日本文化とおもてなしの真髄とともに味わう 季節と自然を切り取ったオートクチュールフレンチ -Soukatei-|TRAVEL
LOUNGE / TRAVEL
2023年5月25日

日本文化とおもてなしの真髄とともに味わう 季節と自然を切り取ったオートクチュールフレンチ -Soukatei-|TRAVEL

TRAVEL|日本文化とおもてなしの真髄とともに味わう 季節と自然を切り取ったオートクチュールフレンチ -Soukatei-

自然の恵みを活かしきった和食とフレンチ

「懐かしく、慕わしく」をコンセプトに、最高の日本文化とおもてなしを味わえる時間と空間を堪能させてくれる、古民家煉り。太陽の光、雨や風の音、土や緑の香り、虫や鳥の声といった誰もが懐かしさをどことなく感じる田舎の風景と、源泉かけ流しの療養温泉、そして旅に欠かせない食。食は、自然・健康をテーマにした日本料理「料匠虎白」と、フレンチ「Soukatei」のいずれかから選べるようになっている。

Text & Photogragh by by IJICHI Yasutake

「美味しい料理」を超えた先にあるものとは

今回頂いたのは、Soukatei。福岡の東区香椎(かしい)で17年間腕を振るいミシュランで1つ星を獲得したオーナーシェフ金丸建博氏が、2021年に生産者とより近い場所、より多くの人と繋がれる場所を求め、ここに移転し、再出発。その時々の最高の素材を使いながら、季節と自然を切り取ったオートクチュールのコースを仕立ててくれる。金丸氏はマダムと共に店を切り盛りしながら、研究と食品製造を兼ねたラボを創業したり、地域素材の魅力発信に自治体とともに取り組むなど、様々なプロジェクトに参画する。その食への情熱とこだわり、哲学は熱く、温もりと優しさ、敬意にも溢れる人柄が、素材の仕入れ、使い方、調理の仕方、一皿一皿のプレゼンテーションに至るまでの中に凝縮されているので、ぜひとも味わって頂きたい。
Soukateiでは、庭園で様々な野菜や花、薬草を育てている。ルッコラ、フェンネル、ローズマリー、ミント、アーティチョーク、ナスタチウム、馴染み深い野菜から普段なかなか食べることがない花まで多彩。可食部は料理を彩る素材としてそのまま使うだけでなく、酢漬けやピクルスにしたり、発酵ドリンクにしたり。可食部以外の部位や料理で使った端切れなどは、燻だしにしたり、調味料やソースにしたりする。ムダをなくすためということだけではなく、どうしたら素材のポテンシャルを最大限引き出せるのか、どう使ったら最高の料理を提供できるかということへの探求心と発想力から成しえることで、穏やかな人柄からは想像できないほどの実行力と再現力はすさまじいものがある。
貯蔵庫に貯蔵されているカカオの黒麹やタラの芽のピクルスなどはまさに垂涎もの。類まれな種類を揃えるお酒と共に貯蔵されている。庭園も貯蔵庫も、金丸夫妻にお願いすれば見せてもらえるし、摘みたてを味わせてももらうこともできる。なんせ植物は摘みたてが一番美味しい。期待を遥かに上回る物事に出逢うとどうしても表現が陳腐になってしまいがちだけど、鮮度が違うから香りと味の濃さの次元が違う。Soukateiを訪れたら、ぜひ目で見て、金丸夫妻の話を聞いて、感じてもらいたい。
Soukateiで使われる素材のうち庭園で採れる野菜は実はほんの一部で、メインは天草や宗像、筑後、犬鳴川などの界隈で採れる野菜や果物や畜産物と、地元の鐘崎漁港に揚がる魚。九州の伝統野菜や幻と言われるような希少な素材も使われている。前述にしたように、Soukateiには決まったコースはなく、季節と自然をそのまま切り取って、その時々の素材と金丸氏のインスピレーションを提供する至高のコース。古民家煉りが大切にしている「日本の旬」を食でしっかりと具現化するだけでなく、素材ひとつひとつが育まれた環境、背景にある物語、作り手の哲学を写し出したものとなっている。
さて、この日頂いたのは全15皿。クラフトビール、ワイン、低アルコール、日本酒、自家製の発酵ドリンクや薬草茶などで組み立てられたスペシャルペアリングで頂いた。
【Amuse】
・ブロッコリーの花クレープ 大根 米クリーム さよりタラマー
・ジャガイモミルフイユ グリビッシュ 冬米夏草
・クレソンカップ 葉わさびと豆類 生茶葉のクリーム
・豆とサヤゼリー モミ 藤の花
・トマトクレームフェッテ 苺 モッツアレラムース
・フキのチュイル フキと青文字

【Entrée】
・有明海アゲマキとハマグリ 赤玉ねぎと庭の畑の玉葱 宗像産ブラッドオレンジ 野草
・犬鳴川のクレソン キャビア 桧香
・大木町アスパラガス薪焼き 鴨の卵ソース サマートリュフ
・天草産水イカと唐津産白イチゴ 山椒

【Poisson】
・石鯛薪焼き 島らっきょう 空豆 エストラゴンオイル

【Viande】
・筑後産鴨薪焼き 七山の山菜(せり コゴミ  こしあぶら) 褒美しいたけ

【Dessert】
・かきどうしのクリームディプロマット 液体窒素あけびつるのクリーム 生茶葉
・フヌイユミルフイユ わら香アイス

【Petit four】
・黒文字マカロン 黒米フランボワーズショコラ 紫人参レース黒オリーブ
ブロッコリー、アスパラ、クレソンから、フキ、セリ、コゴミ、こしあぶら、水イカや石鯛、鴨まで、プティフールのマカロンも最近注目されている黒文字を使用。野菜、果物、薬草、魚介、肉、全100種類近い素材を頂いたと思う。素材ひとつひとつが持っている濃厚な甘みやまろみ、苦味、酸味は言わずもがなながら、それぞれが複雑に且つ絶妙に絡みあって、何とも言えない大人の美味しさが広がってくる。それはおそらく味覚だけで感じていることではなく、古民家煉りとSoukateiでの体験、宮若の自然の香りや音、庭園で味わった野草、金丸夫妻との深みある会話があったから、プレートひとつひとつのプレゼンテーションと相まって、無意識的に五感全てをフルに使っていることで味わえる感覚なのだろう。
Soukateiでは単純なる「美味しい料理」ではなく、季節、旬、地域、繋がり、歴史、想い、こだわり、パッション、技巧、演出、物語、哲学という数々の「概念」を頂ける。こうした概念は、色々な経験を積んできた大人でないと理解や共感はできないが、それができた時に感じる美味しさは味覚だけなく味わうものではなく、全身で脳でも味わうものだから、それまでに経験した味わいの比ではない。Soukateiは、最高の素材が持っている味の「複雑で絶妙な組み合わせ」や「概念」を美味しく感じられるようになった大人が至福のひとときを堪能できる最高の場所ではないだろうか。
古民家煉り(こみんかねり)
場所|福岡県宮若市乙野667-3
Miyawaka Soukatei
場所|福岡県宮若市乙野666-2
問い合わせ先

古民家煉り(こみんかねり)
Tel.0949-52-6380
https://kominka-neri.com/

問い合わせ先

Miyawaka Soukatei
Tel.0949-52-6795
https://info-soukatei.com/

                      
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