「知る」は、おいしい! 星野リゾート リゾナーレ那須|TRAVEL

農園のピンツィモーニオ(イタリアのスティックサラダ)

LOUNGE / TRAVEL
2020年9月29日

「知る」は、おいしい! 星野リゾート リゾナーレ那須|TRAVEL

TRAVEL|星野リゾート リゾナーレ那須

このひと皿と出合うために、星野リゾート リゾナーレ那須へ(1)

何かと話題の、政府肝いりの観光需要喚起策「Go To トラベル」キャンペーン。皆さん、それぞれ思うところはあるでしょうが、今、すんごくお得に、旅ができるということは間違いありません。今までになく行動が制限された時期を経て、今あなたはどんな旅をご所望ですか? 私はですね、って聞かれてもいないのに意気揚々と答えますが、大自然の中でのんびり……でもステイする部屋やいただく料理は洗練されたものがいいな……って、へなちょこの都会人そのものみたいなことを言ってみますが、正直な気持ちです……。

Photographs by OHTAKI Kaku|Text by HASEGAWA Aya|Edit by TSUCHIDA Takashi

食べて美味しく、聞いて納得。那須高原のテロワールを丸かじり

そんなわけで足を運んだのは、栃木県北部・那須岳の山裾(やますそ)に位置する「星野リゾート リゾナーレ那須」(以下「リゾナーレ那須」)。農業とリゾートを融合させた新しい旅のスタイル“アグリツーリズモリゾート”を提唱する日本で初めての宿泊施設として、2019年11月オープンしました。
42000坪、東京ドーム約3個分もの広大な敷地には、「アグリガーデン」と呼ばれる畑や、温室(「グリーンハウス」)を備えています。田んぼも隣接していて(※田んぼは地元農家の所有ですが、田植え、収穫などにリゾートのスタッフが携わり、昨年から稲作に挑戦しているそうです)、那須ならではの自然を楽しみながら農体験をはじめとするアクティビティが体験できます。
後ほど改めて紹介しますが、「アグリガーデン」と「グリーンハウス」では、現在、年間約80種類の野菜、約100種類のハーブを育てています。これだけ多くの農作物を育てているのは、斜面が多い山裾という立地が多品種少量栽培に向いていることに加え、数多くの野菜を育むことでゲストに多様性を楽しんでもらおうという意図もあるとか。
うひょ、これは美味しいものがいただけそうです。
OTTO SETTE NASU
メインダイニング「OTTO SETTE NASU」は、施設のいちばん奥にありました。森の中を潜り抜けていくアプローチも気分を盛り上げます。吹き抜けの天井、大きな窓の向こうには緑が迫り、これぞ高原リゾートのレストランといった風情。テーブルには野菜をモチーフにしたガラス細工が置かれていました。
「美味しいものを食べるぞ」モードは、もはや最高潮です。その「OTTO SETTE NASU」でいただけるのは、那須ならではの食材を、ヨーロッパでほぼ緯度を同じにするイタリア・トスカーナの調理法を用いた独創的な料理。コースはおまかせ1本です。
OTTO SETTE NASU木下猛夫料理長
料理長の木下猛夫さんは、北海道小樽市出身。地元の寿司屋から料理人としてのキャリアをスタートし、懐石料理店などを経て、2014年に星野リゾートに入社。「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」総料理長の政井 茂さんのもと、イタリア料理を約5年間修業しました。
和食からイタリアンへの転身に戸惑いはなかったかと尋ねると、「素材を生かす点は同じ。加熱し、塩だけでいただくことも多く、とくに抵抗はありませんでした」。イタリアンと和食、たしかに通じるものがあるかもしれません。
彩り豊かな小さな前菜
というわけで、コース1品目の「彩り豊かな小さな前菜」から、いきなり先制パンチが繰り出されました。野菜を中心とした地元の食材を、トスカーナの伝統料理に仕立てた小さな前菜たちは、ひとつひとつが強烈な個性を放っていました。誰もが主役を主張しながらも、喧嘩するのではなく、お互いを認め合い、それぞれの個性を尊重しながら、共に最高峰を目指そうという気概を感じます。
ひとつひとつじっくり味わっては幸せを噛みしめます。そして、どれも初めていただくものばかり、どれもこれも手が込んでいるものだと分かります。
「コースの入り口として小さなプレゼンテーションを楽しんでいただきたい、そして、トスカーナと那須を感じて欲しい」と、器はこの前菜専用のものをオリジナルで作ってもらっているそう。ほかの料理にも、陶胎漆器、栃木の益子焼や茨城の笠間焼など周辺地域の焼き物を使用しており、見た目にも楽しませてくれます。
農園のピンツィモーニオ(イタリアのスティックサラダ)
お次は、「農園のピンツィモーニオ(イタリアのスティックサラダ)」。30種類の野菜と、目の前でカットした生ハムやグリルしたカチョカバロなどのチーズを芸術的に盛り付けた一皿です。リゾートを象徴するシグニチャー料理と言っていいでしょう。
「ガラスの器に入っている野菜は、収穫するように手でお召し上がりください」とスタッフがアドバイスしてくれました。アンチョビとパプリカのバーニャフレッダソース(バーニャカウダソースの冷たいバージョン)が添えられていますが、弾むように溌剌とした地野菜はそのままでも十分に美味。塩とオリーブオイルも用意されていて、「これはどう食べようか」と迷うのがまた楽しいんです。
収穫状況によって異なりますが、リゾート内の「アグリガーデン」で栽培したハーブや野菜も使われています。この日は、黒ピーマンのハマクロピーや、小さなスイカのようなマイクロキュウリ、赤オクラ、円盤型のUFOズッキーニ、スターオブデイビッド、ブロッコリーのスティックセニョールなどが「アグリガーデン」から、ここ「OTTO SETTE NASU」に運ばれてきました。
あるものは生で、あるものは軽くボイルして──。それぞれの特性を最大限に引き出す、調理法・味付けで提供された丹精なサラダは、もはや贅沢の極みです。食べる側も、少しでも美味しく食べてあげたいと気合いが入ります。
OTTO SETTE NASUソムリエ板橋大輔さん
そして生ハムやチーズの威力も侮れません。野菜の美味しさを、旨味と塩味で、さらなる高みへと引き上げます。ソムリエの板橋大輔さんが提案してくれた、果実味のあるマルケ州のロゼワインとも好相性です。
さて、魚料理の「カジキマグロの香草パン粉焼 トリッパのトマト煮込み」は、ほうろうの鍋に入ったまま運ばれ、スタッフがゲストの前で取り分けてくれました。そもそもカジキマグロとトリッパの煮込みを一緒にいただくのは、人生初の経験でした。しかし、これがまた白眉。生でもいただけるカジキマグロをあえてレアに火入れしているところに、和食で培った料理長のセンスが光ります。
トマトで煮込んだ白いんげんはホクホクで、カジキマグロの上には、香草のパン粉でできた深い緑の森が広がっていました。なるほど、ボリューム感のあるソービニヨンブランがぐいぐい進みます。
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