LEXUS CT200h|レクサス CT200h 試乗
LEXUS CT200h|レクサス CT200h
新境地を切り開くハイブリッドコンパクト(1)
レクサスから、ハイブリッドシステム搭載の高級ハッチバック「CT200h」が登場。燃費と操縦性の高さがうりものだ。
文=小川フミオ写真=荒川正幸
Cセグメントにおけるハイブリッド車という特権
レクサス CT200hは、1.8リッターガソリンエンジンに、THS-IIとよばれるトヨタ独自のハイブリッドシステムを組み合わせたパワートレインをもつ。外観にレクサスの特徴を活かしつつ、内装には高価な素材を使用。子どもが巣立った世代など、あたらしいマーケットの開拓を目指すという。
「そんなに大きなクルマでなくていい。ただしコンパクトでもそれなりの質感が欲しい」というひとはけっこういるはず。そんなマーケットに向けたモデルといえる。想定競合車としては、アウディ A3やBMW 1シリーズの名が挙がる。CT200hならではの強みは市街地での燃費にすぐれるハイブリッドシステムだろうか。
CT200hのラインナップはベースグレードにくわえて、3つのバージョンからなる。スポーティな「Fスポーツ」(405万円)、「バージョンL」(430万円)、「バージョンC」(370万円)。うち、Fスポーツのみ専用の足まわりを装備し、スポーツ性能が少し強化されている。
CT200hが属するセグメントは業界で「Cプレミアム」と呼ばれるもの。ミドルクラスのセダンを中心とする「Cセグメント」ではクルマの購入条件として、レクサスがおこなった市場調査では、スタイルを筆頭に、価格、バリュー・フォー・マネー(支払った金額に見合う価値)、室内スペースと優先順位がつけられるという。
アジリティと乗り心地を両立
いっぽう、CT200hが位置するCプレミアムでは、筆頭にスタイルが来るのは変わらないが、走行性能、安全性、パッケージング(コンパクトな外寸に広い室内など)とつづくという。そこで「アジリティと乗り心地の両立を目指した」と開発担当者は語る。
ベースのシャシーはレクサス HSに近いが、「前後サスペンションメンバーの剛性を上げ、サスペンションタワーをブレースで補強し(ねじり剛性をアップさせ)、ドアなど開口部の剛性確保のためスポット溶接点を見直した」とする。サスペンションのストラットタワーバーにはヤマハと共同開発したパフォーマンスダンパーを採用。ハンドルの入力に対するボディの応答性アップとともに、振動や騒音の低減をはかったとする。
実際に操縦すると、たしかにステアリングはスポーティで、中立ふきんでも車体の反応は速く、切り込むとすぐにノーズが向きを変える。トヨタおよびレクサスにおける、最近のクルマがもつステアリングのよさは特筆もの。ただ重さとのバランスでいうと、重すぎると思うひともいるかもしれない。
ダイヤルで選択できるドライブモードセレクトなる機構が備わり、スポーツモードを選択するとモーターの電圧があがり(パワーがあがり)、ハンドル操作に対するレスポンスがよくなる。実際、走行中にノーマルモードと切り替えて比べてみると、差は歴然。ノーマルモードではかったるさを感じる中間加速時も、カバーしてくれる。
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新境地を切り開くハイブリッドコンパクト(2)
市街地でのEVモードも選択可能
FスポーツもバージョンLも(そしてバージョンCも)、基本的には乗り味は似ている。Fスポーツだから飛び抜けてスポーティということはない。「Fスポーツはハードではない。バージョンLのほうがスポーティと思うひとがいるかもしれない。限界域でのキビキビ感で差が出る」と開発担当者は言う。「限界」を試せるひとは、まずいないだろうが。おなじFスポーツでもIS 350のそれとはだいぶ性格がことなる。
Fスポーツは乗り心地が硬すぎるということもない。コーナリング時の挙動において、リアの沈みこみ方とか、多少のキャラクターのちがいを見せる程度だ。それも乗り比べたときによほど注意していないと、気づかないレベル。外観や内装などの好みで選択しても、まちがった結果にはならないと思われる。
CT200hのトランスミッションは電気式無段変速だが、ギアセレクターのSモードを選べば、ハンドルに備わったパドルシフトで6段階に固定されたギア比を使うこともできる。3,000rpm以下ではいまひとつ力不足を感じさせるエンジンだが、4,000rpmから上では生き返ったように力を出し、ドライブの楽しさを味わわせてくれる。そのときはモーターもアシストしてくれるが、「走りに特化するなら、ハイブリッドでなくてターボチャージャーでいいのではないか」とも思った。
EVモードも備え、市街地の低速走行なら電気モーターのみで走行可能。おとなしい走りになるが、車重1.4トンのクルマをスムーズに動かしてくれる。アクセルペダルを踏む足に力を入れるとエンジンが目覚める。それ以降はスムーズで、アクセルペダルを閉じるか、ブレーキペダルを踏んだときの回生エネルギー吸収システムの作動は細やかな制御だ。
乗り心地はややゴツゴツ感がある。とくに多少凹凸のある路面で速度があがると、それが顕著だ。ハンドルは上手にダンピングが効かされていて、安っぽさにつながるショックは遮断されているが、足裏には路面状況が伝わってくる。17インチタイヤ装着車はその傾向がとくにあり、バージョンCに用意される16インチタイヤのほうが、あたりがソフトに感じられた。
シートヒーターが内蔵される機能的なシート
ダッシュボードのデザインは、どことなくアウディ A7などを連想させる、クリーンでかつ力強いラインで構成されている。そこにウッドパネルがよいアクセントとなっている。ウッドパネルは色調もライトなものからダークなものまで数種類用意され、オーナー個人が交換することも可能という。おもしろい試みだ。
シートは座面の前後長がやや短いが、座り心地は概して良好。上半身のホールド性はよく、座面はすべりにくい。シート表皮は、レザー、ファブリックを用意し、各バージョンのファブリックシート、バージョンLのレザーシートにもヒーターが内蔵される。シートのソフトさを好みつつも、冬場にヒーターが欲しいひとは多いのでは。これはありがたい機能だ。
シャシーにかなり凝っているのがわかる。しかし燃費にこだわった結果か、ハイブリッドシステムのパワートレインが、「ファン(楽しさ)」という目標のひとつとぶつかりあっているように思える。つまり、ややちぐはぐな印象が否めない。欧州のライバルをみると、ガソリンエンジンでも、制御技術の見直しや、効率のよいトランスミッションと組み合わせることで、実燃費をよくしている。同様のことは可能だろう。
CT200hは、いまレクサスがもつコンテンツを、少し盛り込みすぎたように思えてしまう。
クオリティ感のあるハッチバックというマーケットは、確実に存在するだろう。そこに向けて上質な製品を出してもらえると、クルマ好きはうれしい。高級ハッチバックというCTのコンセプトは正しい。ガソリンエンジンバージョンが欲しいと思うのは望みすぎだろうか。
LEXUS CT200h|レクサス CT200h
ボディ|全長4,320×全幅1,765×全高1,450mm
ホイールベース|2,600mm
車両重量|1,380kg
エンジン|1.8リッター DOHC 直列4気筒 16バルブ VVT-i(アトキンソンサイクル方式)
最高出力(エンジン)|73 kW(99ps)/5,200 rpm
最大トルク(エンジン)|142 Nm(14.5kgm)/4,000rpm
最高出力(モーター)|60kW(82ps)
最大トルク(モーター)|207Nm(21.1kgm)
システム全体 最高出力|100kW(136ps)
トランスミッション|電気式無段変速機
バッテリー|ニッケル水素電池
10・15モード燃費|34.0km/ℓ
10・15モードCO2排出量|68g/km
駆動方式|2WD(FF)
乗車定員|5名
価格|355万円から