モントレー・ウイークエンド 2013 世界でもっとも魅力的な週末
Monterey Weekend 2013|モントレー・ウイークエンド 2013
世界でもっとも魅力的な週末
真夏のカリフォルニアには、世界中のカーエンスージアストたちが集う特別な週末がある。プレミアムブランドのコンセプトカーから最新モデル、そして貴重なヒストリックカーの数々。そこには、訪れたものだけが体感することができる熱狂に満ちた空間が広がっている。モントレーから山崎元裕氏がレポートをお届けする。
Text by YAMAZAKI MotohiroPhotographs by SATO Yasuhiko
カーエンスージアストが集う夏の西海岸
ここ10年以上、8月半ばの週末には、アメリカのカリフォルニア州モントレーへと、足を運ぶようになった。それは「モントレー・ウイークエンド」と呼ばれる、カーエンスージアストには、世界でもっとも魅力的ともいえる週末が、この地で待っているからだ。
この週末には、モントレーを中心に、さまざまなクラッシックカーイベントが、集中して開催される。そのなかでもメジャーな存在といえるイベントは、高級リゾートのクワイルロッジが舞台となる「モータースポーツ・ギャザリング」、ラグナセカ・ゴルフコースの「コンコルソ・イタリアーノ」、マツダ・ラグナセカ・レースウェイで3日間にわたっておこなわれる「モータースポーツ・リユニオン」、そしてゴルフファンには、USオープンの開催コースとしてもその名を広く知られる、ペブルビーチ・ゴルフリンクスの、18番ホールがメインステージとなる、「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」の4つ。
ほかにもこの週末には、大小さまざまなイベントが開催されているし、またナイトタイムには、こちらも世界屈指のオークショネアによる、オートオークションへと熱い視線が注がれる。
モータースポーツ・ギャザリングとコンコルソ・イタリアーノは、ともに金曜日に開催されるが、そのイベントの雰囲気は大きくちがう。ここ数年で一気にモントレー・ウイークエンドでもっともエクスクルーシブなイベントとして、その存在を広く知られるようになったモータースポーツ・ギャザリングは、そのタイトルが物語るように、そもそもはモータースポーツのヒストリーに関連したレースカーが主役のイベントだったが、現在ではそれ以外にも、特別にメイクスやモデルをフューチャーすることで、エントラントによって持ち込まれるモデルも多彩なものになっている。
今年はポルシェ911やランボルギーニの50周年、あるいはアストンマーティンの100周年などがフューチャーされ、注目を集めていた。
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世界でもっとも魅力的な週末 (2)
わずか3,000枚の入場パス
モータースポーツ・ギャザリングの会場が、エクスクルーシブな雰囲気で満たされるのは、一般にセールスされる入場パスの数が、わずか3,000枚程度に限られていることにも大きな理由がある。定価でも400ドル以上という価格が掲げられるそのパスには、さらにプレミアムが付き、どうしてもそれを入手したいという熱狂的なファンは、オークションサイトなどで1,000ドル以上の価格を入札して、それを手に入れることになる。
そして自動車メーカーにとっても、このイベントはセールスプロモーションに特別な意味を持つのだろう。ここではプレミアムブランドのコンセプトカーやニューモデルがワールドプレミアされることも多くなった。
今年はBMWが「M4コンセプト」を初披露したほか、ブガッティからも「ベイロン16.4」の限定車が、またポルシェも「918スパイダー」のプロダクション仕様を、公道走行可能な状態で持ち込んでみせた。
いっぽう、おなじ金曜日にスケジューリングされているコンコルソ・イタリアーノは、モントレー・ウイークエンドではもっともカジュアルなイベントだ。主役はもちろんイタリアンブランドだが、クラッシックカーのみならず、最新の現行モデルでも、エントリーが可能なのが大きな特徴。
ランボルギーニの創立50周年は、もちろんこのコンコルソ・イタリアーノでも今年の重要なテーマとされており、開催翌日の土曜日には、ランボルギーニのエントラントによるツアーも開催された。気軽にイタリアンブランドの魅力を堪能したいというファンならば、ここでカリフォルニアの一日を過ごすのも悪くないプランだろう。
コンコルソ=コンクールというタイトルからも想像できるように、ここでもメインイベントとなるのは、メイクス別におこなわれるプライズ・ギビング(表彰式)だ。
車両のコンディションやヒストリーなど、ジャッジによるチェックを受けて、プライズを獲得したモデルは、メインステージへと導かれ、その雄姿をゲストの前で披露する。実車を前に、ここで解説を聞くのも、ファンには貴重な時間だろう。
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世界でもっとも魅力的な週末 (3)
シボレー・コルベットの生誕60周年を祝う
ラグナセカ・レースウェイで金曜日から日曜日までおこなわれる、モータースポーツ・リユニオンは、走行会ではなく、ヒストリックレーシングカーによるレースイベント。年代や排気量、あるいはレースカテゴリーによるクラス分けがおこなわれ、それは観客にとっても非常にエキサイティングなレースとなるわけだが、同時にこのイベントでも毎年さまざまなフューチャーカーが、我々の目を楽しませてくれる。
今年はアメリカン・スポーツの象徴ともいえるシボレー・コルベットの生誕60周年を祝い、歴代コルベットが主役となるクラスが設けられたほか、インフィールドにはシボレー自身によって、初代から最新の第7世代コルベットと、各々のレーシングモデル、さらに はコルベットの歴史を語るうえで欠かすことのできない、スティングレイ・レーサなどの、貴重なコンセプトカーなどが持ち込まれたのも大きな話題だった。
トータルで16のクラスに分けられた参加車は、それぞれクオリファイを経て、2回のレースを戦うことになるが、レースの合間にはさまざまなプロモーション走行もおこなわれる。
今年もっとも注目されたのは、シボレーが2014年シーズンからの実戦投入を狙う、第7世代コルベットをベースとしたレーシングカー、「C7R」の走行で、ボディーには偽装パターンがほどこされていたために、そのディテールを詳しく知ることはできなかったが、早くもその戦闘力には大きな期待が寄せられていることは、それを見る観衆の反応からも明らかだった。
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世界でもっとも魅力的な週末 (4)
18番ホールに並ぶ、貴重なクラッシックカーの数々
そしてモントレー・ウイークエンドの最後を飾るイベントが、今年で63回目の開催となる、世界最高格式のコンクールイベント、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスだ。ここでも最新モデルやコンセプトカーの発表が、最近の定番となっているが、やはり注目すべきは太平洋を望む18番ホールに並ぶ、貴重なクラッシックカーの数々。
アストンマーティンやランボルギーニ、そしてポルシェ911などは、ここでもフューチャーされていたメイクス&モデルだが、さらに世界中のエンスージアストが羨望の眼差しを向けたのは、ブガッティのタイプ35と並び、戦前のグランプリシーンでもっとも大きな成功を収めたモデルともいえる、アルファロメオ・8Cが28台もギャザリングしたこと。
ミレミリアとタルガフローリオを、それぞれ3回。そしてル・マン24時間を4回も制したほか、さまざまなサーキットでアルファロメオに勝利を授けた8Cのヒストリーは、エンスージアストならば誰もがそれを知るところ。ここまでの台数を、しかも各々に貴重なヒストリーを持つモデルを同時に集めることができるのは、やはりペブルビーチ・コンクール・デレガンスのステータスによるものと評するべきだろう。