが90.5mmもあるのを利用して、低回転域でトルクがたっぷりあるため運転がしやすい。
3,000rpmのあたりでややトルクカーブが落ち込む感じがなきにしもあらずだが、ハンドルの後ろに設けられたパドル式シフターを使うなどして4,000rpmあたりをキープすると、パンチがある加速がちゃんと味わえる。過給の制御も無理をしているところがなく、1.2リッターとはとうていおもえない力強さなのだ。
エンジンルームからは吸気音も過大な排気音も、耳につくメカニカルノイズも入ってこない。全体に防音対策にお金がかけられていることと相まって、高級な感覚が強い。200万円台のハッチバックとしては、かなり質感が高い。ゴルフに迫っている。
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市街地もワインディングも楽しい
操縦する楽しさはエンジンだけでない。フランスをはじめ、山岳路が多い欧州うまれだけある。電気式になったもののステアリングは先代より正確性を増した感が強い。感触のいい革巻きのハンドルは、立体的なグリップ形状のうえ、フラットボトムタイプで、ドライバーの“やる気”を引き出してくれる。走りに手を抜かないという欧州車の最大の美点がちゃんと備わっているのだ。
サスペンションは、従来型308よりやや強く硬さを感じるものの、それでも市街地では路面の凹凸を丁寧に吸収してくれる。高速道路でも、長いホイールベースとともに、実用域でのトルクの太さゆえ、安逸に高速を維持できる。いっぽう、ハンドルを切ったときの車体の反応の早さは期待以上だ。
いっぽう、低回転域で気持ちがよい操作ができるのが新型308の特徴なので、市街地の使用が多いひとにも、とてもいいパートナーになってくれる。グレードによって装備はことなるが、リアビューカメラや、先行車に近づきすぎた場合のアラート、ブラインドスポットモニターも備わるので、使い勝手はよいはずだ。
細部に凝るのが、プジョーのよさだ。その代表例がダッシュボードの造型。メータークラスターと、ダッシュボードのインフォテイメントと空気吹き出し口が一緒になった部分とは、楕円形に近いモチーフが使われている。そして二段重ねという建築的なモチーフで構成されている。
さらに計器も、右側に置かれた回転計は、反時計回りに針が動くようになっている。実用上のメリットは疑わしいが、シャレとしておもしろい。70年代のアルファロメオ「ジュリエッタ」をおもい出した。
でも、ハンドルに隠れてメーターも、各種のメッセージも読むのが難しい。よくこれで製品化したものだと、ある意味、デザイン優先の大胆さに感心するほどである。おそらく次のマイナーチェンジで、もっと“ふつう”のデザインに変わるのではないだろうか。
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クルマ選びは人生と似ている
筆者は、わりと長いあいだ、家族用に従来の「308SW」を使っている。途中のマイナーチェンジで6段オートマチック変速機が搭載されたが、筆者のクルマは4段。しかも遮音がじゅうぶんでなく、エンジンルームからあまり品のよくないメカニカルノイズが入ってくるし、サイドウィンドウからの風切り音も大きい。
それでも乗りつづけたいとおもわせるのは、ソフトな乗り心地による快適性と、(SW専用装備だが)3つが独立して動く2列目シートの機能性ゆえだ。中央のシートのバックレストを倒せば3名分のスキー板が室内に収納できるし、シートのバックレスト角度が調節できるうえ、肩のところには充電ソケットを備える。趣味のある生活にぴったりの装備が満載なのだ。
フランスの実用的ハッチバックのよさは、走りもさることながら、このような気配り満載のところだ。日常の使い勝手がとてもよく考えられている。そういうことは、毎日使っていると、気づくのである。
日本でのライバルは多い。284.6万円からのプライスを考えると下記がおもいつく。フォルクスワーゲン「ゴルフ」(264万円〜)、「ポロ」(228.4万円〜)、「MINI 5ドア」(298万円〜)、メルセデス・ベンツ「Aクラス」(298万円〜)あるいは「GLAクラス」(351万円〜)、BMW「1シリーズ」(299万円〜)、アルファロメオ「ジュリエッタ」(317万5200円〜)、シトロエン「DS4」(337万6000円〜)、はたまたレクサス「CT」(366万1714円〜)。308は、互角に勝負する出来だ。シートの座り心地はとてもいいし、いっぽうドアの開閉音を含めて質感はドイツ車なみに上がっている。ガラススルーフ仕様もお勧めできる。
実際は、乗っているうちにもっと好きになる。そこに308シリーズの真骨頂がある。購買時は難しい選びの基準だけれど、なんだか人生と似ている。
もしフランス車未体験なら、3年間つきあってみるのはどうだろう。それが5年になり、その先にまた別のフランス車が待つクルマライフになっても驚かないのだけれど。
Peugeot 308 Cielo|プジョー 308 シエロ
ボディサイズ|全長 4,260 × 全幅 1,805 × 全高 1,470 mm
ホイールベース|2,620 mm
トレッド 前/後|1,555 / 1,555 mm
重量|1,320 kg
エンジン|1,199 cc 直列3気筒 ターボ
ボア×ストローク|75.0 × 90.5 mm
圧縮比|10.5 : 1
最高出力| 96 kW / 5,500 rpm
最大トルク|230 Nm / 1,750 rpm
トランスミッション|6段オートマチック
駆動方式|FF
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|トーションビーム
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ディスク
燃費(JC08モード)|16.1 km/ℓ
価格│345万8,000円
プジョーコール
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