MOVIE|ホドロフスキー監督23年ぶりの新作『リアリティのダンス』
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2015年1月28日

MOVIE|ホドロフスキー監督23年ぶりの新作『リアリティのダンス』

MOVIE|世界的な巨匠が原点に立ち戻った残酷で美しい人間賛歌

ホドロフスキー監督23年ぶりの新作『リアリティのダンス』

世界的な巨匠アレハンドロ・ホドロフスキー監督が、23年ぶりに発表した新作『リアリティのダンス』。現在83歳の監督が原点に立ち返って描いた自伝的作品は、少年の瞳をとおした残酷で美しい人間賛歌となった。

Text by YANAKA Tomomi

現実と空想を瑞々しく交差させ、ホドロフスキーの少年時代を辿る

1929年、チリでロシア系ユダヤ人の家に生まれたアレハンドロ・ホドロフスキー監督。1970年に発表された『エル・トポ』は世界を席巻。映画を観たジョン・レノンが虜になり、『エル・トポ』と次作『ホーリー・マウンテン』の配給権を、45万ドルで買い取ったという逸話が残るほど。また、コミックの原作者としても有名で、フランスでは30シリーズ以上ものコミックが出版されるなど、多彩な才能の持ち主としても知られている。

今年6月には、1975年から製作に撮りかかったものの、未完のSF大作『DUNE』についてのドキュメンタリー『ホドロフスキーのDUNE』が公開。ホドロフスキー監督に俄然注目が集まるなか、1990年の『The Rainbow Thief』(日本未公開)以来、23年ぶりの新作『リアリティのダンス』が日本でもロードショーされる。

監督の生まれ故郷でもあるチリの田舎町で撮影され、ホドロフスキー監督の少年時代をたどる旅となった本作。父親役やアレハンドロ少年に瞑想を教える行者役には、ホドロフスキー監督の実の息子たちも出演。自身の少年時代と家族への想いを、チリの鮮やかな景色のなかで瑞々しく交差させ、ファンタスティックに描いている。

権威的な父親との軋轢、母親に愛されたいと願う気持ち

1920年代、幼少のアレハンドロ・ホドロフスキーは、ウクライナから移民してきた両親と軍事政権下のチリに暮らしていた。ロシア系ユダヤ人であることから肌が白く、鼻が高かったため、学校でも「ピノキオ」といじめられ、苦しんでいたアレハンドロ少年。

そして権威的で暴力的な共産主義者の父との軋轢(あつれき)と、アレハンドロを自身の父の生まれ変わりと信じる元オペラ歌手の母親に愛されたいと願う気持ち。そんなアレハンドロが見た“世界”とは――

軍事政権下のチリで生きる少年の夢。ホドロフスキー監督は語る。「これは人びとの魂を癒す映画であり、映画のなかで家族を再生することで、私の魂を癒す映画でもあった」と。

『リアリティのダンス』
7月12日(土)より、新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷アップリンクほか全国順次公開
監督・脚本│アレハンドロ・ホドロフスキー
出演│ブロンティス・ホドロフスキー、パメラ・フローレス、クリストバル・ホドロフスキー、アダン・ホドロフスキー
配給│アップリンク、パルコ
2013年/チリ・フランス/130分
http://www.uplink.co.jp/dance/

© photos Pascale Montandon-Jodorowsky / © “LE SOLEIL FILMS” CHILE・“CAMERA ONE” FRANCE 2013

           
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