アウディ RS3 スポーツバックに試乗|Audi
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
車体はコンパクト、与えてくれる喜びはビッグ
「A3」をベースにアウディのレーシング部門であるクワトロGmbHが開発した「RS 3スポーツバック」。現代のホットハッチともいえる同モデルに、小川フミオ氏が試乗した。
Photographs by ARAKAWA MasayukiText by OGAWA Fumio
アウディのレーシング部門「クワトロGmbH」が開発
アウディ「RS3スポーツバック」は2015年10月に発売されコンパクトプレミアムだ。このカテゴリーでは最もパワフル、が謳い文句である。270kW(367ps)のハイパワーエンジンに、フルタイム4輪駆動システム。操縦すると、楽しさは抜群だ。
本国では2代目になるアウディRS3。日本には初上陸となる。「A3」をベースに、アウディのレーシング部門であるクワトロGmbHが開発を担当した。エンジンは2.5リッター5気筒。2009年のアウディ「TT RS」で採用され、「RS Q3」にも搭載されているスポーティなユニットだ。
前から見て目を惹くのは、大型エアダム、大きくふくらんだフロントフェンダー、それに、グロスブラック仕上げのハニカムパターンにRS3のバッジを備えたフロントグリル。RSモデルあることを示すツヤ消し加工のクロームのケースをもつサイドミラーも特徴的だ。
車高は標準モデルより25mm落とされ、トレッドは前後ともに拡大。サスペンションも取り付け部の剛性が見直されるなど、足回りの強化も謳われている。エンジンはコンパクトにまとまり、かつ軽量。それでいて耐久性に優れるとアウディではしており、中身はしっかりスポーティである。
RS3スポーツバックは見た目からの期待を裏切らない。いちどハンドルを握れば、期待以上だと分かる。1,625rpmから465Nmの大トルクが出はじめ、5,500rpmという広いバンドで、その力が味わえる。静止から100km/hまで加速するのにわずか4.3秒というのもうなずける加速感だ。最高出力は5,500-6,800rpmで得られる。どこまでもパワーが伸びていく感覚を体験できるのだ。
RS3スポーツバックの魅力は、加速だけではない。
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
車体はコンパクト、与えてくれる喜びはビッグ(2)
ロケットのような加速
RS3スポーツバックは、ハンドリングにおいても、素晴らしい楽しみを与えてくれる。ステアリングホイールを切った時の車体の反応は、素直。アウディのRSを少しでも知っている人はともかく、コンパクトなハッチバックという車型からは想像つかないシャープさが、加速からでも、カーブを曲がる時の動きからでも、強く印象に残る。
軽量化のため、いわゆるペタル(花弁)とも呼ばれる花型のブレーキディスクローターを採用するなど、ヤル気十分のRS3スポーツバック。こういう“演出”もうまいし、もちろん、実際の効果は抜群。アクセルペダルとブレーキペダルとをコントロールすることで、素晴らしい速度でカーブをこなしていく。減速はデリケートで、ステアリングは正確。そしてカーブの頂点をすぎてからの加速はロケットのようだ。
ダウンサイジング化の進む現代にあっては、ある種のぜいたくともいえる2.5リッターもの排気量を持つ5気筒エンジン。先にも触れたが、高性能化とともに、軽量コンパクトさも両立させているのだ。アウディによると、全長49cm、重量180kgにとどまっている。工場では手作業で組み立てられているそうだ。このエンジンもスポーティなハンドリングに貢献している。
エンジンは、アクセルペダルの踏み込みに敏感に反応するうえ、高回転域までなんの抵抗感もなく、一気に回る。7枚のギアを持つツインクラッチ式「Sトロニック」変速機の反応もよい。ダッシュボード上の「ドライブセレクト」で「ダイナミック」モードも選べる。エンジンこそクルマである、という言説もあることを、改めて思い出すほどだ。
ホールド性のいい専用レザーシートにおさまってステアリングホイールを握っていると、ドアを4枚も備えたハッチバック車を運転していることを忘れてしまう。
加えて、アウディRSラインの人気の理由はもう1つある。
Audi RS3 Sportback|アウディ RS3 スポーツバック
車体はコンパクト、与えてくれる喜びはビッグ(2)
快適性でも不満はない
アウディRSラインが人気の理由は、端的にいうと“いいもの”感だろう。サーキットとの関連性をイメージさせつつ、レースカーのような素っ気なさとは無縁だ。
かつて「羊の皮を被った狼」などという表現があった1980年代までは、内装も簡素、ドアの内張もなし、なんていうスポーティセダンが多かったが、最新のRS3スポーツバックは、快適性でも不満はない。
装備はスタンダードモデルと同じ。むしろ、特別製のスポーツシートや、革巻きステアリングホイールなど、RS3スポーツバックにしかない装備が盛り込まれている。それが特別感をうまく醸し出しているのだ。
スタンダード版と較べるには差がありすぎるかもしれないが、90kW(122ps)の1.4リッター前輪駆動のA3スポーツバックが303万円から買えるのに対して、270kW(367ps)のフルタイム4WD、RS3スポーツバックは753万円だ。
価格を正当化するのは、ここで書いてきたように、手作業まで採り入れて、専門職がチューニングを施した性能ぶりが1つ。それに、上質な装備である。つけ加えれば、RSというブランド性も、(アウディのこれまでの広報活動が功を奏して)オーナーのプライドをくすぐるのに十分だろう。
しなやかなサスペンションのおかげで乗り心地はいいし、広い荷室の恩恵で、実用性は十分。旅行だってゴルフだって、スタッドレスタイヤを履けば雪山へだって、何の苦もなく行ける。レース場のイメージをさかんに使っていても、なにもガマンは強いられない。アウディの実力が発揮されたRS3スポーツバックは、車体はコンパクトであっても、与えてくれる喜びはビッグだ。
Audi RS 3 Sportback|アウディ RS 3 スポーツバック
ボディサイズ|全長 4,345 × 全幅 1,800 × 全高 1,440 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,560 / 1,515 mm
重量|1,560 kg
エンジン|2,480cc 直列5気筒 DOHC ターボ
ボア×ストローク|82.5 × 92.8 mm
圧縮比|10.0
最高出力| 270 kW(367 ps)/ 5,500-6,800 rpm
最大トルク|465 Nm(47.4 kgm)/ 1,625-5,550 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(Sトロニック)
駆動方式|フルタイム4WD
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|4リンク
タイヤ|235/35R19
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク
トランク容量|280 リットル
燃費(JC08モード)|13.1 km/ℓ
CO2排出量|177 g/km
ハンドル位置|右
価格|756万円
アウディ コミュニケーションセンター
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