新型アウディ TTに試乗|Audi
Audi TT|アウディ TT
新型アウディ TTに試乗
TTは明らかに新しい時代に入った
昨年の夏、日本へ導入された3代目アウディ「TT」。9年ぶりにフルモデルチェンジを受け大きく進化した新型に、モータージャーナリスト小川フミオ氏が改めて試乗してみた。
Text by OGAWA FumioPhotographs by ARAKAWA Masayuki
一新されたパワートレイン
人気のスポーティクーペ、アウディ「TT」が3代目にフルモデルチェンジ。日本のラインナップは、169kWの2リッターエンジンの「TT」(前輪駆動と4輪駆動のクワトロ)、よりパワフルな210kWの「TTS」、そしてソフトトップを備えたフルオープンの「TTロードスター」という3モデルで構成される。
全体の印象は、いわゆるTTスタイルの継承。クルマ好きが観れば、ひと目でTTとわかるシルエットだ。アウディではボディのデザインを引き合いに出し、「(初代という)原点に戻る」としている。しかし懐古的になっているわけではない。ショルダーやホイールアーチの強調や、LEDヘッドランプの採用など、各所に新しさを盛り込んでいる。とくにリアから観ると、とくに先代との違いが明確だ。
新しいという点ではパワートレインも一新された。TTクーペ2.0 TFSIと名づけられた前輪駆動版は、従来型が1.8リッターであったのに対して2リッター4気筒を搭載。同じエンジンは、フルタイム4輪駆動のTTクーペ2.0 TFSIクワトロと、オープンのTTロードスター2.0 TFSIクワトロも共用する。
169kW(230ps)の最高出力と、370Nmの最大トルクを発生する2リッターユニット。従来(211ps、350Nm)と比較すると、数値的にパワフル。かつボディは最大60kg軽量化している。パワーと燃費効率ともに向上したとアウディでは謳う。2リッターエンジンはさらにパワーアップされて、TTラインナップでは(現在)頂点に位置するTTSクーペに搭載される。最高出力210kW(286ps)と最大トルク380Nmを発生。TTおよびTTロードスターと同様、6段のデュアルクラッチトランスミッションと、クワトロシステムが組み合わせられる。
クワトロシステムは、センターデフに電子制御式マルチプレートを使い、走行や路面の状況に応じて瞬時に前後へのトルク配分を調整するようになっている。エコからスポーツまで5つのモードを持つ「アウディドライブセレクト」は、選択に応じて、このクワトロシステムをはじめ、アクセルの応答性、変速タイミング、オートエアコンなどの制御マッピングが自動調整する。
新しさという点では、もうひとつ、インフォテインメントシステムの充実ぶりがあげられる。とりわけ注目に値するのは、バーチャルコクピットの採用だ。これまでの機械式メーターを廃し、速度計もエンジン回転計も虚像としている。そしてスイッチで切り替え可能で、12.3インチの画面にナビゲーションの地図画面などを大きく表示することもできる。「新型A4」や「新型Q7」など、新世代のアウディ車で採用されつつある技術の(日本市場における)先取りだ。
アウディTTクーペとロードスターは、なにより、位置づけがユニークだ。
Audi TT Coupe|アウディ TT クーペ
Audi TT Roadster|アウディ TT ロードスター
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TTは明らかに新しい時代に入った (2)
ドイツ車にはライバルがいない
アウディTTクーペとロードスターは、比較的手頃な価格の2プラス2のスペシャルティクーペという位置づけがユニークだ。
542万円からのスターティングプライスをもとに、市場を見渡したときに、ドイツ車ではライバルがほぼ皆無だ。ポルシェの「ケイマン」(629万円〜)はスポーツカーとして出来は出色だが2シーターであるし、メルセデス「SLK」(509万円〜)も快適性に優れているが、同様に2人しか乗れない。
日本では、「トヨタ86」(248万8909円〜)、「スバルBRZ」(240万8400円〜)、「レクサスRC」(521万円〜)、「日産フェアレディZ」(383万1840円〜)と、なかなか個性的なクーペがある。が、「TT」というくくりの中に、クーペありロードスターあり、それに高性能モデルもあり、というバリエーションの豊富さで、TTの存在感は光るのである。クーペは日本では小さなマーケットだが、それは乗らず嫌いが多いからだ。TTをドライブすると、雰囲気を含めて、魅力の一端がわかってもらえるはずだ。
TT、TTロードスター、TTS、操縦してみると、どれもしっかりキャラクターが立っている。そこが美点だ。TTクーペ2.0 TFSIクワトロ(589万円)は、意外なほどよく走り、軽量化の恩恵をひしと感じるほど俊敏で、曲がりはいいし、乗り心地はしなやか。そしてブレーキングもデリケートで、いっぺんで好きになれる。エンジンの出力とのマッチングもいい。個人的にはイチオシ。
TTロードスター2.0 TFSIクワトロ(605万円)は、同じエンジンを搭載するクーペの美点を引き継いでいる。ボディの剛性感は高く、カーブを曲がろうが、多少道が荒れていようが、みしりとも聞こえない。ソフトトップだが、遮音性に優れているのも自慢で、高速で風が叩く音も気にならない。
ロードスターのソフトトップは、電動でごくわずかな時間に開閉できる。速度50kmまで操作できるので、高速に乗るとき料金場の前で減速中にも操作可能だ。最近は重いメタルトップでは重心高が上がってしまううえ、格納のためにトランクが犠牲になるので、ソフトトップに戻りつつあるように思う。TTロードスター2.0 TFSIクワトロに乗ると、これでいい。というかむしろソフトトップのほうがこのクルマにはかえってぜいたくに見えてかっこいいと、納得できるのだ。
もっと速く走りたいという人には、TTSがある。
Audi TT Coupe|アウディ TT クーペ
Audi TT Roadster|アウディ TT ロードスター
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スポーツカー的な楽しみが欲しい人にはTTS
TTよりもっとスポーツカー的な楽しみが欲しい人には、TTSクーペが用意されている。TTと同排気量の2リッター4気筒エンジンを搭載し、フルタイム4WDのクワトロシステムが組み合わされている。最高出力は41kW高い210kW(286ps)。最大トルクは380Nmとなっている。
専用装備は多い。過給圧を高めたターボチャージャーがひとつ。シリンダーヘッド、ピストン、コンロッドなどが耐久性の高いものに替えられている。内外装も特別だ。バンパー、サイドシル、グリルなどTTSのために特別なパーツが装備されている。ホイールも(18インチという径は同じだが)意匠はTTSならではのものが採用されている。シート、ドアトリム、ステアリングホイールも専用パーツ。
このクルマのよさは、3000rpm以上の回転域を常用する乗り方をすると、よく分かる。大径ターボチャージャー採用だけあって、明らかにスポーティな味付けが濃い。6段のツインクラッチ式変速機と相性もよく、上の回転域を使う(もしくはドライブセレクトでスポーツモードを選択する)と、スポーティクーペとしての本領を発揮するのだ。
ダンパーの減衰力をアクティブに制御する「マグネティックライド」が標準装備され、TTクーペに対して車高は10mm落とされている。実際の印象としては、足回りの設定は硬めで、ラグジュアリーさより、先に書いたとおり、スポーティさが際立つ。排気音も勇ましく、元気を貰いたいときに乗るのが一番いいだろう。なにはともあれ、TTというベースモデルと、TTSというスポーツモデルを同時に発売するところが、アウディがプレミアムメーカーたるゆえんである。
新しくなったMMI(マルチメディア新ターフェイス)の操作系といい、バーチャルコクピットといい、日常の使い勝手の面でも、大きく前進している。エアコンの吹き出し口に温度や風量などのコントールが設けられているのも、ユニークな意匠だ。ホールド性にすぐれ、快適性の高いシートといい、クオリティ感のあるインテリアと、落ち着きの出たスタイリング。TTは明らかに新しい時代に入った。
Audi TT Coupe 2.0 TFSI|アウディ TT クーペ 2.0 TFSI
ボディサイズ|全長 4,180 × 全幅 1,830 × 全高1,380 mm
ホイールベース|2,505 mm
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴ターボ
最高出力|169 kW(230 ps)/ 4,500 〜 6,200 rpm
最大トルク|370 Nm (37.7 kgm) / 1,600 〜 4,300 rpm
トランスミッション|6段Sトロニック(デュアルクラッチ)
燃費(JC08)|14.7 km/ℓ
価格|542 万円
Audi TT Coupe 2.0 TFSI quattro|アウディ TT クーペ 2.0 TFSI クワトロ
ボディサイズ|全長 4,180 × 全幅 1,830 × 全高1,380 mm
ホイールベース|2,505 mm
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴ターボ
最高出力|169 kW(230 ps)/ 4,500 〜 6,200 rpm
最大トルク|370 Nm (37.7 kgm) / 1,600 〜 4,300 rpm
トランスミッション|6段Sトロニック(デュアルクラッチ)
燃費(JC08)|14.7 km/ℓ
価格|589 万円
Audi TT Roadster 2.0 TFSI quattro|アウディ TT ロードスター 2.0 TFSI クワトロ
ボディサイズ|全長 4,180 × 全幅 1,830 × 全高1,360 mm
ホイールベース|2,505 mm
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴ターボ
最高出力|169 kW(230 ps)/ 4,500 〜 6,200 rpm
最大トルク|370 Nm (37.7 kgm) / 1,600 〜 4,300 rpm
トランスミッション|6段Sトロニック(デュアルクラッチ)
燃費(JC08)|14.4 km/ℓ
価格|605 万円
Audi TTS Coupe 2.0 TFSI quattro|アウディ TTS クーペ 2.0 TFSI クワトロ
ボディサイズ|全長 4,190 × 全幅 1,830 × 全高1,370 mm
ホイールベース|2,505 mm
エンジン|1,984cc 直列4気筒 直噴ターボ
最高出力|210 kW(286 ps)/ 5,300 〜 6,200 rpm
最大トルク|380 Nm (38.8 kgm) / 1,800 〜 5,200 rpm
トランスミッション|6段Sトロニック(デュアルクラッチ)
燃費(JC08)|14.9 km/ℓ
価格|768 万円
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