INTERVIEW|物語を綴る酒、ハイランドパークの魅力(中編)|HIGHLAND PARK
INTERVIEW|オークニー諸島の厳しい気候が生み出した自然の賜物、ピートがもたらす芳醇な香り
物語を綴るウイスキー、ハイランドパークの魅力(中編)
スコットランド最北端にあり、もっとも権威ある蒸留所のひとつ、オークニー諸島の蒸留所から生み出されるウイスキー「ハイランドパーク」。200年以上のあいだ、その伝統と職人の技を守りつづけ、世界中のウイスキー専門家や愛好家を魅了している。同社のグローバル・ブランド・アドヴォケイト、ダリル・ハルデイン氏は「オークニーでウイスキーを造るのは、世界でいちばんお金がかかります」と語る。
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Text by KAJII Makoto (OPENERS)Photographs by SUZUKI Shimpei (INTERVIEW)
スコッチウイスキーを造るのにオークニーが適している理由
「オークニーでウイスキーを造るのは世界で一番お金がかかります。スコットランドの最北端にあるので、ほかの地域の人に頼ることができず、自給自足で造らなければならない。私たち自身で、大麦を麦芽にする行程をおこなっています。また、モルトをつくる過程で、乾燥させるのですが、そのときの燃料には、地元で採れるピート(麦芽を乾燥させ、香りづけをする泥炭)を使っています。このオークニーのピートのみというのが重要なんです」
そういって、カークウォール蒸留所から持参したというピートに火をつけた。
「オークニーは風が強いので、高い木は育ちません。ピートは、低木のヘザー(ツツジ科の植物)が数千年の時間を経て腐敗・分解されたもので、混じり気のないヘザーからできたピートは、焼くととてもいい香りがします。ウイスキーを味わってもらうことで、ピートの良さもわかっていただけると思います」
このピートは、オークニー諸島でも島によって変わるそうで、有名なアイラ島のピートは、もっと刺激の強い香りがするという。
「そして、ウイスキーのフレーバー(風味)を左右するのが、シェリーカスク(樽)です。カスクを作る木が育つのに100年。その木を切って乾燥させるのに4年、さらに樽を作ってから、シェリーを使って樽に香りをつけるのに2年。順調にいって106年の時間がかかります。ハイランドパークは、そのすべてのプロセスを自社でマネージメントしている数少ない会社なのです」
現在、ハイランドパークが所有しているカスク(樽)は約4万2000個もあり、たったひとりのウイスキーメーカー(ブレンダー)であるマックス・マクファーレン氏は、カスクを選ぶときにはウイスキーを口にふくまず、香りだけを頼りに、毎日500樽のサンプルを嗅ぐ仕事をしているという。
ダリル・ハルデイン氏とハイランドパークの“ストーリー”
ウイスキーというと、ひとりでゆっくり愉しむ酒というイメージのほかに、男同士で酌み交わすシーンも想像できる。
「わたしは『ハイランドパーク18年』を、“義理のお父さんのウイスキー”と呼んでいます。前の会社からハイランドパークに転職したとき、義父にいいウイスキーをプレゼントすると約束して、18年をプレゼントしました。義父に転職した理由を伝えたくて、ハイランドパークの歴史や伝統を語って、飲んでもらい、理解してほしかったんです。
義父は18年を口にして、“シェリーカスクとピートの組み合わせによる、スモーキーな風味と甘さのバランスがよくとれている”とほめてくれました。そのときに、私は“あなたの娘さん(妻)が妊娠しています”と告げたんです。それから義父はウイスキーを飲みつづけてくれています」
「ウイスキー、シャンパン、ワインなど、なにかを記念するときに飲む酒は、私たちの記憶のなかにしっかり残ります。ハイランドパーク18年のメロー(まろやか)な味わいには、そのときの記憶がいつも刻まれています」
ダリル氏は、子どもが生まれたときも18年で乾杯したという。改めて18年の魅力を問うと、「はじめてモルトウイスキーを飲む方からウイスキーのエキスパートまで楽しんで飲めるスピリッツです。甘くて、やわらかいスモークと表現していますが、甘さはスパニッシュオークから、香りはピートからの賜物。ウイスキーというと男性が飲むイメージがありますが、昨晩行った銀座6丁目にある「BAR ORCHARD GINZA(バー オーチャード ギンザ)」では、女性がカクテルにして飲んでいました。ハイランドパークの甘さは女性にもぴったりなんです」
ハイランドパークは、2005年、2009年、2013年の3回にわたって、アメリカの専門誌『Spirit Journal』において「ザ・ベスト・スピリッツ・イン・ザ・ワールド」に選ばれ、2009年のワールド・ウイスキー・アワードでは、「ワールド・ベスト・シングルモルト」に選出されるなど、つねに高い評価を得ている。
ダリル・ハルデイン|Daryl Haldane
「ハイランドパーク」グローバル・ブランド・アドヴォケイト。1984年生まれ、スコットランド出身。エジンバラ在住。2012年より、ハイランドパーク社における初のグローバル・ブランド・アドヴォケイトとして、世界各国で「ハイランドパーク」のルーツや愉しみ方を広める役割を担っている。イギリスの大手酒造メーカーにてブランド・アンバサダーを務めた経験をもち、ミクソロジスト(ありとあらゆる食材、リキュールを絶妙のバランスで混ぜ合せてカクテルを作るスペシャリスト)としての高度な知識と経験、またウイスキーをはじめスピリッツ全般に膨大な知識を有する。
レミー コアントロー ジャパン
Tel. 03-6441-3025
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