EAT|今年の「ランデヴー」は、魅惑の“スイーツ”との楽しいコラボ
EAT|6年目を迎えた今年は、魅惑の“スイーツ”との楽しいコラボ
「ランデヴー~グルマン」魅惑のスイーツとの出合い
ショコラティエ ニコラ・ベルジェが語る「ランデヴー」
フランス料理とショコラ、パティスリー、和菓子が織りなす世界──「ランデヴー」は、銀座「ベージュ アラン・デュカス 東京」で開催される、毎年恒例の食の交流イベント。今年のテーマは“スイーツ”。ショコラ、パティスリー、和菓子の各分野から第一線で活躍中の職人が集結。「ベージュ アラン・デュカス 東京」のシェフらとタッグを組み、それぞれのテーマに沿ったコース料理を3回のプログラムにわたって提供する。
その第1回目として、ショコラ分野から、アラン・デュカス氏の初チョコレートショップ「ル・ショコラ アラン・デュカス マニュファクチュール・ア・パリ」のシェフ・ショコラティエ、ニコラ・ベルジェ氏を迎えた。ベルジェ氏は、日本で未発売のアラン・デュカスのオリジナルチョコレートをパリから持参して来日。「ショー・ショコラ!(Show Chocolat!)」と題して、総料理長の小島 景氏とともに全品にチョコレートを使ったコース料理で日本の美食家をもてなした。
Text by KAWAJIRI Saori
原点を追求した、本当のオリジナルショコラ
ニコラ・ベルジェ氏は、1971年仏・リヨン生まれ。父ポールのアトリエで子どものころからショコラとともに過ごし、自然とパティシエの道を歩んだ。パリ「ジャン=ポール・エヴァン」、「ピエール・エルメ」、伊・ジェノヴァ「タリアフィーコ」、米・ニューヨーク「パイヤール・パティスリー」など、かずかずの名店で研鑽を積む。ニューヨーク時代にアラン・デュカス氏と出合い、2000年に「アラン・デュカス エセックス・ハウス」のシェフ・パティシエに就任。その後、03年にはパリ「プラザ・アテネ」に移り、エグゼクティヴ・シェフ・パティシエとして、アラン・デュカスグループのすべてのパティスリーの統括を任される経歴をもつ。
そして2013年2月、パリ11区にデュカス氏の長年の夢であったショコラ工房「ル・ショコラ アラン・デュカス マニュファクチュール・ア・パリ」がオープン。その立ち上げに際し、デュカス氏とともにコンセプトからすべてをつくり上げた。
「ショコラ工房の設立にあたり、アランとは幾度となく会話を重ねました。哲学や店のあり方、カカオ豆の厳選や伝統製法など、ショコラづくりの原点に立ち返ることが私たちのこだわり。ブランドではなく“製品と職人技”を売るショコラトリーでありたいと。わたしの技術を求める気持ちとアランが求める理想が重なって、このショコラ工房が誕生しました」
ショコラ工房のアトリエ内でカカオ豆の仕入れから焙煎、加工にいたるまで、すべての製造工程をおこない、正真正銘のオリジナルショコラを仕上げる。多くの手間と時間、何よりも熟練した技術が要されるプロセスだ。「良質な素材を厳選し、その素材本来の味わいと香りを十分に表現する」というデュカス氏の料理哲学が、ショコラづくりにもそのまま反映されている。マニュファクチュール(工場)という店名にも、ほかのブティックとは一線を画したこだわりがあらわれる。
「ショコラはもともと素朴で粗野で野性的なもの。カカオの成分や質がショコラの食感や味わいを大きく左右します。質のいいカカオを使い、考えられた技術を駆使して、オリジナルのショコラの味わいを提供することが、わたし自身の願い、そしてお店のコンセプトです」
このショコラ工房にある機械や道具は、ほとんどすべてがアンティーク。現在の機械は大量生産用が多く5トン以上の容量があるのに対し、工房で必要なのは200キロ程度のもの。ものづくりの基本として「手仕事を尊重する」ということを大切にした結果、中古品に行き着いたという。そのすべてをベルジェ氏自らが調達した。
「今のマシーンは大量生産用のものしかなく、手仕事で管理するには中古品のほうがちょうどよかったのです。昔のひとの流儀に従うということではなく、私たちに必要なマシーンは昔ながらの機械でした。メンテナンスは楽ではありませんが、すっかり機械に強くなりましたよ(笑)」
工房では、ボンボン・ショコラやタブレットのほかに、デュカス氏のレストランでデザートに使用するクーベルチュールもつくられる。工房を訪れた客は、そのすべての作業をガラス越しに眺めることができる。
「お客さまは“日常のショコラ”を求めて来店される方が多いですね。タブレットの板チョコやボンボン・ショコラの箱詰めに人気があります。ショコラを買うことと同時に、ショコラをつくる音や香りを体感できることが工房の醍醐味。工房を構えるブティックは、パリでは初の試みです」
料理の味わいを引き立てる、チョコレートのあらたな魅力
ベルジェ氏が手がけたお皿は、プティ・フールをふくむ6品。「ベージュ アラン・デュカス 東京」の総料理長、小島 景氏による料理に合わせて、ショコラの形や状態が変化。粗挽きのブラックペッパーを思わせるスパイスに、舌触りがなめらかなジュレに、薄くパリッとした食感のチュイールに、カカオの風味を感じるすっきりとしたソースにと、七変化して料理の味わいを引き立てる。チョコレートのあらたな魅力を発見できるコースで、お皿ごとに新鮮な驚きをあたえる。アミューズから後半のデザートにかけて徐々にチョコレートの比率が上がる構成だ。
「来日するずっと前から、総料理長の(小島)景とメインの肉や魚とチョコレートのバランスについて話し合いました。景はプラザ・アテネの総料理長とも料理人同士での話し合いもしてくれて今回のメニューが完成。メニューに使用したチョコレートは、わたしの好きなペルー産のカカオでつくったもの。ペルー産の質のいいカカオは、マディラ酒につけたようなアロマの香りが特徴です」
日本のパティスリーは緻密で、日本人のお客さんはさらに輪をかけて緻密、と語るベルジェ氏。「とくに日本人向けにアレンジをしたわけではありません。フランスのやり方でクラシカルなお皿を味わっていただきました。日本のお客さまは味に繊細で、味への探究心も強い。これから機会があれば、いろいろなショコラを紹介したいですね」と最後に今後の意気込みを語った。
EAT│6年目を迎えた今年は、魅惑の“スイーツ”との楽しいコラボ
「ランデヴー~グルマン」魅惑のスイーツとの出合い
7月の「ランデヴー」は、青木定治登場!
「ランデヴー~グルマン」の2回目は、パリを拠点に活躍する「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」の青木定治氏を迎え、パリでの修行時代から親交の深い小島 景氏とともに、フランス料理とフランス菓子の伝統に現代のセンスを融合させたコースを提供する。
4日間限定、青木定治氏によるパティスリーと融合する本格フレンチ
青木氏は1991年、単身パリに渡り小さいアトリエからスタート。パーティーへのケータリングや、パリコレクションではシャネルなど名だたるメゾンへの納品で好評を博す。クラシックなフランス菓子に、抹茶やゴマなど和の素材やあたらしいセンスを取り入れたパティスリーは、パリジャンに大絶賛。現在はパリ4店、東京4店、台北2店を展開し、今やフランスを代表するパティシエのひとりである。
ベルジェ氏に青木氏の印象をうかがうと「とても正確で日本的かつ気さくな人柄のパティシエというイメージがあります。パリジャンは、日本というとわびさびとサブカルチャーの両面を思い浮かべます。彼のブティックは、色とりどりの華やかな異空間。そこはパリジャンにとって日本のサブカルチャーを追体験できるような場所でもあります」
La Manufacture de chocolat - LE FILM - Japonais
伝統的技法に斬新な発想で独創性をプラスしたパティスリーを生み出す青木氏と、毎朝市場に出向いて旬の鎌倉野菜を自分の目で選ぶという小島氏の共演。旬の素材にこだわるふたりのハーモニーが織りなされるメニューは、素材の決まる開催直前までわからないという。フレンチとパティスリーが出合う美食の祭典は、4日間限定。ぜひお見逃しなく。
<次回予告>
ベージュ アラン・デュカス 東京
「ランデヴー~グルマン」
~魅惑のスイーツとの出合い~
第2回:Classique France / Saveurs Japon ~パリ-東京 美食の温故知新~
青木定治氏「パティスリー・サダハル・アオキ・パリ」シェフ・パティシエ