“セナ”の名を冠した究極のロードカー「マクラーレン セナ」がデビュー|McLaren
CAR / NEWS
2018年5月25日

“セナ”の名を冠した究極のロードカー「マクラーレン セナ」がデビュー|McLaren

McLaren Senna|マクラーレン セナ

“セナ”の名を冠した究極のロードカー「マクラーレン セナ」

マクラーレン・オートモーティブは12月10日、F1ドライバーである故アイルトン・セナの名を冠したサーキット指向の新型ハイパーカー「マクラーレン セナ」を発表した。

Text by HARA Akira

セナの名を冠する理由

「まったく妥協のないレベルにまで自分を高めるのだ。自分の全てを、まさに全てを捧げる」。かつてマクラーレンF1をドライブし、3度のワールドチャンピオンに輝いた故アイルトン・セナのこの言葉を体現した新型「マクラーレン セナ」。開発の目的はただ一つで、「公道でも走れる、マクラーレンの究極のサーキット仕様モデル」というものだ。

マクラーレン セナ(以下セナ)は、マクラーレンのトップレンジであるアルティメット シリーズに属し、その最初のモデル「P1」、次の「P1 GTR」に続く3番目のニューモデルだ。P1が公道とサーキットの両方で最高のドライバーズカーであるようデザインされたのに対し、セナは法的には公道での走行が可能なものの、目指したものはサーキットでの名声であり、そこでの活躍を最優先した機能を搭載したモデルだ。

s_005_maclaren_senna

s_007_maclaren_senna

したがって、日常生活でも多様な使い方のできるスーパーカーというマクラーレンのトレードマークからの方向転換が慎重になされており、ドライバーとクルマの一体感をもっとも純粋な形で実現し、他のロードカーでは味わえない強烈なサーキット エクスペリエンスを与えてくれるという。

「私たち家族は、アルティメットシリーズの新モデルが、“マクラーレン セナ”として名前が冠されることをこの上なく誇りに思っています。アイルトンのレーシングスピリットや業績が繋がるプロジェクトはこれが初めてです。マクラーレン セナは、叔父に敬意を表したものです」と語るのは、アイルトン・セナの甥にあたり、レーシングドライバーかつマクラーレン・アンバサダーを務めるブルーノ・セナ氏だ。

McLaren Senna|マクラーレン セナ

“セナ”の名を冠した究極のロードカー「マクラーレン セナ」 (2)

カーボンファイバー製シャシーとボディパネルによる超軽量空力構造

セナのコアとなるカーボンファイバー製「モノケージIII」シャシーは、「720S」の基本部分を発展させた公道モデル中最も強固なモノコック構造で、オールカーボン製のボディパネルと組み合わされ、その重量は伝説のスーパーモデル「マクラーレンF1」以来最軽量となる1,198kgを実現した。

エクステリアは、「Form follows function(フォルムは機能に従う)」のマクラーレンのデザイン哲学を純粋な形で表現したもので、まさに衝撃的。猛々しく有機的な形状は、ダウンフォースとエアロダイナミクスがバランスした集合体と言える。ボディは自然の最も効率的な形状であるティアドロップ型で、エアロダイナミクス性能を最適化するために、ボディパーツはキャビンに「クリップ留め」されたようになっている。

s_006_maclaren_senna

s_004_maclaren_senna

フロントのエアロブレードやスプリッター、リアのダブルディフューザーと2層構造の巨大なカーボンファイバー製リアウイングは、新世代のアクティブ エアロダイナミクスに移行しており、ブレーキ中でも、コーナー中間のスロットル調整でも、またコーナー出口の加速中でも、ダウンフォースと空力制御のバランスが最適化されるよう、絶えず調整が行われる。

また、超合金のインコネルとチタンで作られたスラッシュカット仕上げのエキゾーストはリアデッキ最後部から出ており、その排気はパイプの角度を利用してリアウイングから排出される設計だ。

s_027_maclaren_senna

s_028_maclaren_senna

マクラーレンF1にインスパイアされたディヘドラルドアは、ルーフの一部を伴って上部前方に向かって開くもので、その広い開口部によってドライバーはヘルメットやレーシングスーツを着用していても、簡単にコックピットにアクセスすることができる。そのドアには2枚のガラス製サイドウインドーが付いていて、上部のガラスは固定され、下部には小型の開口部を持つ。オプションで、実質的にルーフとなるドアの上部とサイドの下部のカーボン部分をガラスも用意され、外部環境(サーキット)との一体感を高めることも可能だ。

コックピットはカーボンファイバーを多用し、徹底的に無駄を省くとともに乱雑にならないよう最小限の装備が施されたレーシングライクなもの。ドライバーの頭上にあるカーボンファイバー製コンソールには、エンジン スタート ボタンとリリース メカニズム、ウインド スイッチを配置。3本スポークステアリングには、フィードバックを純粋に受け止めるためにボタンもスイッチもつけられておらず、必要な情報は高解像度の折りたたみ式ドライバー用ディスプレイと、コンソール中央の縦型インフォテインメントスクリーンから得ることになる。助手席を取り外すことまで考えたという室内は、余分な手荷物への考慮はされていないが、シート後方のスペースには2人分のヘルメットとレーシングスーツを入れるだけのスペースが確保されている。

McLaren Senna|マクラーレン セナ

“セナ”の名を冠した究極のロードカー「マクラーレン セナ」 (3)

800ps、800Nmを誇る4.0リッターV8ツインターボ搭載

セナがミッドシップに搭載するのは、コードネームがM840TRとなる4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンのみで、モーターなどは用いられない。最高出力800ps、最大トルク800Nmを発生し、マクラーレン中で最もパワフルなロードカー向け内燃エンジンとなる。パワーウエイトレシオは668ps/トン。この数字が新モデルの性能の高さを示すが、今のところ加速性能や最高速度のデータは未公表だ。

モータースポーツ由来のドライサンプ潤滑方式やフラットプレーンクランクシャフトはパワートレインの軽量化に貢献し、超低慣性のツインスクロール ターボチャージャーと電子制御式のターボウェイストゲートの組み合わせは、「光のような速さ」のスロットル反応を実現した。

s_016_maclaren_senna

s_020_maclaren_senna

セナを運転することができる幸運なドライバーのため、エンジニアたちはインテークから燃焼、排気に至るエンジン全体が機械的なシンフォニーを奏でるよう設計した。F1やP1でも採用されていたルーフ上の「シュノーケル」型インテークにより流れ込んだ空気が奏でる高周波サウンドと、エンジンマウントからコックピットに流れ込み、カーボンファイバー製モノケージのダブルウォール式リア構造を振動させる低周波サウンドがミックスされ、V8エンジンがまるでドライバーズシートの横に置かれているような一体感のあるエクスペリエンスを提供するという。

トランスミッションは、シームレスシフトを実現したデュアルクラッチ式の7段ギアボックスで、後輪を駆動する。マニュアルシフトを実現するカーボンファイバー製のパドルシフトは、レーシンググローブの着用、非着用に関わらず機械的な一体感を深めてくれる細長い形状となっている。

s_029_maclaren_senna

s_018_maclaren_senna

エンジンとトランスミッションの特性は、センターコンソールのアクティブダイナミクスパネルから、コンフォート、スポーツ、トラックの3モードを選択できる。

足回りは、ダブルウィッシュボーン式のレースアクティブ シャシー コントロールII(RCC II)サスペンションを採用。フロントとリアのアクティブ エアロダイナミクスとモノケージIIIシャシーと作用し合い、あらゆるスピードと状況で、ドライバーとの一体感を最大化させる設計となっている。この進化によって、レースモードが追加されることになり、ルーフ部のパネルを通じて変更することができる。タイヤは技術パートナーであるピレリの協力で開発した、ビスポークのピレリP ZERO Trofeoを採用する。

s_024_maclaren_senna

s_022_maclaren_senna

「セナは、ドライバーが能力を限界まで発揮できるような、本当の性能を提供します。扱いやすく驚異的なパワーウエイトレシオによって性能をフルに発揮することができる一方で、強烈なエクスペリエンスとともに、世界中の優れたドライバーだけが感じることのできる、興奮とチャレンジも与えてくれます」と語るのは、アルティメットシリーズ・ビークルライン担当デイレクターのアンディ・パーマー氏だ。

マクラーレンTrack22ビジネスプランに基づいて投入された第3のモデルであるマクラーレン セナは、2018年の第3四半期から英国サリー州ウォーキングのマクラーレン・プロダクションセンターにおいて手作業で組み立てられ、生産台数は500台限定となる。価格は675,000ポンド(日本円で約1億260万円)からで、すでに全車両のオーナーが決定しているという。実車は来年3月の第88回ジュネーブモーターショーで披露される予定だ。

           
Photo Gallery