最新の911 GT3を雨の富士スピードウェイでテスト|Porsche
CAR / IMPRESSION
2015年6月19日

最新の911 GT3を雨の富士スピードウェイでテスト|Porsche

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

最新の911 GT3を雨の富士スピードウェイでテスト

モータースポーツを楽しみたいオーナーに向けて開発されたポルシェ911 GT3は、数ある911ファミリーのなかでも、サーキットで培ったレーシングテクノロジーを受け継ぐ特別な存在だ。最高出力475馬力、0-100km/加速3.5秒、さらにRRというハイパフォーマンスモデルを、西川淳氏が雨の富士で試した。

Text by NISHIKAWA JunPhotographs by NAITO Takahito

ウェットコンディションで知る真の限界性能

これを“役得”と言わずして、何と言おうか。

ポルシェの最新モデル、それもレン シュポルト(RS、レーシングスポーツ)の血を色濃く継いだモデルを、グランプリサーキットでおもう存分に走らせる。タイヤが減ること、個体に大きなストレスをかけること、何もかも気にしないで。高性能モデルに大枚を叩いたオーナーでしか本来は体験できないような素晴らしい経験を、ときとして我々自動車専門のライターは、仕事として仰せつかるわけだ。

そもそも、筆者の場合は幼少期からのクルマバカが嵩じて就いたような仕事である。雨が降ろうが、槍が降ろうが、富士スピードウェイが自宅のある京都からいかに遠かろうが、サーキットでポルシェに乗れると聞きゃ、呼ばれたその足で馳せ参じることだって厭わない。

で、案の定、雨が降った。

がっかり? いやいや、モノは考えようだ。

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

もし、ポルシェ最新の高性能モデル、911GT3を貴方がついに手に入れたとして、待ちに待ったサーキット走行のその日に、朝から大雨が降っていたら、さて、貴方ならどうする?

普通は、走るのを諦める。富士まで行くのだって、止める。雨が嬉しいといって勇み駆けつける猛者など、そういないはず。そういうわけだから、雨のサーキットで最新の911GT3をテストなんて機会は、またとないチャンスと捉えるべきなのだ。それに、ウェットコンディションの方が、そのクルマの真の実力を、さほど速い、つまりは危険な領域まで試さずとも、確かめることができるというもの。

筆者は雨のなか、喜んでピットロードに並べられた911GT3に乗り込んだ。
 

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最新の911 GT3を雨の富士スピードウェイでテスト (2)

奮い立たせる最新流儀のポルシェコクピット

つい先だって、さらに高性能な4リッター版のGT3RSが発表されたばかり。とはいうものの、3.8リッターのGT3もいまだ、ポルシェファン、911ファン、そして世界中のスポーツカーマニアの、憧れのマシンである事実には変わりがない。

何度見ても飽きない、911のなかでもとりわけアグレッシブなスタイリングが、早くも乗り手を虜にする。ノーズはあくまでも低く路面を這い、リアセクションはワイドにがっちりと地面を掴む。そして、全体のデザインをバランスする、大きなリアウィング。まさに、レーシングポルシェのイメージだ。

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

乗り込めば見慣れた最新流儀のポルシェコクピット、であるはずなのに、頭のなかでは「よぉっしゃ、いっちょう、やったるか!」と無言の気合いが勝手に入ってしまう。低いドライビングポジションに、レーシーなインテリアの雰囲気、ステアリングホイールの触感などが、そうさせるのだろう。

スペシャルチューンドの3.8リッター水平対向6気筒エンジンが轟然と目覚めた、と書きたいところだけれども、コクピットに収まり、ドアと窓を閉めきってエンジンを掛けると、心をドキリとさせるような類のサウンドは、ついぞ聞こえてこない。外で聞けばワイルドな轟音、なのだけれども、コクピット内で聞くぶんには、ちょっと迫力のあるエンジン、といった印象だった。

路面の水を踏みしめ散らすようにして、ピットロードを走り出す。トランスミッションは、ステアリングホイールのパドルでアップダウンさせる、2ペダル7段PDKで、これは新型GT3の注目ポイントでもある。

というのも、これまでGT3といえば、3ペダルのマニュアルギアボックスというのが常識だったから。門戸を拡げた反面、少なからずマニアの失望を招いたのも事実で、そのあたりを勘案することも、テストの目的のひとつになるだろう。

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

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最新の911 GT3を雨の富士スピードウェイでテスト (3)

プライスレスなGT3の価値

まずは、路面の水の状況を確かめるべく、ゆっくりと1周する。ところどころ川になっているところがあって、コースを直角に横切ってくれているならまだしも、斜めに流れていることがたいがいだから、危ない。直線でもスピンしてしまう。いくら電子制御バリバリの最新モデルであっても、高性能RRのスポーツカーにとっては、たいへん危険な状況である。

“川”の位置をしっかりと頭に入れて、2周目から徐々にペースを上げていった。攻め込む前に驚かされるのは、踏ん張りの効いたリアと、手応えこそ軽めだが正確に動くフロントの、いずれもアシの動きだった。雨であることを、ほとんど不利と感じさせないクルマの動きに自信を深め、さらにペースを上げていく。

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3

とにかく、急なベントであろうが、高速コーナーであろうが、レコードラインをしっかりと読んでステアリング操作さえすれば、GT3はいとも簡単に、かつスムーズに、ひとつひとつの難所をクリアしていく。ドライバーのミスは、電子制御がそうとは乗り手に知らせないよう常に上手なフォローを入れてくれるから、いつまでたっても上達しない恐れはあるものの、雨のサーキットで気分よくハードドライブを楽しめた。

センターのシフトレバーベースにあるスイッチを、すべてスポーツ寄りにセットして、3.8リッターエンジンの実力とフィールを確かめてみた。いかにも自然吸気エンジンらしく、回転に応じて力が右足の裏にこもっていく感覚が、とてつもなく嬉しい。

いっきに達した4,000回転を超えるあたりから力は明らかに増し、5,000を超えればもはや凶暴で、6,000を回ったところで最大値となる。それでも力が落ちるような感覚はまるでなく、弾くような力強さに代わって、先(と天)に向かって引っ張られるような力が引き続き車体を前へ前へと押してゆく。8,000回転を超え、心にビビリが入りながらも9,000回転に達すかどうかという瞬間に、このエンジンはブロックの芯から雄叫びを上げた。そこで、電光石火のシフトアップ。

その瞬間、このクルマには2,000万円以上の価値があるとおもった。

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Porsche 911 GT3|ポルシェ 911 GT3
ボディサイズ|全長 4,545 × 全幅 1,870 × 全高 1,270 mm
ホイールベース|2,455 mm
トレッド 前/後| 1,551 / 1,555 mm
重量|1,430 kg
エンジン|3,799 cc 水平対向6気筒 
ボア×ストローク|102.0 × 77.5 mm
圧縮比|12.9:1
最高出力| 350 kW(475 ps)/ 8,250 rpm
最大トルク|440 Nm/ 6,250 rpm
トランスミッション|7段オートマチックPDK
駆動方式|RR
サスペンション 前|マクファーソンストラット
サスペンション 後|マルチリンク
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|245/35 ZR 20 / 305/30 ZR 20
0-100km/h加速|3.5 秒

最高速度|315 km/h

燃費(NEDC)|12.4 ℓ/100km(およそ8km/ℓ)

CO2排出量|289 g/km

トランク容量 前/後|125 ℓ/ 260ℓ
価格│1,912万円

ポルシェ カスタマーケアセンター
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