INTERVIEW|『ヘルタースケルター』蜷川実花監督インタビュー
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2015年2月16日

INTERVIEW|『ヘルタースケルター』蜷川実花監督インタビュー

INTERVIEW|いよいよ7月14日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!

映画『ヘルタースケルター』蜷川実花監督インタビュー(1)

映画というより事件!――近年、公開前にこれほど話題を呼んだ邦画はあっただろうか。岡崎京子の名作漫画『ヘルタースケルター』の主人公りりこを演じるのは沢尻エリカ。個性的な共演者を従えて、圧倒的な存在感を見せつける。「映画の冒頭と、記者会見のシーンは気に入っていますね。最初から絵として浮かんでいました」と語る蜷川実花監督に話をきいた。

Text by KAJII Makoto (OPENERS)
Portrait by MARCO (LUCKYSTAR)
Styling by SAITO Kumi (SIGNO)
Hair&Make by HAYASAKA Kazuko(FEMME)

東京を疾走するスピード感あふれるオープニング

――試写を拝見しましたが、とにかく沢尻さんがきれいでした。

あれだけ泣いても叫んでも、なりふりかまわず演じても、美しく撮れているのは彼女の力でしょうね。大前提として、私は女性はきれいに撮るものだと思っているので、撮影部と照明部のスタッフには、一番最初に、「きれいに撮ってください」とお願いしました。

――後半へ向かってもきれいでしたね。

目の下のクマも隠さない、ヘアスタイルも直さない、そういうところもふくめて、よく演じてくれたと思います。

――今回は前評判がとても高くて、マスコミ試写でさえ会場に入れないひとが出たほどですが、手応えはいかがですか?

何かを作って世に出すときは、「よくできた」と思って出すんですが、評判がいいと安心します。今回はスタッフやキャストをふくめて、「蜷川さんとやりたい」というひとが多くて、そう思って集まってくれたひとをまずがっかりさせたくない、かかわったひとのプロフィールに書いてもらえるような作品になればいいと思っていて、クリアできそうなのでひと安心しています。

蜷川実花|ヘルタースケルター 02

© 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

蜷川実花|ヘルタースケルター 03

© 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

INTERVIEW|いよいよ7月14日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー!

映画『ヘルタースケルター』蜷川実花監督インタビュー(2)

7月23日(月)まで、渋谷・パルコミュージアムにて、蜷川実花自身が撮りおろしたスチールフォトや劇中雑誌用ファッションフォトなどを展示する展覧会が開催中。そして沢尻エリカ写真集「HELTER-SKELTER MIKA NINAGWA」も映画公開の7月14日に発売するなど、さまざまな展開をみせている映画『ヘルタースケルター』。蜷川実花監督は、「みんなのなかに“小さいりりこ”はいるんじゃないかしら」と語る。

印象に残っている、ふたつの握手

――映画のクランクイン前に沢尻さんとの印象に残っていることはありますか?

一緒にご飯を食べたときに、“これをやりきって駆け抜けるぞ”という意味の握手をしたんですが、握手から伝わることがあるんだなと思うほど固い握手でした。エリカの決意も伝わってきたし、私の決意も伝わったと思うほどの。とにかく「やるぜ!」という男同士みたいな(笑)決意の握手でした。それからクランクアップして、初号試写を観たあとに、エリカが泣きながら「本当にありがとうございました」と握手をしたんですが、そのときも伝わってくるものがありました。

――蜷川さんが気に入っているシーンは?

冒頭は好きですね。終盤の記者会見のシーンも好きです。このふたつは最初から絵として浮かんでいました。

――沢尻さんの変化を感じたことは?

クランクインして最初の10日間は緊張していたようです。しっかり演じるのは5年ぶりぐらいなので、私が予想していたより緊張して気合いが入っていたんだなというのは、撮影が進んでわかりました。

――沢尻さんの演技で、蜷川さんの予想を超えたシーンはありましたか?

やはり泣きの演技でしょうか。屋上で泣いているシーンや、叫びつづけているところは圧巻です。女優にあそこまで泣き叫びつづけられるのは、見ていてつらかったですね。りりことシンクロしながら撮っていたので、私もつらかったです。

――それは、蜷川さんにもりりこ的な要素があると?

主人公とどれだけシンクロできるかは、原作を選ぶときの大きなポイントで、シンクロしないと撮れないタイプだと思います。今回は撮っていて、思ったよりもシンクロ率が高かったですね。

蜷川実花|ヘルタースケルター 05

© 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

蜷川実花|ヘルタースケルター 07

© 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

不公平な世の中に私たちは生きている

――今回は、沢尻さんがやりきった感が伝わってきますが、彼女にはどんな女優、女性になってほしいと思いますか?

今回一本やってみて思ったのは、エリカは本当に不器用なひとで、まっすぐなひと。アスリートみたいで、撮影が終わって休業するのもエリカらしい。女優になるために生まれてきたひとだけど、芸能界を生きていくのは、なかなかしんどいだろうなと。神経の繊細さと、女優としての図太さが共存しているおもしろい女性だと思います。写真も撮っていますが、やっぱり女優さんだなと思いました。スケールがちがいますね。あのスクリーンを制することができるので、これからいい作品と出合えることを願っています。

――では、『ヘルタースケルター』を観る女性へメッセージを。

主人公のりりこは、モンスターキャラクターのように思われがちですが、じつは私たち一人ひとりのなかには小さいりりこはいると思っています。女性は美醜に圧倒的に左右されて、美しいことは得だということは大昔から厳然とある事実。不公平な世の中に私たちは生きていて、それでどう生きていくのかというおもいで撮っていました。世の中は不公平だなと思っています。

――なるほど。では男性へメッセージを。

今回は、大人のいかした男性、とくに有識者のかたがたに驚くほど評判が良くて、そんなに褒められたことがないので(笑)、とてもうれしいです。試写を観た男性から、「自分に重なることがたくさんあった」という感想もあって、男性でも女性でも抱えているモノはおなじなんだと。男性もバイアスをかけずに観ていただければ。

――きれいな沢尻さんを観るだけでも価値がありますね。

本当、そうですね。

蜷川実花|ヘルタースケルター 08

© 2012 映画『ヘルタースケルター』製作委員会

『ヘルタースケルター』

7月14日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー

監督|蜷川実花

出演|沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴木杏(友情出演)、寺島進、哀川翔、窪塚洋介(友情出演)、原田美枝子、桃井かおり

脚本|金子ありさ

http://hs-movie.com

©2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会

           
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