ART|展覧会と映画、ふたつの視点から写真家・現代美術作家 杉本博司に迫る
LOUNGE / ART
2015年5月14日

ART|展覧会と映画、ふたつの視点から写真家・現代美術作家 杉本博司に迫る

ART|映画『はじまりの記憶 杉本博司』も公開!

20世紀を代表するファッションをとおして“装う”ことを問う

「杉本博司 ハダカから被服へ」原美術館にて開催

国際的に高い評価を受ける写真家・現代美術作家 杉本博司による展覧会「杉本博司 ハダカから被服へ」が、3月31日(土)から7月1日(日)まで、東京・品川の原美術館にて開催。さらに同時期に映画『はじまりの記憶 杉本博司』も公開され、その後DVDの発売を予定している。

Text by FUJITA Mayu (OPENERS)

「人類の古層の記憶」を追い求める作家 杉本博司

デジタルメディア時代のいま、写真画像の加工や修正は、コンピュータ上で誰でも容易におこなえるものとなった。そんなテクノロジーの進化とは裏腹に、世界は写真家・現代美術作家 杉本博司の“眼”を求めている。デジタル時代以前より写真は虚構であることを見抜き、カメラの眼で世界を捉えることで、人間の性(さが)を追求。その精緻なモノクロームのプリントは、透徹した思考と卓越した技術に裏打ちされ、他の追随を許さない。海外のオークションでは写真1枚が数千万円で落札され、ロックバンド U2のボーカル・ボノが、アルバムジャケットに作品を使用したいと許諾を熱望し、実現したという逸話も。

「杉本博司 ハダカから被服へ」

©はじまりの記憶 テレビマンユニオン/WOWOW

カメラの眼で見つめ、ハダカにされる人間の性

そんな杉本博司による展示「ハダカから被服へ」が、3月31日(土)より原美術館にて開催される。衣服(と身体)を主題にした「スタイアライズド スカルプチャー」シリーズを中心に構成される。“人体とそれを包む人工皮膚を近代彫刻として見る”という視点のもと、ガブリエル・シャネル、クリストバル・バレンシアガ、イヴ・サンローラン、ジョン・ガリアーノ、三宅一生、山本耀司、川久保 玲など、20世紀を代表するデザイナーによるファッション(公益財団法人京都服飾文化研究財団所蔵)を撮影したもの。

杉本博司展「ハダカから被服へ」 01

杉本博司展「ハダカから被服へ」 02

(左)「類人」 1994 年ゼラチンシルバープリント 64.7 x 89.5 cm ©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of Gallery Koyanagi
(右)「スタイアライズドスカルプチャー 003 [川久保玲 1994]」 2007 年 衣装所蔵: 公益財団法人京都服飾文化研究財団 ゼラチンシルバープリント 149.2 x 119.4 cm ©Hiroshi Sugimoto /Courtesy of Gallery Koyanagi

くわえて、ニューヨーク自然史博物館の展示を撮影した「ジオラマ」、マダムタッソー蝋人形館の展示を撮影した「肖像写真」という、ふたつのシリーズから選出された写真作品が展示される。作り物でありながら、時間を超越した永遠の存在にも感じられるイメージを、カメラの眼をとおして見つめたこれらのシリーズは、杉本博司の写真作品の特色を端的に現わしていると言えるだろう。

そのほか杉本博司自身が演出を手がけた文楽の人形、デザインを手がけた能楽の装束、これまで収集した美術工芸品などが展示され、人間の身体と“装う”ことの意味を、杉本博司ならではの視点で読み解く。

杉本博司展「ハダカから被服へ」 03

「スタイアライズドスカルプチャー 011
[ジョン・ガリアーノ 1997]」 2007 年
衣装所蔵:公益財団法人京都服飾文化
研究財団
ゼラチンシルバープリント 149.2 x 119.4 cm 
©Hiroshi Sugimoto / Courtesy of
Gallery Koyanagi

「杉本博司 ハダカから被服へ」
会期|3月31日(土)~7月1日(日)
会場|原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
開館時間|11:00~17:00(水曜日 20:00)
※入館は閉館時刻の30分前まで。
休館日|月曜日(4月30日は開館)、5月1日
入館料|一般:1000円、大高生:700円、小中生:500円
※原美術館メンバーは無料
※学期中の土曜日は小中高生の入館無料
※20名以上の団体はひとり100円引

原美術館
Tel. 03-3445-0651(代表)
http://www.haramuseum.or.jp

アートとシャンパーニュのマリアージュ!

なお、会期中、原美術館内にある『カフェ ダール』では、水曜日の夜、1日5組10名限定の特別メニューを実施。シャンパーニュの最高峰「ドン ペリニヨン」のグラスと、ドン ペリニヨンの専属シェフ パスカル タンゴが、その味わいと香りをもっとも引き立てるため考案したレシピをもとに、ひと口サイズで提供。豊潤な味覚のマリアージュをカジュアルに愉しむことができる内容となっている。展覧会観賞後はぜひ中庭を望む開放的な空間で、シャンパーニュを手に杉本博司の作品世界に酔いたい。

水曜夜限定の特別メニュー「ドンペリニヨン イヴニング」

水曜夜限定の特別メニュー「ドンペリニヨン イヴニング」
1日5組10名限定・予約制
予約受付:3月31日(土)~
受付時間:月曜日を除く11:00~17:00(水曜日は~20:00)
※予約受付は電話のみ。
期間|展覧会期中の毎週水曜日
時間|18:00~20:00(LO 19:30)

メニュー|「ドン ペリニヨン ヴィンテージ 2003」グラス各一杯
ドン ペリニヨン専属シェフ パスカル タンゴのレシピから一口サイズのフード各2品
価格|5250円(2名)
※別途入館料

カフェ ダール
Tel. 03-5423-1609(直通)

映画『はじまりの記憶 杉本博司』公開

そして展覧会の開催に合わせ、3月31日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにて映画『はじまりの記憶 杉本博司』がレイトロードショーされる。杉本博司に長期密着取材をおこなったドキュメンタリー作品であり、出演は杉本博司ほか、安藤忠雄、李 禹煥、野村萬斎、浅田 彰、劇中音楽には渋谷慶一郎、ナレーションには女優 寺島しのぶ……という斬新な取り合わせ。
本作は、2010年12月にWOWOW『ノンフィクションW「はじまりの記憶 現代美術作家・杉本博司」』として放送後、エミー賞のアート部門にノミネートされた力作に、ほぼ倍の長さの新撮が加えられた劇場版だ(DVD4月27日(金)発売予定)。展覧会と映画、ふたつの視点から写真家・現代美術作家 杉本博司の世界に迫る。

映画『はじまりの記憶 杉本博司』
3月31日(土)より渋谷シアター・イメージフォーラムにてレイトロードショー
出演|杉本博司(現代美術家)、安藤忠雄(建築家)、李 禹煥(現代美術家)、野村萬斎(狂言師)、浅田 彰(批評家)
音楽|渋谷慶一郎
ナレーション|寺島しのぶ
監督|中村佑子
制作|テレビマンユニオン WOWOW

DVD『はじまりの記憶 杉本博司』
発売日|4月27日(金)
価格|4935円
2011 年日本/本編83 分+特典映像/カラー
16:9 ビスタサイズ/日本語 ドルビー・デジタル2.0ch/片面2層/字幕:なし
映像特典|完成披露試写会舞台挨拶、予告編集
外装特典|豪華化粧箱入り
*特典内容・仕様などは変更になる可能性があります。
発売|アスミック
販売|角川書店

映画『はじまりの記憶 杉本博司』

杉本博司|SUGIMOTO Hiroshi

©はじまりの記憶 テレビマンユニオン/WOWOW

杉本博司|SUGIMOTO Hiroshi
東京生まれ。立教大学経済学部卒業後渡米、ロサンジェルスのアートセンターカレッジ オブ デザイン卒業後1974年よりニューヨーク在住。現代美術作家として世界各地の美術館で個展を開催する。2009年建築設計事務所「新素材研究所」を東京に開設、静岡県長泉町に IZU PHOTO MUSEUM を設計する。11年、主宰する小田原文化財団が、公益法人として認可され、財団の活動として「杉本文楽曾根崎心中付り観音廻り」を神奈川芸術劇場にて公演する。88年に毎日芸術賞、00年にはパーソンズスクールオブ デザイン、ニューヨーク、名誉博士号、09年に高松宮殿下記念世界文化賞、そして10年に紫綬褒章。おもな著書に『歴史の歴史』(新素材研究所)『空間感』(マガジンハウス)『苔のむすまで』『現(うつつ)な像』『アートの起源』(新潮社)がある。
http://www.sugimotohiroshi.com

           
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