CAR /
IMPRESSION
2022年11月4日
フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrari
ルーフは45 km/h までならば走行中でも14 秒で開閉が可能
エクステリアを一通り観察し、いよいよドライバーズシートに収まる。ドライバーを包み込むようにデザインされたインストルメントパネルは、フェラーリ初の量産型PHEVとして2019年にデビューした「SF90」に通じるもの。インストルメントクラスターをはじめとするインターフェイスが完全にデジタル化されたのもSF90と同様で、メーターはドライビングモードなどによってさまざまな表示に変えられるほか、ナビゲーションのマップを映し出すこともできる。
シートや内装には上質なイタリアンレザーがあしらわれ、丁寧に施された精緻なステッチがイタリア製スーツのようなクラフツマンシップを感じさせる一方、ステアリングホイールやセンターコンソールに配されたクロム加工のアルミニウムやカーボンファイバーといったリアル素材が “レーシー”な雰囲気を醸し出す。昨今、時計の世界では「ラグジュアリースポーツ」というジャンルが人気だが、まさにそんな言葉がしっくりくる。エクステリアと同様にスポーティネスとエレガンスが巧みに調和していて、眺めているだけで心が躍るコクピットだ。
センターコンソールのコンパートメントに跳ね馬のエンブレムが施されたイグニッションキーを収め、スターターボタンを押す。この時点では、一般的なPHEVと同様、背後のV6ツインターボは目を覚まさない。せっかくGTSなのだからとセンターコンソールのスイッチを引くと、Aピラーの頂点からルーフがスーッとせり上がり、あっという間にスパイダーボディに変容した。
このアルミ製RHT は、速度が45 km/h までならば走行中でも14 秒で開閉が可能。格納時には二つに分割されて、エンジンベイの放熱特性に変化が生じないようエンジン前方に平らに折り畳まれる。こうした処理により、デザインのバランスも保たれ、296GTBと同様のフラットなリアデッキが実現している。
エンジンカバーの後方部分はガラス製となっていて、運動性能に直結する重心高を下げるべく、限りなく低い位置にレイアウトされたコンパクトなV6ユニットを拝むことができる。オーナーにとってはうれしい演出だろう。