INTERVIEW|『インヒアレント・ヴァイス』ポール・トーマス・アンダーソン監督 独占インタビュー
LOUNGE / MOVIE
2015年4月14日

INTERVIEW|『インヒアレント・ヴァイス』ポール・トーマス・アンダーソン監督 独占インタビュー

INTERVIEW|『インヒアレント・ヴァイス』
天才覆面小説家で知られるトマス・ピンチョン作品初の映画化

ポール・トーマス・アンダーソン監督 独占インタビュー

ノーベル文学賞候補の常連であり、謎に満ちた覆面作家トマス・ピンチョン。彼が自身の小説で初の映画化を許した相手は、深い人間ドラマと独特の映像美で世界的に熱狂的なファンをもち、カンヌ、ベルリン、ベネチアの三大映画祭のすべてで監督賞に輝くという、こちらも天才と名高きポール・トーマス・アンダーソン監督だった――。『インヒアレント・ヴァイス』で実現した強力タッグの裏側を探るべく、OPENERSはアンダーソン監督の貴重な“生の声”を入手。ピンチョン作品への熱い思いから、映画化までの経緯を語ったインタビューを独占でお届けする。

Edited by TANAKA Junko (OPENERS)

『インヒアレント・ヴァイス』の作品紹介を先に読む

久しぶりの群像劇は最高だった!

『インヒアレント・ヴァイス』|INTERVIEW

ポール・トーマス・アンダーソン監督

――原作を読んだときの感想は?

トマス・ピンチョンの作品が発表されるといつも――ほかの作家なら滅多にないけど――必ず、家族も友達もシャットアウトして、部屋に閉じこもって読みふけるんだよね。それで、この本に限っては、「これって絶対映画にできない」って思ったんだ。でも、その瞬間に「絶対にどうにかして映画化する方法を見つけたい」って思いも湧いてきた。

――あなたの作品は男性像を浮き彫りにする内容が多いですが、今回は女性のボイスオーバーを使っていたのが印象的でした。

(ボイスオーバーを担当した)ジョアンナ(・ニューサム)のことは、以前から知っていて、彼女のしゃべり方がすごく好きだったんだ。本のなかでは助演的な役柄なんだけど、ドックの一番仲のいい女友達という感じで、いつでも彼より物事を知っていて、しかも正しいことを言ってくれる人。だから、映画を作っている過程で、彼女が語り部になるのがいいんじゃないかと思えたんだ。最初は試験的にやってもらってたんだけど、テイクを重ねるごとにしっくりきたんだよね。だから、そこに気づいてくれて嬉しいよ。

じつはこれまで、ボイスオーバーを使うことはタブーだと思っていたんだ。だれかに刷り込まれたんだろうね。多分ナレーターに物語を語らせるのではなくて、出演しているキャラクターが物語を説明できなくてはいけない、って思い込んでいたから。だからいままでボイスオーバーを使ってこなかったんだ。

『インヒアレント・ヴァイス』|INTERVIEW

『インヒアレント・ヴァイス』|INTERVIEW

だけど、よく考えてみたら、ぼくの大好きな映画にもボイスオーバーを使っているものがあると気づいてね。それに原作のなかで、キャラクターの語っている言葉がどれも素晴らしくて、しかも物語を描くうえでとても重要な要素だと思ったんだ。でも、それを本人に言わせてしまうと、物語からそれてしまったり、じらされたり、足踏みしたりしてしまうことがあって。だから、ボイスオーバーという、最高の方法でくわえようとしたんだ。ジョアンナと仕事ができて本当によかったよ。

――笑えるトーンとダークでネガティブな音楽との対比が面白かったですが、どのようにアプローチしたのですか?

ダークでネガティブだったって、マジで!?(笑)

――(笑)いい意味でダークでネガティブということです。

ジョニー・グリーンウッド(音楽担当)に伝えておくよ。「いい意味でダークでネガティブだ」って言われたとね。だけど、正直言って、君の言っていることは、つまりトマス・ピンチョンの世界観そのものだと思うんだよね。それこそが、彼が本のなかで実現していることだと思うからね。非常に文学的な、とは言いたくないんだけど……。それがいい表現とは思えないからね。

そうじゃなくて、彼の作品はとても美しい文体で書かれていて、しかもとてつもなく深く、読者の心を打つようなテーマを扱っていると思う。しかも、それが子どもっぽい下世話なジョークのなかに描かれていたりするんだよね。僕らが目指したのもそこで、原作のフィーリングに可能な限り忠実であろうとしたんだ。

『インヒアレント・ヴァイス』|INTERVIEW

――この作品は35ミリで上映されるそうですね。フィルムにこだわる理由を聞かせていただけますか?

それは僕が映画を撮りはじめたころからこだわっていたことだし、唯一知っているやり方とも言えるからね。だからそれをやりつづけて、美しいプリントの映像を観つづけてもらいたいと思うんだ。それがいつ不可能になるのかということも含めてスリリングだしね。でも、フィルムって本当に美しい映像だと思うんだ。だから可能な限り、これからもつづけていきたいと思っている。

それ以外のものを否定するわけではなくて、ぼくは(フィルムとデジタル)両方が存在することができると思うからね。現に映写機もちゃんと残ってるし、しっかり保管されてるわけだから。単純になくすべきではないと思うんだよ。

――久しぶりに群像劇を監督するのはいかがでしたか?

それは最高だった。これだけの優れた俳優と仕事できたわけだからね。残念だったのは、ほとんどの俳優と2〜3日しか仕事できなかったことだね。さすがに落ち込んだよ。はじまってすごくノってきたかと思ったら、もう彼らはほかの映画の撮影があって、去らなくてはいけなかったから。だから、僕はいつもホアキン(・フェニックス)と取り残される羽目になっていたんだよね(笑)。でも、うん、最高だったよ。夢が叶ったとすら言えると思うよ。

『インヒアレント・ヴァイス』|INTERVIEW

Paul Thomas Anderson|ポール・トーマス・アンダーソン
1970年、米ロサンゼルス生まれ。ポルノ業界で生きる人びとの光と影を描いた『ブギーナイツ』(1997年)のヒットで一躍注目される存在に。1999年に手がけた『マグノリア』がベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞。その後、『パンチドランク・ラブ』(2002年)がカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』(2007年)がベルリン国際映画祭の監督賞を受賞するなど、手掛けた作品のほとんどが各国の映画祭で賞レースに参戦している。前作『ザ・マスター』(2012年)もベネチア国際映画祭の監督賞を受賞し、カンヌ、ベルリン、ベネチアの三大映画祭のすべてで監督賞に輝く稀有の監督となった。

インヒアレント・ヴァイス
4月18日(土)よりヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田ほか全国公開
監督・脚本│ポール・トーマス・アンダーソン
出演│ホアキン・フェニックス、ジョシュ・ブローリン、オーウェン・ウィルソン、キャサリン・ウォーターストン、リース・ウィザースプーン、ベニチオ・デル・トロ
配給│ワーナー・ブラザース映画
2014年/アメリカ/149分
http://wwws.warnerbros.co.jp/inherent-vice/

©2014 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC,AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC ALL RIGHTS RESERVED

           
Photo Gallery