ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ|Ferrari
CAR / NEWS
2016年10月14日

ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ|Ferrari

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ

フェラーリは、正式発表を前にオフィシャル画像で存在を公開していたハイブリッドスーパーカー、「ラ フェラーリ」のオープンモデルをパリ モーターショーの会場でついにワールドプレミアした。その名は「ラ フェラーリ アペルタ」。カーボンファイバーとファブリック製となる2つのトップを持つ世界最速のオープンカーは、もちろん一般公開されたその時点ですでに完売。しかし、パリ モーターショーでフェラーリが発信したニュースはこれだけではなかったのだ。

Text by SAKURAI Kenichi

創立70周年を前にフェラーリが勢いを増す

パリ モーターショーのフェラーリ ブースは、いつになくニュースにあふれていた。誰もが期待するニューモデルは、噂のオープンスペチアーレ「ラ フェラーリ アペルタ」のほかにももう1台。今春4シーターFRモデルとして登場した「GTC4 ルッソ」が採用するV12に代わり、新たに最高出力610psのV8ターボエンジンを搭載した「GTC4 ルッソT」の追加も発表。2つのニューモデルをぜいたくにも同時にワールドプレミアした。

そしてさらに来年、すなわち2017年に創立70周年を迎えるフェラーリは、その長い歴史を象徴するように、パリ モーターショーの会場で初めて同社創立70周年の記念ロゴを発表。

世界のスポーツカーに大きな影響を与え続けてきたフェラーリの歴史を、改めて来場者印象付けた。

フェラーリ70周年ロゴ

このロゴに合わせて発表されたプランも、ファンにはたまらないプレミアムで興味深いものである。なんと、フェラーリの歴史を紡いできた過去に生産された70車種をテーマに、「創立70周年に合わせて70タイプの特別なカラーリングを採用したモデルをテーラーメイドアトリエが製作する」と発表したのだ。

これは、過去の歴史的名車が持つ各々の特徴やキャラクターをモダンにアレンジし、現行カタログモデル5車種をベースに展開するものだ。つまり、各70台×5モデルの計350台の特別なフェラーリが、1台ずつつくられることになることになるわけである。

例えば、パリ モーターショーに展示されていたテーラーメイドアトリエの手になるモデルから1台を紹介するならば、グリーンのボディカラーと25番のゼッケンが目を引く「488スパイダー」は、 「The Green Jewel(ザ グリーン ジュエル)」と名付けられたマシン。英国伝説のレーシングチーム、デイヴィッド パイパー レーシングの365 P2へのオマージュとなるべく同じブリティッシュグリーンにペイントしたものだ。

Ferrari 488spider the green jewel|フェラーリ 488スパイダー ザ・グリーンジュエル

Ferrari 488 The Green Jewel

フェラーリ 70周年記念モデル

デイヴィッド パイパーは、フェラーリのプライベートレーサーとして知られ、365 P2をドライブし、1965年と1966年のキャラミ9時間レースを制したほか、1966年にはクレルモン-フェランで開催されたトロフィー ドゥ オーベルニュでも優勝している。こうした歴史的なレーシングモデルをモチーフにしたカラーリングを現行モデルにワンオフで採用するというユニークな試みが70周年記念モデルにおいて行われるのだ。

創立70周年を前に、しかし、そんな多くのトピックスが発信されたフェラーリにあってもやはり本命といえるのは、ハイブリッドスーパーカー、「ラフェラーリ」のオープンバージョンとなるスペチアーレ、「ラフェラーリ アペルタ」の世界初公開だ。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ (2)

最速のオープンスペチアーレ

9月29日に開幕したパリ モーターショー。フェラーリは、予告どおりラ フェラーリのオープントップ バージョンを公開した。今年5月上旬にフェラーリ社セルジオ マルキオンネ会長兼CEOは「ラ フェラーリには将来オープンモデルを追加する」と公言していたが、有言実行。まさにその通りとなった。

ラ フェラーリの車名に追加された「アペルタ」とは、イタリア語で「開く」や「開放」を意味するもので、もともとはラテン語である。2010年の同じパリ モーターショーで発表されたV型12気筒エンジンを搭載した当時のフラッグシップモデル、「599」ベースの限定オープントップモデルとして発表された「SAアペルタ」でも使用された特別なネーミングだ。ちなみにSAアペルタで用いられたSAとは、セルジオとアンドレアというピニンファリーナ親子のイニシャルから取られたもので、これは同時にピニンファリーナ創立80周年を記念したモデルでもあった。ゆえにSAアペルタの生産台数も80台限定である。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

ルーフのないトップレス仕様である以外、「ラ フェラーリ アペルタ」のパワートレインやシャシーメカニズムなどは従来の「ラ フェラーリ」と変わらない。注目のトップは、着脱式カーボンファイバー製パネルとファブリック製ソフトトップの2ウェイ仕様。どちらもスタイリングを損なわないデザインとして考慮されているというが、これらのルーフを装着したシーンはまだ公開されていない。オープン化に伴い、もちろんシャシーはベースモデルに比べ強化されているというが、こちらも車重は未公表。重量増はわずかであるということだけが発表されている。

リアミッドにマウントされるパワートレインは、6,262ccの排気量を持つ自然吸気V型12気筒エンジンで、最高出力800ps/9,000rpm、最大トルク700Nm(71.4kgm)/6,750rpmを発生。これに163ps (120kW)の最高出力を誇るF1由来の「KERS(電気モーターと120個のセルで構成されたバッテリー)」を組み合わせたハイブリッドシステムは、エンジンとのシステム合計で最高出力963ps、最大トルク900Nm(91.8kgm)を標榜する。最高出力963psのパワーは、言うまでもなく歴代フェラーリの最高峰に位置するもので、すなわちラ フェラーリのオープン版たるアペルタは歴代最強のフェラーリ オープンモデルということになる。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ (3)

オープンならではのフォーリングを重視

そうした歴代No.1のパフォーマンスに対して、駆動方式はミッドエンジン後輪駆動のコンベンショナルなもので、オーバー900psのパワーは7段デュアルクラッチ式の「F1 DCT」を介してすべてが後輪に伝わる。他のスーパーカーメーカーが、700psオーバーの大出力に対応すべく4輪駆動の採用を進めるのとは対照的なシャシーシステム構築である。

一方オープンボディは、ハードトップを外した状態、すなわちオープンのままでラ フェラーリと同等の空力性能を確保することがデザイン上の目標になったのだという。例えばラジエーターからの熱い空気が効率的にボンネットを通るようその設置傾斜角はクーペとは異なり、走行中の気流がアンダーボディへとぬけるよう、後傾して搭載されている。この変更は、コックピットに向かう気流をラジエーターからの排熱気流と完全に分離。コックピット内部快適性保持にも貢献するという。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

デザインやスペックと同時に、特に重視されたのがオープンエアモータリング、すなわちオープン時の走行フィールだ。ルーフがないからこそ、「ハイブリッドのパワーユニットが奏でるサウンドに胸躍り、純粋な高揚感を得ることができる」とフェラーリはこのクルマ最大の特徴を説明する。確かに官能的なエキゾーストサウンドは、トップレスのキャビンから乗員を大いに刺激するはずである。

先進的なエアロダイナミクスは、オープン時であっても快適なキャビンの居住性の確保に貢献する。このクルマのために開発された最新のウインド ストップ システムによってキャビンは風圧によるストレスにさらされないよう保たれ、例え高速走行時であっても助手席のゲストとの会話を支障なく楽しむことができるという。かつて「F50」で助手席のゲストと会話を行うために密閉型のヘッドフォンを備えたヘッドセットが標準装備されていたことを思い出すと、隔世の感がする。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

ラフェラーリのオープン版、その名はアペルタ (4)

70周年記念のイベントを世界中で開催

さらに、オープントップ化されたボディ上部以外にラ フェラーリと異なる部分がもう1つ。ルーフがなくなったことによってバタフライ ドアと呼ばれる跳ね上げ式のドアは、開けた時の角度がクーペとはわずかに異なるという。ホイールアーチやサイドパネルの形状、そしてカーボンファイバー製のエアロダイナミックベントの追加などがクーペモデルとは異なる箇所。マニアならその違いを誰かに語りたくなるようなトリビアである。

こうしたオープンボディ化に伴う専用の設計変更を施すことにより、ボディの剛性や空気抵抗係数はクーペとほとんど変わらないとフェラーリは主張する。よって動力性能も、0-100km/h加速が3秒未満0-200km/h加速が7秒未満、0-300km/h加速は15秒フラット、そして最高速度350km/h以上と、クーペと同等の堂々たる数値が公表されている。

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ

生産台数や価格に対する公式なアナウンスはないが、クーペ版のラ フェラーリの約半数の生産台数になるとも伝えられている。いずれにせよこのオープンバージョンとなるスペチアーレ、「ラ フェラーリ アペルタ」もまた、フェラーリ70年の歴史を彩る貴重なコレクターズアイテムとしてそのヒストリーに名を残すことは間違いない。もちろんすでに選ばれた顧客にのみ販売が行われ、生産予定の全量が売約済みになっているという。価格は100万ユーロ(邦貨約1億1,550万円)と噂されていたクーペ版のラ フェラーリより高いことだけは確実である。

来年、2017年に創立70周年を迎えるフェラーリは、こうしたトピックス満載のニューモデルのリリースに加え、全世界60カ国以上にまたがる世界ツアーも予定している。これは、イタリアを中心に世界中で1年間に渡り記念イベントを随時開催し、フェラーリ70年の歴史を創り上げたクラシックフェラーリから最新モデルまでを一堂に集めるのだという。

そんな1年にも及ぶ世紀の祭典は、フェラーリの聖地マラネッロで開催されるエクスクルーシブイベントで華々しく幕を下ろす予定になっている。今からその時を迎えるのが楽しみでしかたがないというフェラリスタは、今後フェラーリが発信するニュースからひとときも目を離さないで欲しい。

080507_eac_spec
LaFerrari Aperta|ラフェラーリ アペルタ
ボディサイズ|全長 4,702 × 全幅 1,992 × 全高 1,116 mm
ホイールベース|2,650 mm
車両重量|1,210 kg
エンジン|6,262cc 65度 V型12気筒
ボア×ストローク|94 × 75.2 mm
圧縮比|13.5
エンジン最高出力|800 ps/9,000 rpm
エンジン最大トルク|700 Nm/6,750 rpm
モーター最高出力|120 kW(163 ps)
システム統合最高出力|963 ps
システム統合最大トルク|900 Nm
トランスミッション|7段DCT
ブレーキ前|398 x 223 x 36 mm カーボンセラミック ベンチレーテッドディスク
ブレーキ後|380 x 253 x 34 mm カーボンセラミック ベンチレーテッドディスク
サスペンション前|ダブルウィッシュボーン
サスペンション後|マルチリンク
前後重量配分 前:後|41:59
0-100km/h加速|3 秒以下
0-200km/h加速|7 秒以下
0-300km/h加速|15 秒
最高速度|350 km/h以上
タイヤ 前/後|265/30R19 / 345/30R20
CO2排出量|340 g/km

           
Photo Gallery