ロサンジェルス自動車ショーリポート スポーティカー篇|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016
ロサンジェルス自動車ショーリポート|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016 Report Part 2
ハリウッド的モデルも登場
11月18日から開催されたロサンジェルス自動車ショー2016。SUVにフォーカスした現地リポート第1弾につづき、パート2ではスポーティモデルを中心に紹介する。
Text by OGAWA Fumio
多くの注目モデルを持ち込んだメルセデス
ロサンジェルスはハリウッドやシリコンバレーも近いため、トレンディであり、環境問題を含めてなにごとにも意識が高く、そしてぜいたくなものが好きなマーケットが存在する。ロサンジェルス・オートショーは環境対応車や大型SUVが多く目についたことに加え、スポーティだったりラグジュリアスだったりするモデルも多かった。
大きな話題になったのはメルセデス・ベンツだ。とりわけメルセデス-マイバッハという超高級ラインから発表された豪華なフルオープン4シーターのメルセデス-マイバッハ「S 650 カブリオレ」が大きな注目を集めた。展示されたモデルは真っ赤な車体色に、ほとんど真っ白な内装。まさにハリウッド的なモデルである。
メルセデス-マイバッハ S 650 カブリオレのエンジンは6リッターV12気筒。ツインターボチャージャーを活かして最高出力は463kW(630ps)、最大トルクは1000Nmに。静止から100km/hに達すのにわずか4.1秒しかかからないなど、へたなスポーツカーを凌駕している。2017年に300台限定で生産されるそうだ。
スポーティなメルセデス-AMGは2台ワールドプレミアを持ちこんだ。1つは、リアルスポーツカーであるGTのカブリオレ版だ。「GT ロードスター」とより高性能な「GT C ロードスター」の2本立てである。優雅というより迫力満点。トップをなくしたことで重心高も下がってよりスポーティな運動性能が期待できる気がする。
GTとGT C、エンジンはともに4リッターV8ターボだ。GTロードスターは350kW(476ps)の最高出力と630Nmの最大トルク。いっぽうGT Cロードスター用はチューンが異なる。410kW(557ps)、680Nmと数値からして充分すぎるパワフルさだ。2モデルともにAMGスピードシフトと呼称される7段ツインクラッチ式変速機を備えて後輪駆動である。
もう1台、注目のメルセデスAMGモデルがある。メルセデスAMG 「E 63 S 4マチック」だ。450kW(612ps)の4リッターV8ツインターボエンジンに新開発のフルタイム4WDシステムの組み合わせ。「Eクラス史上もっともパワフルなエンジン」とお披露目の場でメルセデス・ベンツUSAの社長は誇らしげに語っていたのが印象的だ。同時にメルセデスAMG「E 63 4マチック」というややチューンがマイルドな仕様も発表された。同じ4リッターV8ながら、最高出力が420kW(571ps)に抑えられている。
メルセデスAMG E 63で注目すべき点は多い。AMGスピードシフトMCTと名づけられた9段のツインクラッチタイプが採用された。発進時にトルクコンバーターのかわりにクラッチを使うタイプである。「軽量化とともにアクセルペダルの踏み込みに対するレスポンスが大きく向上」しているのが特長とプレスリリースでは謳われる。
メルセデスAMG E 63系では4WDシステムもまったく新しくなった。AMGパフォーマンス 4マチック プラス(AMG Performance 4 MATIC+)といい、従来が後輪駆動主体のトルク配分だったのに対して、完全なフルタイム4WDとメルセデスAMGは謳う。それによりこれまで以上にパワーを路面に効率的に伝えられるようになったそうだ。E 63 S 4マチックにはドリフトモードが設けられ後輪のみを駆動することもできる。実生活では不要な装備だが、このクルマに食指を動かす人にはウケそうだ。
ポルシェからも新しくなったパナメーラにさらに新しいモデルが追加された。
ロサンジェルス自動車ショーリポート|LOS ANGELES AUTO SHOW 2016 Report Part 2
ハリウッド的モデルも登場 (2)
ミッドシップのレーシング911も登場
ポルシェがロサンジェルスで初めて公開したのが、先にフルモデルチェンジを受けたパナメーラの追加車種「パナメーラ エクゼクティブ」。サブネームから連想できるとおり後席重視のエグゼクティブ仕様だ。ホイールベースが通常のパナメーラより150mm伸びて3,100mmになり、全長5,199mm。パナメーラの印象がだいぶ変わった感じだ。
エンジンラインナップは3種類。新開発の2,995cc V6エンジン(243kW[330ps]と450Nm)にフルタイム4WDシステムを組み合わせた「パナメーラ 4 エグゼクティブ(日本ですでに発表されている価格は1,303万円)」。その上には「パナメーラ 4S エグゼクティブ(1,762万円)」。こちらは2,894ccのV6で324kW(440ps)と550Nm。ガソリンエンジンのトップモデルは「パナメーラ ターボ エグゼクティブ(2,540万円)」。404kW(550ps)、770Nmとなる。すべてのモデルが変速機はツインクラッチのPDKだ。
「パナメーラ 4-E ハイブリッド エグゼクティブ(1,529万円)」というプラグインハイブリッドモデルも設定された。環境規制で知られるカリフォルニア州のショーのせいか、このモデルが目立っていた。243kW(330ps)の最高出力と450Nmの最大トルクの2,894ccのV6ガソリンエンジンに400Nmの最大トルクを持つ電気モーターの組合せ。
ポルシェは同時に「911 RSR」も初公開した。GT耐久レース向けのレースカーである。2017年シーズンのルマン24時間レースなどにGT耐久レースに向けて開発された。巨大なリアスポイラーをはじめ、フロントのスポイラーからリアのディフューザーにいたるまで徹底した空力ボディに、500psを超える4リッターの水平対向6気筒。このエンジンはリアアクスルより前方に搭載というミドシップ911である。
高級クーペやスポーティセダンにも見逃せないモデルが多い。
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ハリウッド的モデルも登場(3)
レクサスは2017年発売のフラッグシップクーペ「LC500」を発表
レクサスが展示したのは2017年発売の「LC500」。467psの5リッターV6搭載の2ドアクーペで10段オートマチック変速機と話題性も充分。外観はとにかく迫力満点だ。3連LEDヘッドランプと、大きなスピンドルグリルが目を惹く。同時にリアフェンダーは大きく張り出し、低くてワイドなスタイリングはアグレッシブな走りが期待できる大型クーペとひと目でわかる。
いっぽうで3.5リッターV型6気筒に2つの電気モーターを組み合わせた新しいハイブリッドシステムを搭載する「LC500h」も発表された。エンジンは高回転型とし、走行用モーターに有段の自動変速機構を組み合わせたシステムだ。パラメターはドライバーの運転操作からセンサーが検知したGを含む走行状態と幅広い。モーター側出力もギアボックスで制御することでモーター駆動の特性であるトルクの太さ(=応答性のよさ)を最大限に活用するとメーカーでは謳う。
SUVの「ステルビオ」が注目を集めたアルファロメオでは、マセラティなら「ギブリ」に相当する大型後輪駆動セダン、「ジュリア」も展示した。510psの高性能版もあり、日本導入を望む声も少なくないモデルだ。マセラティの人気が高い米西海岸だけにアルファロメオにとっても潜在的需要が多そうに思える。
アウディはさりげなくという感じで欧州でデビューしたばかりの「S5 スポーツバック」を持ちこんだ。従来モデルより少し大型化し室内も広くなったいっぽうで燃費が向上した新型A5およびS5スポーツバック。クーペの美とステーションワゴンの機能性を併せ持ったモデルとアウディが言うように、躍動感のある上手なスタイリングが魅力的だ。
現地専用モデルを設定するなどずっと北米重視路線を貫いている本田技研では、人気のスポーティクーペ、「シビック Siプロトタイプ」をブースの最も目立つところに置いた。2017年に発売予定というシビック クーペ Siとシビック セダン Siの「デザインの方向性を示すモデル」(本田技研)という。
深いエアダムや大型スポイラーといったエアロパーツで“武装”したシビックSiクーペにはデュアルVTCを備えた1.5リッター直噴DOHCターボエンジンを搭載。ショートストロークの6段マニュアル変速機、アクティブダンパー、アクティブステアリングシステム、LSDなどを装備し「スポーティな運動性能をさらに強化」していると本田技研では謳う。