BMW M6 グラン クーペ&4シリーズ クーペに試乗|BMW
BMW M6 Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー M6 グラン クーペ
BMW 4 Series Coupe|ビー・エム・ダブリュー 4シリーズ クーペ
BMWの“偶数シリーズ”がいまおもしろい
いま、BMWがクーペモデルを続々と追加し、モデルラインナップの拡充を図っているのはご存知のとおり。アッパークラスでは、6シリーズに初の4ドアモデル「6シリーズ グラン クーペ」がくわわり、ミディアムでは3シリーズに設定されていたクーペが、独立して「4シリーズ」となった。注目を集めるBMW“偶数シリーズ”のクーペ2車種に九島辰也氏が試乗した。
Text by KUSHIMA TatsuyaPhotographs by ARAKAWA Masayuki
“偶数シリーズ”のこれまでといま
いまBMWの“偶数シリーズ”がおもしろい。先般テレビCMで「2002」と共演し話題となった「2シリーズ」もそうだし、「4シリーズ」の「グラン クーペ」もそうだ。カスタマーである我々にあらたな選択肢を与えてくれたことはまちがいない。「3シリーズ クーペ」を4シリーズに分けた理由は、そこにある。今後の展開も期待できそうだ。
偶数シリーズは振り返ってみると、かなり興味深いモデルがあった。「Z8」なんてのを覚えているだろうか。V8を搭載した2シーターロードスターはまさに憧れの存在。ボンドカーになったことでも広く知られた一台だ。そんな背景もあってか、“オトナ”を感じさせる。
ただマニアックなモデルだけに短命に終わる。その意味では偶数シリーズの中心になっていたのは、まちがいなく「6シリーズ」である。
これまで2ドアクーペとカブリオレでラインナップされてきた6シリーズだが、話題の中心は「グラン クーペ」だろう。4つのドアを持ちながらのクーペライクなスタイリングは高い注目を集めている。
数年前、こいつの海外試乗会に参加するためイタリアのシチリア島に訪れたときのことをいまも鮮明に覚えている。南イタリアの夕日を全身に浴びたグラン クーペはまんま彫刻のようなアート作品。BMWのクールな一面をボディ全体で表しているといった感じだ。
BMW M6 Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー M6 グラン クーペ
BMW 4 Series Coupe|ビー・エム・ダブリュー 4シリーズ クーペ
BMWの“偶数シリーズ”がいまおもしろい (2)
艶と実用性を兼ね備えた“二枚目”グラン クーペ
もちろん、グラン クーペは4ドアクーペというジャンルでいえば後発となる。メルセデス・ベンツ「CLSクラス」やフォルクスワーゲン「CC」、ジャガー「XF」あたりが一足早い。が、そこはBMW。“らしさ”をじゅうぶんに発揮する。実用性を兼ね備えた“二枚目”のクルマはそうあるものではない。
なかでも今回試乗した6シリーズ グラン クーペの頂点に立つ「M6 グラン クーペ」は、インテリアもより個性的であることを特筆したい。ここを見ると、このクルマに“艶”を感じるのは私だけではないはずだ。
象徴的なのは抑揚のついたダッシュパネルからセンターコンソールまでのライン。これまでであればフラットな面を与えて終わりのところが、コンソールをなだらかなラインで2段に分けている。
そこはドライバーオリエンテッドなBMWらしいところでもあるが、この手法はこれまでとちがう。ちょっぴりイタリアンテイストをうかがわせる、まさに艶やかな造形美だ。
では走りはどうか。
2ドアクーペよりロングホイールベースとなったグランクーペだが、そこでのネガティブさはない。軽めのステアリングをスッと切ると、ボディは瞬時に反応し向きを変える。この感覚は2ドアとそれほど変わらないだろう。M6 グラン クーペのホイールベースは2,965mm(グラン クーペは2,970mm)に対し、2ドアは2,855mmというのが実寸だ。
ちなみに、昨今のBMWはホイールベースを長めにとる傾向がある。当然キャビンを広くするという目的もあるが、主なるテーマはタイヤの外側の重量をおさえるためだ。これはヨーイングをコントロールするのに役立つ。
BMW M6 Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー M6 グラン クーペ
BMW 4 Series Coupe|ビー・エム・ダブリュー 4シリーズ クーペ
BMWの“偶数シリーズ”がいまおもしろい (3)
サイズを感じさせないハンドリング
M6 グラン クーペのもうひとつの特徴は、高速安定性の高さだとおもう。高速域での乗り心地は至ってフラットで、段差のショックはバネ下で処理される。路面のいいところはもちろん、悪くてもそれをキャビンにダイレクトに伝えないのはさすがだ。しかもそこからアクセルを踏み込むと車体が一度沈み込むように加速するのがたまらない。このとき、ドライバーはスポーツマインドをくすぐられることだろう。
M6 グラン クーペは長さ5,015mm、幅1,900mmでありながら、ワインディングではそのサイズを感じさせない。後に席があることを忘れさせるのだから脱帽である。
M6 グランクーペのエンジンは 4,394ccのV8。最高出力412kW(560ps)、最大トルク680Nm(69.3kgm)というパワーソースだ。これに7段 M DCT Drivelogic (ダブルクラッチトランスミッション)が組み合わされる。
いっぽう、Mではないグラン クーペのエンジンはおなじみの3リッター直6(640i)と4.4リッターV8(650i)。前者が320ps、後者が450psで、これに8段ATが組み合わされる。エンジンのちがいはスペックそのままだが、個人的には3リッター直6の640iの方が好み。それにJC08モード12.4km/ℓというのも魅力だ。ちなみにM6 グラン クーペの燃費は9.0 ㎞/ℓ。ハンドリングを楽しむならやはりM6に軍配が上がる。
BMW M6 Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー M6 グラン クーペ
BMW 4 Series Coupe|ビー・エム・ダブリュー 4シリーズ クーペ
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しっくりくる4シリーズのタイトなポジション
そんなM6 グラン クーペの試乗後、「4シリーズ クーペ」のステアリングも握った。タイトなドライビングポジションからして、「そうそう、これがBMW!」といった感じを全身に得た。3シリーズに代表されるディメンションがやはりイメージリーダーなのだろう。それに3シリーズを長く乗っていたこともあり、このサイズ感の方が落ち着く。
それに走り出してからのボディ剛性の高さはピカイチ。6シリーズはもちろん3シリーズのセダン系よりも明らかに上だ。このボディと足回りとドライバーの一体感はそう体感できるものではない。そう考えると、BMWの真骨頂はここかも知れない。
BMWの“偶数シリーズ”は、“らしさ”がそうとう強いのである。
BMW 640i Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー 640iグランクーペ
エンジン|直列6気筒DOHC ツインスクロールターボチャージャー付き
排気量|2,979 cc
最高出力| 235 kW (320 ps)/5,800 rpm
最大トルク|450 Nm (45.9kgm)/1,300-4,500 rpm
全長 × 全幅 × 全高|5,010 × 1,895 × 1,390 mm
ホイールベース|2,970 mm
トレッド(前/後)|1,600/1,665 mm
車両重量|1,860 kg
最小回転半径|5.5 m
最低地上高|125 mm
トランク容量|460 ℓ(後席を倒した場合、最大1,265ℓ)
トランスミッション|8段AT
乗車定員|5名
駆動|後輪駆動
燃費(JC08モード)|12.4 km/ℓ
価格|1,024万円
BMW M6 Gran Coupe|ビー・エム・ダブリュー M6 グランクーペ
エンジン|V型8気筒DOHC ツインターボチャージャー付き
排気量|4,394 cc
最高出力| 412 kW (560ps)/6,000 rpm
最大トルク|680 Nm (69.3kgm)/1,500-5,750 rpm
全長 × 全幅 × 全高|5,015 × 1,900 × 1,395 mm
ホイールベース|2,965 mm
トレッド(前/後)|1,630/1,610 mm
車両重量|1,990 kg
最小回転半径|5.9 m
最低地上高|110 mm
トランク容量|460 ℓ(後席を倒した場合、最大1,265ℓ)
トランスミッション|7段M DCT Drivelogic
乗車定員|5名
駆動|後輪駆動
燃費(JC08モード)|9.0 km/ℓ
価格|1,796万円
BMW 435i Coupe M Sport|ビー・エム・ダブリュー 435i クーペ M スポーツ
エンジン|直列6気筒DOHC ツインスクロールターボチャージャー付き
排気量|2,979 cc
最高出力| 225 kW (306ps)/5,800 rpm
最大トルク|400 Nm (40.8 kgm)/1,200-5,000 rpm
全長 × 全幅 × 全高|4,670 × 1,825 × 1,375 mm
ホイールベース|2,810 mm
トレッド(前/後)|1,545/1,575 mm
車両重量|1,620 kg
最小回転半径|5.4 m
最低地上高|130 mm
トランク容量|445 ℓ
トランスミッション|8段AT
乗車定員|5名
駆動|後輪駆動
燃費(JC08モード)|12.7 km/ℓ
価格|803万円
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