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2025年7月31日
真夏のシャンパーニュ。ゴクっといきたい必須条件とは?
Lanson|ランソン
猛暑日がひたすら続く今年の夏、乾いた喉を潤すシャンパーニュに求められるのは、重厚な味わいよりもキリッと脳を刺激する鋭角な酸味とフレッシュな果実感がもたらす爽やかさである。そんな心と身体の渇きを両面から満たすのが、260年の歴史を持つ老舗シャンパーニュメゾン「Lanson(ランソン)」だ。「A Fresh Touch of Love(フレッシュな愛のひとさじ)」というブランドコンセプトが示すように、ランソンが追求するのは、まさに猛暑にふさわしい“極上のスッキリ感”。その秘密は、他のメゾンとは一線を画す独自の醸造哲学にある。
Text by TSUCHIDA Takashi
今夏の贅沢。ノンマロラクティック発酵という革新
ランソンの最大の特徴は、“ノンマロラクティック発酵(非MLF)”というユニークな醸造手法にある。多くのシャンパーニュメゾンがマロラクティック発酵によって酸味を和らげる中、ランソンは意図的にこの工程を避けることで、シャープで引き締まった酸味を残してきた。
この手法を採用するシャンパーニュメゾンは、KRUG(クリュッグ)など一部の名門に限られる。大多数のメゾンがマロラクティック発酵を行う理由は、シャンパーニュ地方の冷涼な気候によってブドウに残る高い酸味を和らげ、飲みやすくするためだ。さらに、この工程により熟成期間を短縮でき、早期の出荷が可能になるというメゾン側の事情もある。
しかしランソンは、あえてこの“楽な道”を選ばない。リンゴ酸という鋭い酸を乳酸という柔らかい酸に変換するマロラクティック発酵を行わないことで、ワインの生き生きとしたフレッシュさを失わせないのだ。一方で、マロラクティック発酵を行わない代わりに、ワインの熟成期間を長くとる。時間をかけ、穏やかにまろやかな味わいとなっていくことを待つのだ。ゆえにランソンには独特の酸味が残るが、この酸味こそが、猛暑に胃を心地よく刺激するのである。
過去には、あまりにもストイックなアプローチ(100%非MLF)により、「酸っぱすぎる」という評価を受けたのは事実。しかし転機となったのが、2013年にエルヴェ・ダンタン氏が醸造責任者に就任したことである。ダンタン氏は、ランソンの伝統的なDNAを守りながらも、より洗練されたバランスを追求した。現在のNV(ノンヴィンテージ)ワインでは、75%を非MLF、25%をMLFという絶妙な配合を実現している。この変更により、ランソン特有のフレッシュさを保ちながら、より飲みやすく複雑な味わいへと進化を遂げた。
さらに、ダンタン氏の就任に合わせて大規模な設備投資を実施。最新の醸造設備「シェ・ボワ(木樽貯蔵庫)」と「単一畑別タンク」などの技術革新により、品質は過去に比べて飛躍的に向上している。業界関係者からは「ランソンの味が変わった、とても美味しくなった」という評価が相次いでいるようだ。
260年の歴史が紡ぐ、シャンパーニュ界の名門
1760年にランス市で創業したランソンは、シャンパーニュメゾンの中でも最古参のひとつとして歩み続けてきた。そのブランドの精神性を決定づけたのが、創業から38年後の出来事である。創業者の息子がマルタ騎士団のメンバーとなったことを機に、ランソンは世界最古の慈善団体であるマルタ騎士団のシンボルを自社のロゴに採用した。この「ランソン・クロス」は単なる装飾ではなく、人々への愛と奉仕の精神を表すものとして、現在まで受け継がれている。
そしてランソンの名声を決定づけたのは、20世紀初頭の英国ヴィクトリア女王との出会いである。早くから海外市場、特にイギリスへの輸出に力を入れていたランソンは、その品質が認められ、1900年にシャンパーニュメゾンとして初めて英国王室御用達の栄誉を授与された。この称号は124年間という最長記録で維持され、エリザベス女王時代も変わらず愛飲されてきた歴史を証明する。
現在は女王の崩御により一時的に称号を失っているものの、イギリスとの深い絆は、現在でもランソンの国際戦略の核となっている。1977年から続くウィンブルドンテニス選手権の公式パートナーシップは来年で50周年となり、これはウィンブルドンのパートナーシップとしては2番目に古い歴史を誇る。そうしたことも手伝い、イギリス市場でのランソンの成功は目覚ましく、特にロゼシャンパーニュではリテール部門でナンバー1のシェアを獲得している。
ランソンは1883年から製造を開始していたロゼシャンパーニュを1952年に本格展開、ロゼの先駆者としても知られている。その情熱は、現在においても健在だ。ルフトハンザ航空とブリティッシュエアウェイズのファーストクラスでは、ランソンのロゼ・シャンパーニュが今もオンリストされている。
夏におすすめのランソンラインナップ
進化したランソンが夏の食卓で発揮するのが、「アペラターブル」としての魅力である。フランス語で“テーブルが呼んでいる”という意味で、食前酒として胃を刺激し、食欲を掻き立てる効果を表現した言葉だ。
たしかに、シャンパーニュの価格は数年前からじわじわと上がり、以前のように気軽に手を出しづらくなった。だからこそ、せっかく手に取るチャンスがあるならば、銘柄にはしっかりとこだわりたいものである。そんな状況下で、ランソンが提供する新時代のシャンパーニュ体験は、酷暑で疲れた心と身体を満たしてくれるに違いない。
写真左/ブラック・クリエイション258(税込9900円)は、ランソンの顔ともいえるフラッグシップキュベである。「258」という数字は、1760年の創業から258回目の収穫を意味する。ピノ・ノワール50%、シャルドネ35%、ムニエ15%のブレンドで、柑橘系の爽やかな香りと、口中で弾けるフレッシュなアロマが猛暑の厳しさを忘れさせてくれる。
写真中/ロゼ・クリエイション67(税込1万4850円)は、美しいサーモンピンクの色合いが盛夏のテーブルを華やかに彩る。ラズベリー、ザクロ、ブラッドオレンジの上品な香りに、繊細な花や果実のニュアンスが広がる。
写真右/ノーブル・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン2005(税込4万7300円)は、特別な夜を演出するプレステージキュベ。シャルドネ100%、17年間という長期熟成を経た究極の一本で、真夏のディナーを格別な体験に変えてくれる。
写真中/ロゼ・クリエイション67(税込1万4850円)は、美しいサーモンピンクの色合いが盛夏のテーブルを華やかに彩る。ラズベリー、ザクロ、ブラッドオレンジの上品な香りに、繊細な花や果実のニュアンスが広がる。
写真右/ノーブル・シャンパーニュ ブラン・ド・ブラン2005(税込4万7300円)は、特別な夜を演出するプレステージキュベ。シャルドネ100%、17年間という長期熟成を経た究極の一本で、真夏のディナーを格別な体験に変えてくれる。
問い合わせ先
モトックス
Tel.0120−344101
https://lanson.com/en