フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrari
CAR / IMPRESSION
2022年11月4日

フェラーリ296GTSにイタリアで試乗──クルマを操る純粋な喜びをとことん味わわせてくれる|Ferrari

軽量コンパクトなパワーユニットがもたらしたもの

ハンドリングにも従来のフェラーリとは異なる新しさが感じられた。特にこれまでのミドシップ・フェラーリでは、例えばステアリングの切り始めのレスポンスがかなりシャープで、高い運転スキルを持ち合わせていない人にとっては、ドライバーを寄せ付けないようなナーバスさが感じられた。ところが296GTSはドライバーに対して常にフレンドリーで、走り出した瞬間から身体がボディの隅々にまで拡張したような一体感を得られるのだ。
パワーステアリングは電動式、ブレーキはバイワイヤ方式を採用しているのだが、いずれもフィールが極めて自然な感覚で、ドライバーは自信をもって各操作を行える。身のこなしが極めてシャープなのに、すべての挙動に一切の違和感を感じさせない。296GTSのステアリングを握ったら、きっと誰もがこのクルマがもがもたらす最高のドライビングプレジャーをいつまでも堪能していたくなるだろう。
こうした素晴らしい操縦性には、従来のV8ミドシップモデルに比してコンパクトかつ低重心なボディと、それを可能ならしめている新世代のパワーユニットが大きく寄与しているのは間違いないだろう。それにしても、830cvという途方もないパワーとフレンドリーな操縦性を両立させつつ、オープンエアドライビングが楽しめ、さらに高い日常性をも備えている。全方位的に抜かりないスーパースポーツなのだ。
地中海沿いのリゾートからアウトストラーダ、絶景のワインディングロードから市街地の一般道と、約5時間のドライブを経て、マラネロに到着したときには完全に日が暮れていた。気候変動の影響か、10月にしては異例の暖かさもあり、その間、筆者は一度もルーフを閉じることがなかった。
本来ならばクローズ状態での走りも確かめるべきだった。しかし、刻一刻と変わる情景やその土地土地の香り、顔をなでる風、そしてピッコロV12が奏でるサウンドを五感で感じながら296GTSをドライブしていたら、ただただ気持ちが高揚し、ルーフを閉じるのをうっかりしてしまったのだ。
296GTSは、リアルにクルマを操って移動するという純粋な快楽を、ドライバーにとことん味わわせてくれる。自動車を取り巻く世界が100年に1度といわれる変革期を迎える現在においても、こうしたクルマの持つ根源的な喜びというのは捨てがたい。296GTSのドライブを通じて、改めてそんな当たり前のことを実感した。
ところで、今やスーパースポーツとて逃れられない環境性能に目を向けると、F8トリブートが燃費12.9L/100km/h、CO2排出量292kg/km(いずれも複合)なのに対し、296GTSは6.5L/100km/hと153kg/kmを実現している。フェラーリが今後もいかに走ることの喜びとサステナビリティを両立させていくのか、いちファンとしても注目していきたい。

※燃費、CO2排出量はいずれもWLTPによる
Ferrari 296GTS|フェラーリ296GTS
ボディサイズ|全長 4,565 × 全幅 1,958 ×全高1,191 mm
ホイールベース|2,600mm
トレッド前/後|1,665 / 1,632mm
車両乾燥重量|1,540kg 
重量配分 前/後|40.5% / 59.5%
エンジン|2,992 cc 120°V型6気筒DOHC+ターボ
最高出力(ICE)|663cv
最高出力(ハイブリッドシステム)|610kW(830 cv) / 8,000 rpm
最大トルク|740Nm / 6,250rpm
最高許容回転数|8,500rpm
圧縮比|9.4:1
高電圧バッテリー容量|7.45kWh
トランスミッション|8段F1デュアルクラッチ
駆動方式|MR
ブレーキ|398×223×38mm / 360×233×32mm
タイヤ 前/後|245/35ZR20 / 305/35ZR20
乾燥パワーウェイトレシオ|1.86kg/cv
0-100km/h加速|2.9秒
0-200km/h加速|7.3秒
200km/h-0km/h|107m
最高速度|330km/h
フィオラノラップタイム|1分21秒80

問い合わせ先

フェラーリ
https://auto.ferrari.com/
https://www.ferrari.com/ja-JP/

69 件
                      
Photo Gallery