確信と革新の証~時代と共に生まれた作品たち|MOËT & CHANDON
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2020年1月1日

確信と革新の証~時代と共に生まれた作品たち|MOËT & CHANDON

MOËT & CHANDON|モエ・エ・シャンドン

ロゼ、アイス、グラン・ヴィンテージ。 モエ・エ・シャンドンの哲学と歩みの裏側に貫かれた物語まで味わう

「モエ・エ・シャンドンとシャンパーニュの276年」と題したOPENERSの連載では、まず「モエ アンペリアル150年アニバーサリー」として、「モエ・エ・シャンドン モエ アンペリアル」という世界中で愛されるシャンパーニュを通して、その歴史を振り返り、哲学を紐解き、なぜ、いまなお、モエ・エ・シャンドンという価値が我々にとって面白いものなのかを紹介した。ここからは、モエ・エ・シャンドンが提示する他のアイテムを通じて、変わらぬ哲学、提供する価値、そこから生まれる我々にとっての幸せな場面についてご案内していこう。これらアイテムの裏側には、「モエ アンペリアル150年アニバーサリー(2)」で紹介した、1930年から長年モエ・エ・シャンドンを率いた、ロベール=ジャン・ド・ヴォギュエの、シャンパーニュを造り続ける確信と、モエ・エ・シャンドンがモエ・エ・シャンドンであり続けるための革新という二面性があることも見逃せない。

Text by IWASE Daiji

ハレの日も、涙の日も、そこにシャンパーニュがある

シャンパーニュは二面性を持つ。まずシャンパーニュは農産物である。シャンパーニュという土地の恵み、郷土をリスペクトして、実にストイックな取り組みの中から生まれてくるものである。

ワイン好きは承知かと思うが、シャンパーニュ地方は通常のワイン造りにおいては北限にある。その場所で、創意工夫で生みだした恵みがシャンパーニュだった。先人たちの努力、尽力、守るべきものと変えていかなければいけないことに葛藤しながら、エクストリームな気候と戦い、逆に利用した宝物。今も、それは変わらない。

一方で、シャンパーニュほどセレブリティな場面や、我々の祝祭に似合うものもない。F1のポディウムで、ヒップホップやEDMのスーパースターのバックステージで、そして東京ではプレゼンの勝利や記念日の告白のテーブルで。このふり幅の大きな二面性がシャンパーニュの魅力だ。
1700年代のパリ、マダム ポンパドゥールが舞い踊る時代。厳寒のシャンパーニュ地方で凍える手で苗木を守る人がいて、同じ夜、パリの王宮で踊りに酔い、シャンパーニュに酔う人々がいる。その二面性が、ボトルの中には詰まっているのだ。

第二次世界大戦中、レジスタンスとして命を賭して郷土フランスを守る一方、戦後、アメリカ的な華やかな世界に触れ、幅広い視野を持ち続けたロベール=ジャン・ド・ヴォギュエ。ステンレスタンクの導入といった技術的な面から経営に関するダイナミックな方針決定まで、モエ・エ・シャンドンの伝統、シャンパーニュの誇りを守りながら、様々な革新的な決断をしてきた。彼も二面性の人だったのだろう。シャンパーニュを愛して守り抜きたい。その彼の残した言葉が「15分、時に先んじろ」。

口うるさい酒好きからすれば、華やかでチャーミングなロゼと、氷を浮かべて完成するアイスというアンペリアルの2つのアイテムは、変化球かもしれない。ロゼ・シャンパーニュはもちろんシャンパーニュの確固たる分野だ。ピノ・ノワールの気品、骨格、重厚感。しかし、ロゼ アンペリアルはこうしたクラシカルなロゼではない。骨太感、背筋が伸びるような緊張感ではなく、グラマラスさとチャーミングな表情。いきいきと弾ける果実感、特に野イチゴ的なニュアンスは、明るい未来に向かう元気さと、その中での自然でリラックスした時間を想起させる。

血の濃さを感じる鴨や仔羊のローストまでを守備範囲に、ナイフ&フォークで滋味深い一皿に向かうロゼ・シャンパーニュではなく、ロゼ アンペリアルには、フルーツとクリームチーズやサーモンのフィンガーフードがあればいい。少し大人としての格好良さを見せたいなら、鴨の薄切りを乗せたバゲットなんてどうだろう。気軽なエスニックもいい。そこにロゼ アンペリアルと気分のいいなにかがあれば、1人でも2人でも仲間とでも、そこが心地よいパーティ会場になる。

アイス アンペリアルも同様だ。氷さえあれば、この1本がそのままシャンパーニュカクテルになる。クランベリーのような赤い果実の香りに爽やかで程よい酸味。いつ、どこにいても涼風を感じるようだ。ドレスダウンしたリゾートエレガンスの装い。白いショートパンツにお気に入りのリゾートサンダル。胸のボタンは2つあけても、逆にカラフルなボウタイでもいい。

シャンパーニュは気分と場面に寄り添ってくれる酒だ。それはあなたの今日の夜であり休日の朝でも、時代の気分と場面でもある。時代が変われば食も変わる。例えば、今夜あなたがいる都心のホテル。そのプールサイドテラスには、世界中の魅力的なフードが流行とともにやってくる。19世紀、シャンパーニュの目の前にあった料理は、伝統的なものと宮廷のものであってもいずれにしてもフランスのものだった。でも、それはロシアへ、アメリカへ、そして今や世界3位の輸出先である日本では和食や日本の気候、スタイルの中でも輝きを増す。フランスの誇りと変わりゆく世界との出会い。ロベール=ジャン・ド・ヴォギュエの「15分、時に先んじろ」。その意味を、我々は、この瞬間にも、軽やかに楽しむロゼ アンペリアルとアイス アンペリアルを通して知ることができる。

リスクを恐れない果敢な挑戦

シャンパーニュの二面性。それはノン・ヴィンテージとヴィンテージという2つの存在にも表れる。名前の後にNVと表記されていればそれはノン・ヴィンテージで、「2008」のように書かれていればそれはヴィンテージとなる。

ヴィンテージは、その年に収穫されたブドウだけを使って造られるワインだ。他のエリアのワインがお好きな方であれば当たり前のように聞こえるかもしれないが、前段に記したシャンパーニュ地方の気候や風土を思い出していただきたい。ブドウの生育に厳しい環境である当地では、毎年、醸造責任者が満足のいく収量のブドウが収穫できるわけではないし、思い通りの方向のブドウであるとも限らない。ヴィンテージがリリースされない年も少なくない。
だから、NVという存在がある。NVはそのメゾンのスタイルを伝える重要なアイテムで、毎年変わらない価値を提供しなければならない。いつ、どこで味わってもそのブランドであること。モエ アンペリアルはNVだ。改めて書けば、モエ アンペリアルは、モエ・エ・シャンドンの神髄をいつ、いかなる時も味わえるシャンパーニュだ。味、香り、色、泡はもちろん、哲学、歴史そのものを世界中、何時も変わらず提供し続けなければならない。醸造責任者ブノワ・ゴエズと彼が率いるチームは、その年の畑、ブドウ品種の割合、リザーブワインの割合を組み合わせる。それは、精密な化学的なラボであり、錬金術師のアジトで行われる、モエ アンペリアルという正解に到達するための気の遠くなる、気がふれそうになる仕事だ。重圧。チーム全員がシリアスなブラインド・テイスティングを何度も繰り返し、変わらない正解を目指していく。

では、モエ・エ・シャンドンにとって、ヴィンテージとはなんだろうか。筆者は以前、ブノワ・ゴエズに、2000、2003のグラン・ヴィンテージについてその個性の差を訪ねたことがある。答えはユニークだった。

「グラン ヴィンテージ 2000はブルターニュの朝の海岸、またはタイで色とりどりのトロピカルフルーツやスイートベジタブルに囲まれたシーン。グラン ヴィンテージ 2003はカリブの孤島リゾート。そんなシーンが浮かびます」。

また、チームの一人であるクオリティマネージャーのアミン・ガネム氏に2009年のグラン・ヴィンテージについて尋ねたときは「夏の終わり。平原の古くて大きな家のテラス。そこから静かな風の中で揺れる黄金のすすきの穂たちを眺める。静謐で豊かな時間。座っているのは使い込んでいる革の心地よい椅子……。そんな光景が広がるようです」。
そう、グラン ヴィンテージは、チームにとっては毎回違うヴィジョンで、自由な発想を試されるチャレンジだ。ヴィンテージごとにそのキャラクターは変わる。例えばグレートヴィンテージと称された2002年。各メゾンがこぞってヴィンテージシャンパーニュをリリースした年だ。だからこそ、モエ・エ・シャンドンの2002年とはなんだろうという期待がかかる。08年のロゼも12年も、遡って80年代、70年代……リリースされるたびに、その年のモエ・エ・シャンドンのチャレンジに注目が集まるのだ。3年という通常の熟成期間を越える5年以上の熟成期間を経て……などもちろん変わらないメソッドはあるが、それ以上に、彼らが描くその年が見たい、味わいたい。例えば2003年。近年の中でもヴィンテージがほとんどリリースされない、シンプルにいえば不良年だったが、ブノワ・ゴエズは果敢に2003に挑戦し、リリースした。彼にとってはこの2003年は、大いなる挑戦。他のメゾンが敬遠しても、彼にとっては素晴らしい表現ができるチャンスだったのだ。

いつでもどこでも、あなたの幸せな場面とともに。それがモエ・エ・シャンドンの276年

変わることが許されないモエ アンペリアルを送り出す重圧と、変わることを示すグラン ヴィンテージへの挑戦。ただ変わらないのは、276年の歴史を歩んできたモエ・エ・シャンドンの哲学だ。モエ・エ・シャンドンからこれだけ個性あふれるシャンパーニュを送り出すことに怖さはないか? という問いにその時、ブノワ・ゴエズはこう答えた。

「怖くはありません。確かに新しいものを送り出すことはリスク。でも、Everything is changing。自分も変わっていかなければいけないと考えています」。
そして、
「オーセンティックなものは持ちながら、現代と向き合っていく。常に変化に対応していくこと。その積み重ねが、新しい伝統になる。モエ・エ・シャンドンの歴史そのものがユニークな変革の歴史ですから」。

そう、変わらないものを提供し続けることも変革の積み重ねの証だし、その証を目の前で見せてくれるのがロゼ アンペリアルであり、アイス アンペリアルであり、グラン・ヴィンテージである。それぞれを楽しむ場面はそれぞれだ。初夏の太陽、夏のプールサイド、記念日をしみじみと楽しむ星付きレストラン、旅先の出会い、セレブリティな空間、旧友と語らう晩秋の夜……。そして、その裏にある、モエ・エ・シャンドンの伝統と革新の物語。シャンパーニュの二面性に思いを馳せれば、その場面は特別なものになる。

                      
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