新型アウディRS3に試乗|Audi
Audi RS3 Sedan|アウディ RS3 セダン
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
新型アウディRS3に試乗
アウディの量販モデル「A3」ファミリーに、先ごろ日本でもモータースポーツ向けチャンネルとして発表された「アウディスポーツ」がエンジニアリングを施し、スポーツモデルとして仕上げたのが「RS3」。その最新モデルは、4ドアの「RS3 セダン」が昨年秋のパリモーターショーで、5ドアハッチの「RS3 スポーツバック」が先のジュネーブショーで発表されたばかりだ。直列5気筒という独特のエンジンを搭載するこのホットハッチを、河村康彦氏がオマーンで試乗した。
Text by KAWAMURA Yasuhiko
激戦区のホットなコンパクトカー市場
昨年フルモデルチェンジを行って5代目となった「A4」シリーズとともに、アウディラインナップの基盤を固めるのが、1996年に初代モデルが登場し、すでに20年以上の歴史を持つ「A3」シリーズ。そのホッテストバージョンであり、シリーズの若々しいキャラクターを牽引するイメージリーダー的役割をも担ってきたのが、2015年春に開催されたジュネーブショーで初披露をされた、「RS3」だ。
「コンパクトプレミアムクラスでは最もパワフル」というフレーズとともにローンチをされたこのモデルは、同じ“RS”の記号が与えられたアウディ車たちと同様、特別にハイパフォーマンスなバージョンを手掛ける当時のクワトロ社が、開発と生産を担当する1台としてとびきり高い存在感を放ってきたもの。
しかし、日本車のなかにはライバル知らずであっても、実はヨーロッパではなかなかの“激戦区"ということになるのが、RS3が身を置くカテゴリー。例えば、メルセデスAMG「A 45 4マティック」シリーズや、BMWブランニュー モデル「M2クーペ」などが、性能面や価格面から「直接のコンペティター」といってもいい存在として挙げられる。
そうしたなかで、改めて優位な戦いを繰り広げるべく新たなカンフル剤が打たれたのが、前出クワトロ社改め、昨年末に“アウディ スポーツ社”と名を変えたアウディの高性能車部門が手掛ける、ここに紹介する最新のRS3。その大きなトピックは、「新開発エンジン搭載による大幅なパフォーマンスのアップ」と、「セダンボディの新投入」という2つに集約をされる。
Audi RS3 Sedan|アウディ RS3 セダン
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
新型アウディRS3に試乗(2)
新しいエンジンを搭載
前出のように、20年以上の歴史を持つA3に初めてセダンボディが加えられたのは、実は現行型が初めて。理由としては、主にアメリカや中国など、ハッチバックボディよりもセダンボディが好まれる地域への新たなる対応策と考えるのが自然だ。
もっとも、日本のマーケット内に限って考えれば、そんなセダンが投入をされても「主流はハッチバック」ということになるはず。とはいえ、RS3でも既存のハッチバックに加えて、セダンも選択肢にあがることとなったのは朗報には違いない。
そんな2つのボディを用意する最新RS3に、DCTと4WDシステムとの組み合わせで搭載されるのは、排気量が2,480ccのターボ付き直列5気筒エンジン。「あれ? そんなスペックはこれまでと同じじゃない!」というのは、確かに正しいコメント。
けれども、ユニットそのものは“完全新開発”と紹介をしても差し支えないアイテム。クランクケースがアルミ化され、中空クランクシャフトやアルミ製オイルパンなどを採用することなどで、26kgの軽量化を実現。その上で、直噴とポート噴射を併用するデュアルインジェクションや大型ターボチャージャーの採用、フリクション低減等々で、出力と燃費性能を共に大幅向上させている点が見逃せない。
新エンジンのポテンシャルの高さは、最高出力を従来型の367psから一気に400psまで引き上げたことに象徴されている。
孤高の5気筒というシリンダーレイアウトを継続しながら、前出ライバルたちに再び大きな水を空けたスペックを実現させたのが、新しいRS3の心臓なのだ。
Audi RS3 Sedan|アウディ RS3 セダン
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
新型アウディRS3に試乗(3)
少し走っただけでスポーツモデルであることを感じる
そんな最新RS3の国際試乗会は、オマーンのリゾートホテルを基点に開催された。
率直なところなじみの薄い中東の国で、自身にとってももちろん初上陸となる地。が、「平坦な砂漠ばかりが広がる場所なのでは?」という事前の危惧は、幸いにして外れることとなった。
一般道の扱いながら最高速が120km/hという高速道路ばりの片側3車線道路や、美しい海岸線に迫り出した思いのほか険しいコーナーが連続するワインディングロードなどで、このハイパフォーマンスモデルの際立つ実力の片鱗をチェックすることができたからだ。
まずはセダンをチョイスして、会場ホテルをスタート。敷地内の道路をごくゆっくりしたペースで数百メートル走っただけでも、スピードバンプの乗り越し時などにボディ剛性の高さや脚のかたさなどから、それが“生粋のスポーツモデル”であることをイメージさせられる。
実際、表通りへと出て徐々に走りのペースを上げていっても、そうした印象に変わりはなかった。もちろん、RSという記号の意味するところが「特別にスポーティなモデル」と知っていれば納得はできようが、ごく一般的なセダンとイメージしつつ、後席へと招かれたゲストにとっては、その強めの揺すられ感は、少しばかり驚きの対象となってしまうかも知れない。
Audi RS3 Sedan|アウディ RS3 セダン
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
新型アウディRS3に試乗(4)
スーパースポーツカー級の運動性能
さすがに動力性能の高さは文句ナシのレベルだ。スタートの瞬間からのアクセル操作に対して、5気筒ユニットは力強く反応をしてくれる。ただし、3,800rpm付近から上で顕著に耳に届く、5気筒ユニットならではのサウンドを愉しむべくアクセルペダルを深く踏み込むと、すぐに“とんでもない速さ”に達してしまう点には要注意。何しろ、全力加速の実力は0→100km/hをわずかに4.1秒でクリアしてしまうというものであるからだ。
逆に、それ以下のゾーンを多用する街乗りシーンでは、強調された後方からの排気音がやや耳障りな印象も。5気筒ならではのサウンドを売りものとするのであれば、常用域での排気音はもう少し抑え、かわりに5気筒サウンドをスピーカーを用いて強調して聞かせる、といった方策もアリかも知れない。
そんなセダンからハッチバック モデルへと乗り換えても、強力無比な動力性能や、ほとんど“オン ザ レール感覚そのもの”というハンドリングの印象を含め、走りのテイストにほぼ差は感じられない。リアのオーバーハングが延長され、全長が140mm以上増すセダンでも、重量はわずかに5kgしか増加していないことが大きく効いていそうだ。
こうして、コンパクトな実用モデルとしてのパッケージングと、スーパー スポーツカー級の運動性能が同居していることこそが、RS3ならではの大きな特徴。数あるRSラインナップのなかにあっても、最もスパイスの効いた硬派なモデルと紹介できる存在だ。
Audi RS3 Sedan|アウディ RS3 セダン
ボディサイズ|全長 4,479 × 全幅 1,802 × 全高 1,397 mm
トレッド 前/後|1,559 / 1,528 mm
ホイールベース|2,631 mm
重量(EU)|1,515 kg
エンジン|2,480cc 直列5気筒DOHCターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
圧縮比|10.0
最高出力|294 kW(400 ps)/ 5,850-7,000 rpm
最大トルク|480 Nm/ 1,700-5,850 rpm
トランスミッション|7段AT(Sトロニック)
駆動方式|4WD
最高速度|250 km/h(オプションで280km/h)
0-100km/h加速|4.1 秒
燃費(欧州値)|8.4 - 8.3 ℓ/100km(11.9 - 12.0km/ℓ)
CO2排出量|191 - 188 g/km
トランク容量|315 - 770 リッター
価格|785万円
※価格以外は欧州仕様値
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
ボディサイズ|全長 4,335 × 全幅 1,800 × 全高 1,411 mm
トレッド 前/後|1,559 / 1,514 mm
ホイールベース|2,631 mm
重量(EU)|1,510 kg
エンジン|2,480cc 直列5気筒DOHCターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
圧縮比|10.0
最高出力|294 kW(400 ps)/ 5,850-7,000 rpm
最大トルク|480 Nm/ 1,700-5,850 rpm
トランスミッション|7段AT(Sトロニック)
駆動方式|4WD
最高速度|250 km/h(オプションで280km/h)
0-100km/h加速|4.1 秒
燃費(欧州値)|8.4 - 8.3 ℓ/100km(11.9 - 12.0km/ℓ)
CO2排出量|191 - 188 g/km
トランク容量|335 - 1,175 リッター
※欧州仕様値