AMG GTのオープンバージョンが登場|Mercedes-AMG
Mercedes-AMG GT Roadster|メルセデス-AMG GT ロードスター
AMG GTのオープンバージョンが登場
6月に「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で発表された「AMG GT」の最強バージョン、「AMG GT R」に続き、メルセデスAMGはファン待望のオープンモデル、「AMG GTロードスター」を来たるパリ・サロンでワールドプレミアする予定だ。矢継ぎ早にラインナップを拡充するメルセデスAMG。強力なライバルが先行するプレミアムスポーツカーブランド市場において確固たる地位を築き上げるために、オープンモデルは必要不可欠だったのだ。
Text by SAKURAI Kenichi
476psと557psの2バリエーションを用意
車名は噂されたカブリオレではなく“ロードスター”。2シーターのハイエンドプレミアムスポーツカーのオープンバージョンにはいかにもふさわしいネーミングである。見てのとおり電動ソフトトップを採用するルーフ以外は従来の「AMG GT」と共通ともいえるフォルムだが、「AMG GT ロードスター」を詳しくみていくと、どうやら細部が既存の「GT」とは異なった進化版であることがわかる。
例えば、フロントセクション。台形のフロントグリルは、6月に追加されたハイパフォーマンスバージョン「AMG GT R」と同じデザインを採用している。その下に用意されるフロントスポイラーもAMG GT R譲り。さすがにAMG GT Rほどアグレッシブなデザインではないが、左右のエアインテークの形状や、それを結ぶアーチ状の意匠には近しいものがある。
このフロントバンパーの内部には、AMG GT R譲りとなる電子制御式グリルシャッターを内蔵。高速走行時にはシャッターを閉じで空気抵抗を低減させ、負荷に応じて開いたざいには冷却効率向上させることができる。
アンダーリップをあえてボディから切り離したようなデザインにしたのも、「AMG GT ロードスター」だけのデザイン上の特徴だ。これは従来のAMG GTとも、そして最強バージョンのAMG GT Rとも異なるフィニッシュである。
確かに最も新しいバリエーションであるAMG GTロードスターを正面から見分ける要素となるには違いないが、しかし今後登場するであろうAMG GTのマイナーチェンジ版にも採用される共通のデザインであるとも考えられる。ともすれば、AMG GTロードスターの登場と同時にパリ・サロンにおいてクーペ版のマイナーチェンジも発表されるのでは、と予想はできるが、今のところクーペ版の変更にかんしては何のアナウンスもなされていないことを念のために付け加えておく。
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クーペモデル以上のパワー
フロントミッドに搭載される4リッターV8ツインターボには、2つのバリエーションを用意する。
ベースモデルの「AMG GT ロードスター」には、従来の「AMG GT」から最高出力10kW(14ps)を引き上げた最高出力350kW(476ps)、最大トルク630Nm(64.2kgm)のパワーユニットを搭載。その上をいくハイパフォーマンスバージョンの「AMG GT C ロードスター」には、同じ排気量ながら「AMG GT S」の最高出力375kW(510ps)、最大トルク650Nm(66.3kgm)を大きく上回る、最高出力410kW(557ps)、最大トルク680Nm(69.3kgm)の4リッターV8ツインターボを搭載する。
ともにVバンクのあいだに2つのターボチャージャーを設置したAMGならではのユニークな構造を持つ「ホットインサイドV」と呼ばれるパワーユニットで、AMGスポーツシフトと呼ばれる7段DCT(デュアルクラッチトランスミッション)と組み合わせている。
なぜオープンモデルなのにパワーアップしたエンジンを搭載したのかは後述するが、メルセデス-AMGから発表されたデータによれば、「AMG GT ロードスター」は0-100km/h加速が4秒ジャスト、最高速度は302km/h、「AMG GT C ロードスター」は0-100km/h加速が3.7秒、最高速度は316km/hにも達する実力の持ち主である。
当然ながらトップモデルとして登場した最高出力430kW(585PS)、最大トルク700Nm(71.3kgm)を誇るAMG GT Rの0-100km/h加速3.6秒、最高速度318km/hというデータにはわずかながら及ばないが、オープンボディであるにもかかわらず、AMG GTロードスターがAMG GT Rに遜色ないパフォーマンスを持ち合わせているメルセデス最速のオープンモデルであるという事実は、もちろん覚えておく必要がある。
性能に合わせナローとワイドボディを用意
もう1つ知っておくべきことに、AMG GT ロードスターとAMG GT C ロードスターのタイヤサイズの違いがある。AMG GTロードスターはフロントが255/35R19、リアが295/35R19なのだが、AMG GT C ロードスターでは最高出力410kW(557PS)のパワーをフルに受け止めるべく、フロントに265/35R19、リアで305/30R20の前後異径サイズを採用した。
この太くなったタイヤを収めるために、AMG GT C ロードスターではAMG GT ロードスターよりもワイドなリアフェンダーを採用している点も注目のポイントである。つまり、これはかつてのポルシェ「911」のボディにおけるカレラ(ナロー)とカレラS(ワイド)の関係と同じである。余談だが、現行991 II型の911においてはカレラとカレラSの全幅は同一なので少々話がややこしくなるが、そこはカレラ(2駆)とカレラ4(4駆)に置き換えるのが正解だろう。
ともかくこのリアフェンダーは、AMG GT ロードスターに対しAMG GT C ロードスターのほうがワイド。ワイド化されたリアフェンダーもまた、フロントデザイン同様にAMG GT R譲りのパートである。つまり極端な言い方をすれば、AMG GT C ロードスターは、ボディデザインやエンジンパフォーマンスにかんして、AMG GT Rのディチューン版(のしかもオープンモデル)だとさえ、いえる存在なのである。
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わずか11秒でフルオープン
AMG GTのオープン化にあたり、メルセデスAMGはボディ構造を大幅に強化。補強パネルを各所に追加したほか、ロッカーパネルにはチェンバー構造を持つ新しい部材を使用し、リア サスペンションやダッシュボード内部にもタワーブレースを追加したという。
こうしたボディの強化策や電動ソフトトップを含むオープンシステムの追加によって車重はAMG GTロードスターで1,595kg、AMG GT C ロードスターで1,660kgになったが、パワーアップした「ホットインサイドV」によって相殺。オープンモデルながら、それぞれクーペモデルのAMG GTやAMG GT Sとさほど変わらないパフォーマンスを得ることができるのはそこに理由があり、反対に考えれば、是が非でもオープンモデルでクーペと同等のパフォーマンスを得るために、あえてロードスターのパワーを引き上げたともいえるのだ。
AMG GT ロードスターとAMG GT C ロードスターのハイライトである電動によって開閉する3層構造のソフトトップは、軽量のマグネシウム、スチール、アルミニウムによる骨格を有した堅牢な構造を持つのが特徴だ。シート背後にはロールオーバーバーも設置され、万が一の横転のさいにはロールオーバープロテクションが稼働、バー自体が飛び出し乗員保護する。ちなみにこのロールオーバーバーはアルミ製で、クロスメンバーに組み込まれているため非常に頑丈な構造であるという。
ソフトトップの開閉は、わずか11秒で完了する。最大50km/hまでの速度であれば、走行中でも開閉作業が可能だ。黒、赤、ベージュの3色がソフトトップのファブリックカラーとして用意されており、11のボディ色と10色のインテリアカラーに合わせてオーナーの好みでコーディネイトすることができる。
ロードスター専用内装色も用意
その10色のインテリカラーには、AMG GTシリーズで初めて採用されたベージュのカラーリングも含まれている。オープンカーでは、見られることも意識しなければならない。オープンエアモータリングで際だつボディカラーとコントラストをなす明るいインテリアカラーは、上質でエレガントな雰囲気を醸しだしてくれるはずである。
Vバンクをイメージしたシフトレバーまわりのデザインや質感の高いインテリアは、クーペと変わらない。よって、プレミアムスポーツブランドのAMGを名乗るだけにそのフィニッシュ クオリティは、ロードスターモデルであっても申し分ないはずだ。寒い日のオープン走行時に温風を出し、首元を暖めるエアスカーフなどメルセデスのオープンカーにお馴染みのエクスクルーシブな快適装備も、もちろんAMG GTロードスターにおいても同様に採用されている。
AMG GTロードスターとAMG GT C ロードスターが採用するAMGスポーツシフトには、AMG GT Sと同様にV8ツインターボのエキゾーストサウンドを楽しむべく、「RACE」モードが追加されている。RACEモードではよりスポーティなパラメーターに変更されるため、迅速なギアチェンジが可能。そのためAMG GT Sでは、サーキット走行用のモードだと説明されていたが、ロードスターでは、官能的なサウンドを響かせそれを楽しむためにこの「RACE」モードが存在するといってもいい。類い希なV8の熱きシンフォニーをフルボリュームで楽しめるのが、なによりもこのロードスターの特権なのである。