INTERVIEW|映画『ゼラチンシルバー LOVE』 操上和美監督×祐真朋樹 インタビュー対談 その1
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2015年5月8日

INTERVIEW|映画『ゼラチンシルバー LOVE』 操上和美監督×祐真朋樹 インタビュー対談 その1

INTERVIEW|映画『ゼラチンシルバーLOVE』

操上和美監督 × 祐真朋樹 インタビュー対談(その1)

写真家であり、クリエイティブディレクターでもある操上和美さんの初監督作品の映画『ゼラチンシルバー LOVE』。
その衣装は、これまた映画初挑戦となるスタイリストの祐真朋樹さんが担当。当代きってのクリエイターふたりが、それぞれの「初」について語ります。まずは、ふたりの出会いから──

Text by OPENERSPhoto by Jamandfix

映画は総合芸術ファッション

祐真朋樹 クリ(操上)さんは、ボクがこの業界に入る前から尊敬していた人なんですよ。

操上和美 出会いは、たしか仕事だったよね。

祐真 そうですね。

操上 バーで会って、一緒に飲んだとかではなかったです(笑)。
仕事で会いましたね。

祐真 一緒にお仕事ができると決まったときは、「やっと一緒にできる!」とうれしかったです。
たしかJRA(日本中央競馬会)でしたね。

操上 木村拓哉くんのときだね。

祐真 JRAのCMをやったときに、操上さんがカメラで、ボクがスタイリストだったんです。

操上 もちろん、その前から祐真くんの名前はとどろいていましたからね(笑)。

祐真 よくいいますよ(笑)! でも、それが12年くらい前ですかね。

操上 そうだったかな。

祐真 その後は、ヒデ(中田英寿)の仕事で一緒になったりとか、いろいろやりましたね。

操上 はじめて会ったときはね、「いなせな男」だなぁ、と思いましたよ(笑)。

祐真 緊張していたんですよ(笑)! でもね、クリさんは優しいです。
緊張していたんだけれども、ちょっかいを出してくれて(笑)。そのおかげでいい感じに、話しやすくしていただきました。

──さて、映画のタイトルが『ゼラチンシルバー LOVE』ですが、これは?

操上 “ゼラチンシルバー”というのは、フィルムや印画紙に塗装されている銀塩のことで、それに光を当て、現像すると現像液と化学反応を起こして、潜像されていた被写体が顕在化して“絵”として残るわけなんです。

本作品は、写真家の男の話で、依頼されてとある女性をビデオで観察し、撮りつづけているうちに魅かれてゆき、途中から偏愛みたいなカタチになるのですが、結局、彼女に対して愛を告白したり、触れたりできないで、写真のなかにだけ思いをぬり込めていくんですね。そういう話なので、このタイトルにしました。

──なぜ映画を撮ろうと思ったのですか?

操上 70年代前半に出会ったオニマクリスプラナという名の“虫の習性”の話を聞いたときに、すべての生物がもつ性をテーマに映画にしたら面白いかなと直感したんですよ。

僕たち写真家は、一枚で撮ってそこで完成完結しているわけなんです。
だけど映画は、時間である人生を見つめてみたり、あるいは動く時間そのものを見つめることができて、もともと時間軸で観察していくということをやってみたかったという潜在願望があって、今回はその願望と、タイミングやチャンスが一致して、たまたまカタチになったんですよ。

──今作はストーリーの流れのなかに、いい感じの“ヤマ”がいくつかありました

操上 セリフも少なくて、淡々と長回しでいくと、おなじトーンになっちゃって飽きるから。

祐真 そういえばこの映画は、バーのマダム役の天海(祐希)さんが最初にはじめてのセリフを言うんですよ、映画がはじまってから24分くらいまでセリフがないんです。ドキっとしましたよ、やっとココでしゃべった! って(笑)。でも、それがすごくセクシーでした。

──目覚まし時計がたくさんでてくる、とてもインパクトのあるシーンがありました

操上 主人公の彼はね、それほど几帳面な男ではないんですよ。そのことを観ているひとにわからせるためです。
24時間、ずっと彼女(宮沢りえ)を観察するという条件でとある仕事を引き受けているので、(時計が)ひとつだけだと寝てしまう可能性がある。その人間がどういうことを考えて、どういう性格をしているのかとか、それがある種のカタチとしておもしろく伝わるかなという意味で3つ並べてみました。小道具としての人物表現です。

男の部屋には、小道具があまりないんですよ。
生活感もないので、そういったところで人物表現には役立つかなと思ったんです。

──時計がとても昭和なカタチでしたね?

操上 アレはね、こだわったんですよ(笑)。
いまある時計って、四角いデジタルみたいなのばかりで、音も悪いし、形は良くない。こだわっていろいろと探してもらいました。

──全体的にスタイリッシュな感じなのに、随所になにかと“昭和”を感じさせるシーンが存在していました。たとえば、主人公の男が高倉 健さんの任侠映画『網走番外地』を観るとか、それから下町のシーンがあったのですが……

操上 これは“男”の話で、彼にはある種の“古風”なところがあるということが伝わりやすいと思ったんですよ。自分に置き換えたわけではないんだけれど、高倉 健さんの映画はボクが大好きだったということもあるんだけれどね(笑)。あのシーンが出てきたときのインパクト、「健さんの歌か!」みたいなインパクトが欲しかったのです。

それにボクの青春時代のからだに染込んでいるものだから、どうしても使いたいと思ったんですよ。

──操上さんからオファーがあったとき、いかがでした?

祐真 僕としては「やります!」の即答でしたね。

内容は、そのあとにうかがいました。 それはボクがこの業界に入って、クリさんの存在ももちろん知っていたし、リスペクトしてましたから。 いままでされてきたお仕事もずっと見てきて、自分のなかではよくわかっていたつもりでしたし、 ここ最近は何度かお仕事をご一緒する機会も多かったのでね。 そんなこともあって、お話をうかがったときは「ついに映画をやるか!」みたいな感じでした。 でも、絶対やるだろうなと思ってましたし、クリさんがやるんだったらカッコイイだろうなと思っていましたしね。

──映画とファッションの関係性については?

ボク個人が映画に期待しているものとして“ファッション”という部分はもちろんあるわけですよ。 ただ、なかなかそういういう映画が少ない。もちろんそれは自分の狭い価値観のなかで言っている話ですけれどね。 だけど、映画ってファッションに関しては、いまでも圧倒的な影響力をもっていると思うんですよ。 ファッション ショウを見ていたり、デザイナーと話をしたり、ボクにはいろいろなケースがあるのだけれど、 それ以上に映画から受けるファッションの印象というのはすごく強いんじゃないかなと思っています。

──衣装に関しては、操上さんとどのようなお話をされたのでしょうか?

今回の作品の、“時計”、“高倉健”、“昭和らしい世界観”とかそういったものを全部ひっくるめて、ファッションと結びついて いくことが絶対にあると思っているわけですよ。 クリさんがやるといった時点で、そういう作品になることが分かっていたわけで、もちろんボクは飛びついたしね。 台本を読んで自分なりに考えたりしながら、クリさんと打ち合わせをしたんです。 打ち合わせといっても具体的になにをどうこう着るという話ではなくて、この人物というのはこういう男で──とか、 そういう話でした。 そこから掘り下げていった感じです。

ボクとしては、4人の役者さんがどういった形のものを着ていれば、 その役をよりリアリティあるものにできるのかとか、いろいろ考えながらやっていきました。 映画の仕事ははじめてでしたから。 でも、それがクリさんの仕事だったのがものすごくラッキーだったと思っていますよ。楽しかったしね。

(つづく)

映画『ゼラチンシルバー LOVE』ギャラリー その1

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8月1日(土)からは目黒シネマにて1週間限定ロードショー


WIRED by Tomoki Sukezane
           
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