フォルクスワーゲンCCに試乗|Volkswagen
Volkswagen CC|フォルクスワーゲン CC
ついに日本導入
フォルクスワーゲンCCに試乗
2004年に登場したメルセデス・ベンツCLSクラス以来、いまや、欧州車の1ジャンルとなった感すらある4ドアクーペ。フォルクスワーゲンもこのジャンルに2008年、「パサートCC」を投入している。この「パサートCC」の、後継モデルとなるのが、今回登場した「CC」だ。フォルクスワーゲンのフラッグシップ「フェートン」と4ドアセダン「パサート」のあいだに位置するモデルとして再定義されたことで、CCと名をかえた。OPENERSでは、日本にもついに上陸を果たしたこのモデルに早速試乗。ステアリングは小川フミオ氏があらためて握った。
Text by OGAWA Fumio
Photographs by MOCHIZUKI Hirohiko
クルマに美しさを求めるユーザーへ
フォルクスワーゲンがはじめて出した4ドアクーペが「パサートCC」。欧米ではスタイリッシュなクーペが根強い人気を保っており、そこに実用性を加味したのがこのモデルだ。2008年に日本でも発売されたが、今回、環境適合性にすぐれるパワープラント、高められた安全性とともに、日本再上陸となった。価格は499万円。
今回、パサートの名称がはずれ、たんに「CC」と呼ばれるようになったのが、ひとつの特徴。わが国のフォルクスワーゲンラインナップの頂点に位置するモデルでもあるが、機能主義的な同社のイメージとは一線を画し、クルマに美しさを求めるユーザーへのアピールをはかっている。ルーフラインは後端に向かってなだらかにスラントし、前席重視のクーペ(短く切った、という意味のフランス語を起源とした車型)の美と、4ドアの実用性をうまく両立させている。
全長は4.8mあるから、小さなクルマではない。そのぶん居住性を重視したパッケージングが採用され、ある部分を優先するために別の部分が犠牲になるような、いわゆるトレードオフのバランスをとる必要はない。CCという車名がよってきたる、コンフォート クーペたるゆえんだ。
Volkswagen CC|フォルクスワーゲン CC
ついに日本導入
フォルクスワーゲンCCに試乗(2)
排気量減によるネガは?
CCのエンジンは、インタークーラー付きターボチャージャーを備える、直列4気筒1,798cc。160psの最高出力と、250Nmの最大トルクを発生する。出力は7段の「DSG」と呼ばれるデュアルクラッチ変速機を介して前輪へと伝えられる。燃費はJC08モードでリッター13.4km。「(前モデルであるパサートCCより)大幅に向上しています」とフォルクスワーゲン グループ ジャパンではしている。
上級モデルでもエンジン排気量をいたずらに大きくせず、環境適合性をなにより重視する。ここにフォルクスワーゲンのフォルクスワーゲンたるゆえんがある。いわゆる高級車が大きな排気量にこだわるのは、車重との関係もさることながら、トルク感など独特のフィールを重視するからだ、しかしフォルクスワーゲンでは、そちらはおなじグループに属するアウディにまかせ、フォルクスワーゲンはあくまで理知的なアプローチで市場を攻めていこうというのだろう。ここにCCの個性が光る。
実際に運転すると、排気量減によるネガは感じない。自動車における加速の気持ちよさにおいては排気量にまさるものはない(つまり排気量が大きいと、たいていは比例的に気持ちよく速くなる)ともいわれるが、1.8リッターターボユニットを1.5トンのボディに積む新型CCにおいては、加速でも高速巡航性でも、従来に比しての遜色は感じられない。
ただし、キャラクターが比較的はっきりしたエンジンであることはたしかだ。それは3,000rpmを超えたあたりから、明確なトルクバンドを持つことにある。少し上のエンジン回転を保つように、ギアをセレクトしたりアクセルペダルを多めに踏んだりして運転すると、ターボが働き、ぐいぐいと力強く、クルマを加速させてゆくのが味わえる。逆に低回転域だけを使っていると、加速時など力不足感があるのも事実だ。
Volkswagen CC|フォルクスワーゲン CC
ついに日本導入
フォルクスワーゲンCCに試乗(3)
CCの美点
CCは操縦性も悪くない。軽量小型パワープラントの恩恵もあるのだろう。速度が上がってもステアリング特性はニュートラルで、「ワインディングロード命!」といったスポーティさこそないが、いいペースでドライブを楽しむことができる。
欧州では多少年齢が高い富裕層が主要ターゲットだろう(ドイツやイギリスではとりわけ部長クラスに与えられるカンパニーカーの市場も視野に入っているのだろうか)。なので、BMWのように俊敏性が最大の価値ではないのだろう。そのいっぽう、路面の凹凸の影響を受けにくい快適な乗り心地は、CCの美点だ。
それにインテリアも広く、かつ、シートの出来はよい。後席も上手につくられており、おとなにも窮屈感はいっさい感じられない。華美だったり、ことさら奇をてらうようなところのないダッシュボードの造形も、クリーンで広々した感覚をもたらしている。飽きのこない使いやすいデザインだ。
ナパレザーを使うシート表皮は、横方向に太いうねが入れられたデザインとのマッチングもいい。デザイン的にも、1960年代のイタリアの高級スポーツカーを連想させて好ましい。レザーの色は2トーンの組合せも用意されているので、外板色とマッチングさせる楽しみもある。
Volkswagen CC|フォルクスワーゲン CC
ついに日本導入
フォルクスワーゲンCCに試乗(4)
スタイリングは大きな価値だ
安全装備も豊富だ。「アダプティブクルーズコントロール(ACC)」は、フロント部分に内蔵されたレーダーを用い、自動的な加減速で全車速追従機能を持っているのを特徴とする。
「プリクラッシュブレーキシステム(Front Assistともよばれる)」は、前方に障害物や車両を感知するとドライバーに警告を発するシステムだ。時速30km以下で走行中に静止障害物を検知しながら接近すると、自動的にブレーキをかけて、状況によっては完全停止する。
さらにもうひとつ「レーンチェンジアシストシステム(Side Assist Plus)」は、後方から接近してくる車両を検知したうえ、ドライバーがそちらの方向にハンドルを切ろうとしても、自動的にハンドルへ介入して軌道を修正するというもの。これら3つの安全装置は、オプション設定の「テクノロジー パッケージ」(車両価格524万円)に含まれる。
実際にハンドルを切ろうとすると、まずハンドルにバイブレーションが与えられ、レーンから逸脱しようとしても、自動的な操舵でそれを拒まれる。いま高級車の世界では、このような能動的な安全システムが増えており、とりわけCCのような高価格モデルを買える年配層には、ありがたい装備だろう。
「499万円という車両価格は、意外にニッチ(すきま)」とCCの輸入元であるフォルクスワーゲン グループ ジャパンではする。上記の装備などを考えても、それは事実かもしれない。同種のコンセプトの類型車を探すと、メルセデス・ベンツCLS(930万円~)、BMW6シリーズ グランクーペ(986万円~)などがあげられる。どちらもかなり高価だ。
いっぽう、4ドアの変形版としては、アウディA5スポーツバック(580万円)やボルボV60(395万円~)など、ハッチゲートを備えたファストバックが存在するが、こちらのほうが実用的なイメージが強い。CCのほうが、ファッショナブルといえる。やはりスタイリングはひとつの大きな価値なのだ。
Volkswagen CC|フォルクスワーゲン CC
ボディサイズ|全長4,815×全幅1,855×全高1,425mm
ホイールベース|2,710mm
トレッド 前/後|1,550/1,560mm
最低地上高|125mm
車両重量|1,540kg(パノラマガラスルーフのオプション設定時1,560kg)
乗車定員|5名
最小回転半径|5.3m
燃費|13.4km/ℓ(JC08モード)
CO2排出量|173g/km(JC08モード 燃費値換算)
エンジン|1,798cc直列4気筒直噴 インタークーラー付きターボ
最高出力|118kW(160ps)/4,500-6,200rpm
最大トルク|250Nm(25.5kgm)/1,500-4,500rpm
サスペンション 前/後|マクファーソン・ストラット/4リンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ|235/40R18
価格|499万円(テクノロジーパッケージ設定時524万円)