『そして父になる』是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』|MOVIE
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2016年5月22日

『そして父になる』是枝裕和監督最新作『海よりもまだ深く』|MOVIE

MOVIE|『そして父になる』『海街diary』是枝裕和監督最新作

阿部寛、樹木希林出演『海よりもまだ深く』

そして父になる』『海街diary』で、世界を魅了する是枝監督が、特別な思いを込めて作った映画『海よりもまだ深く』が、5月21日(土)より上映開始する。『テルマエロマエ』シリーズなど、スクリーンやテレビドラマで活躍する国民的名優、阿部寛を主演に、日本映画の至宝・樹木希林、真木よう子など、豪華キャストを揃え、“なりたかった大人”になれなかった大人たちのちょっと笑えて、切なく泣ける感動の物語を描く。

Text by OPENERS

あなたは、“なりたかった大人”になれていますか?

「みんながなりたかった大人になれるわけじゃない」

是枝裕和監督が2001年から着想し、『海街diary』の脚本の合間に「今なら書ける」と思い立ち、執筆を重ね、原案・脚本まで手がけた作品が『海よりもまだ深く』だ。台風の日の夜、団地で起きる出来事を中心にした家族の物語が構想された背景には、是枝監督自身が団地で一人暮らしをする母の元へ通っていた時に、「いつかこの団地の話を撮りたいなあ」と考えていた思いがあったという。

『海よりもまだ深く』2016年5月21日公開

本作の主人公、良多は作家としての成功を望みながら、リサーチと称して興信所で働いている。結婚し、子どもを得ながら、好きなギャンブルをやめることができず、家庭を崩壊させてしまった経験をもつ。仕事でもプライベートでも、彼はかつてイメージしていた自分の姿と異なる人生を送っている。「こんなはずじゃなかった」そう考えているのは、良多だけでなく、本作に登場する人々に共通する意識だ。

「どうしようもない現実を抱えながら、夢をあきらめることもできず、だからこそ幸せを手にできないでいる。そんな等身大の人々の今に寄り添った話です」と是枝監督が語るように、当初のアイディアにさまざまなモチーフが折り重なって、夢見た未来と違う、今を生きる人たちのドラマが生み出された。

脚本を書き始めた時から、主人公の良多役、母の淑子役として是枝監督の頭中にあったのは阿部寛と樹木希林のふたりだ。彼らが初めて是枝作品に出演したのは、やはり親子役を演じた2008年公開の『歩いても 歩いても』。以来、ふたりは是枝が作り上げる“家族”の一員にたびたび扮してきた。阿部に良多役を依頼した理由について、是枝は「他の人にお願いする発想がまったくなかった」と語る。

『海よりもまだ深く』2016年5月21日公開

『海よりもまだ深く』2016年5月21日公開

是枝監督が「脚本も阿部さんの声を思い浮かべて書いています。ダメ男と言える良多をあそこまでダメな感じでやってくださって(笑)、本当に素晴らしかったです」と評する。主演の阿部寛は、良多のダメな部分を「人間味」としてとらえたと言う。「虚勢を張ったり、強がったりするけど、本当は弱いんです。いつまでも夢を追いかけている良多の甘えを、人間味として出せたのではないかと思います」と語った。阿部寛といえば、『下町ロケット』や『テルマエ・ロマエ』の熱血漢の役柄が印象深いが、『結婚できない男』や『トリック』で見せるハンサムなのに、モテないダメな男もなぜか似合う。今や日本になくてはならない国民的名優である。そんな阿部寛が、今回は叶わぬ夢ばかり追い続ける情けない男・良多を、ときに可笑しく、ときに切なく、チャーミングに演じている。特に団地の小さな正方形の少し汚いお風呂に、大きな図体で入っている姿は、とても滑稽で良多の人生を表しているかのようだった。

また、母親役の樹木希林は、言わずもがな圧巻の存在感を放つ。『奇跡』以降、すべての是枝作品に出演している樹木希林は、是枝作品、もっと言えば日本映画になくてはならない女優のひとりだろう。「役者としても人間としても、あれだけ存在に説得力のある人はいません。撮らせてもらいながら、いつも学ぶことが多く、それが自分の財産になっている気がします」と是枝監督が話せば、9年近い付き合いになる是枝監督に全幅の信頼を寄せているのか、樹木希林は「あれほど感性豊かな人って、普通はもっとエキセントリックになるものだけど、是枝さんはぼやーんとした感じ(笑)。才能ですね。人柄も才能だと思います」と彼女らしいユニークな表現で監督を持ち上げた。

『そして父になる』で夫婦役を演じた真木よう子とリリー・フランキーが今度は違った形で共演を果たしているのも見どころの一つだ。さらに、良多と響子の一人息子である真悟を演じた吉澤太陽は、子役の演出に定評のある是枝監督のもと、大人たちの間で翻弄されながらも健気に、そしてマイペースに生きる姿を伸びやかに演じた。良多の姉役に小林聡美、部下役に若手俳優の池松壮亮、橋爪功ら豪華キャストが、物語の脇を固める。ハナレグミの楽曲も本作に深みと温かさを加えている。

海よりもまだ深く サブサブ 母と姉

海よりもまだ深く サブサブ 山辺興信所

「幸せってのはね、何かを諦めないと手にできないものなのよ」

樹木希林が劇中で放つこのセリフに、すべての答えが詰まっている。台風の夜に集まった元家族。嵐が去れば、またそれぞれの日常に戻るとわかっている彼らの思いが交錯し――。“海よりもまだ深い”人生の愛し方を教えてくれる、心に沁みる感動作がここに誕生した。

台風の夜に、偶然ひとつ屋根の下に集まった“元家族”

笑ってしまうほどのダメ人生を更新中の中年男、良多(阿部寛)。15年前に文学賞を1度とったきりの自称作家で、今は探偵事務所に勤めているが、周囲にも自分にも「小説のための取材」だと言い訳している。元妻の響子(真木よう子)には愛想を尽かされ、息子・真悟の養育費も満足に払えないくせに、彼女に新恋人ができたことにショックを受けている。そんな良多の頼みの綱は、団地で気楽な独り暮らしを送る母の淑子(樹木希林)だ。ある日、たまたま淑子の家に集まった良多と響子と真悟は、台風のため翌朝まで帰れなくなる。こうして、偶然取り戻した、一夜かぎりの家族の時間が始まるが――

5月21日(土)より、丸の内ピカデリー、新宿ピカデリー他にて、全国ロードショー。

『海よりもまだ深く』
原案・監督・脚本・編集|是枝裕和(『そして父になる』『海街diary』)
出演|阿部寛 真木よう子 小林聡美 リリー・フランキー 池松壮亮 吉澤太陽 / 橋爪功 樹木希林
製作|フジテレビジョン  バンダイビジュアル  AOI Pro.  ギャガ
配給|ギャガ
gaga.ne.jp/umiyorimo

 

           
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