MOVIE│ノーベル賞作家アルベール・カミュの自伝的遺作がついに映画化『最初の人間』
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2015年2月16日

MOVIE│ノーベル賞作家アルベール・カミュの自伝的遺作がついに映画化『最初の人間』

MOVIE│ノーベル賞作家アルベール・カミュ生誕100周年を記念

カミュの自伝的遺作がついに映画化 『最初の人間』

『異邦人』や『反抗的人間』などで知られるノーベル賞作家アルベール・カミュの自伝的遺作を映画化した『最初の人間』が、12月15日(土)から岩波ホールほかで全国順次公開される。

Text by YANAKA Tomomi

監督はイタリアの名匠、ジャンニ・アメリオ

1960年に自動車事故により、46歳の若さでこの世を去ったアルベール・カミュ。そのさいにカバンから発見された執筆中の小説『最初の人間』は、30年以上の長い歳月を経て1994年に未完のまま出版、フランスでは60万部を売り上げるベストセラーとなった。

カミュ自身が「自分の最高傑作になるだろう」と予言した『最初の人間』。フランスに住む作家が独立戦争のさなかにあるアルジェリアに帰郷するという設定は、紛れもない自伝であり、遺作の出版はカミュの創作の原点を知る大きな出来事となった。

2013年のカミュの生誕100年を控え、未完の大作の映画化を実現したのは、イタリアの名匠ジャンニ・アメリオ。カンヌ国際映画祭の審査員大賞『小さな旅人』で移民、貧困、差別問題を取り上げ、べネチア国際映画祭3部門を受賞した『鍵の家』では障がいをもつ子どもとの共生など、常に他者との共存の可能性をテーマにとらえてきた監督がカミュの世界観に挑む。

キャストは、カミュの分身ジャック・コルムリに、今村昌平監督の『カンゾー先生』にも出演したフランス人俳優ジャック・ガンブラン。ジャックの母にカトリーヌ・ソラ、そして若き日の母にはイタリア人女優マヤ・サンサら演技派の面々が連なった。

遥かなる故郷への旅で作家が見出したものとは

1957年夏。作家ジャック・コルムリはふるさとで年老いた母がひとりで暮らすアルジェリアを訪れる。フランス領のこの土地は、独立を望むアルジェリア人とフランス人の間で激しい紛争が起こっていた。そんななかでも母はいつもと変わらぬ生活をつづけており、息子の帰郷を喜ぶ。地中海の青さもあの頃のまま。いつしか心は、かつての少年の日にかえっていく。

フランス人の父は若くして戦死。厳しい境遇のなかで懸命に働きコルムリを育ててくれた母、厳格な祖母、気のいい叔父、彼らは皆文字が読めなかった。そんなコルムリを文学の道に誘ってくれた恩師、アルジェリア人の同級生のこと。数かずの思い出が彼の胸に去来するが、その一方で、激しい独立紛争が巻き起こり、現実の状況が当時と大きくかけ離れてしまったことを目の当たりにする──

他者との共存を願い、貧しい者や弱者に共感し、暴力による解決に否定的な立場を取りつづけたカミュの願いが込められた『最初の人間』。アルジェリアの光と風、自由を求める民衆の胎動。遥かなる故郷への旅で、作家が見出したあたらしい世界を見届けてほしい。

『最初の人間』

12月15日(土)から岩波ホールほかで全国順次公開

監督・脚本│ジャンニ・アメリオ

キャスト│ジャック・ガンブラン、カトリーヌ・ソラ、マヤ・サンサ、ドニ・ポダリデス、ウラ・ボーゲ

配給│ザジフィルムズ

2011年/フランス・イタリア・アルジェリア/105分

           
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