ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗|Jaguar
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2015年1月7日

ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗|Jaguar

Jaguar XKR-S & XFR|ジャガー XKR-S & XFR

ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗

東京ではまだ寒さののこる3月下旬、すでに春のきざしも見えはじめた温暖な宮崎にてジャガーのフルラインナップ試乗会がおこなわれた。もともとはポルシェやフェラーリとも肩を並べるスポーツカーメーカーであったジャガーだが、近年ではスポーティイメージが薄れ、優美なサルーンの印象がつよい。そこでジャガーは、原点にたちかえるべく、スポーツモデルに注力する方向だという。OPENERSは、そのなかでももっともハイパフォーマンスな2台を選択。1台は優美なプロポーションをもつスポーツクーペ「XK」のスポーツグレード「XKR」に、さらに本気度の高い性能を詰め込んだ「XKR-S」。もう1台はスポーティサルーン「XF」の最上位グレード「XFR」。ジャガーのいう英国的スポーツカーをどう感じたか。渡辺敏史氏によるリポート。

Text by WATANABE Toshifumi
Photographs by ARAKAWA Toshiyuki

ピュアスポーツ・ジャガー

第二次世界大戦が終了した1945年。いかにもイギリスのそれらしい現在の社名であるジャガー・カーズ・リミテッドの歴史はここから始まったことになっているが、彼らが四輪車のビジネスにかかわり始めたのはそこからさらに20年近く前、1927年に遡る。

85年に逝去した創業者のサー・ウイリアム・ライオンズが当時手掛けていたのはサイドカーの架装事業。当時のスワローという屋号は彼の「美しいものをつくる」というプロダクト・ポリシーを反映したものだ。

その技術を反映して作られた流麗なボディを、当時のポピュラーなスポーツモデルだった「オースチン・セブン」に架装し作られた「オースチン・スワロー」。このヒットを足掛かりに、ライオンズはオリジナルプロダクションへの道を加速させた。

大戦を挟んでの戦後、隆盛をきわめたイギリスの自動車産業において特別なプレゼンスをしめしていたジャガーが一貫して手掛けていたのもスポーツモデル。

Jaguar XKR-S|ジャガー XKR-S

その後、ル・マン24時間レース等での活躍を足掛かりに61年、かのエンツォ・フェラーリをして世界でもっとも美しいスポーツカーといわしめた、ジャガー「Eタイプ」がデビューするわけだ。「美しい」「スポーツカー」というジャガーのブランドイメージは、70年代以降のイギリスの自動車産業の沈滞とともに「ラグジュアリー」「サルーン」という言葉に置き換えられていった。巷間いわれるジャガーのそれである。

しかしジャガーの中でスポーツカーのスピリッツが置き去りにされたことは過去に一度もない。それはプロダクトの動的質感をみればわかることである。そして昨今は、スポーツカーメイクスとしてブランドイメージを再構築しようという動きもみてとれる。「XKR-S」は、そういう背景のもとに生まれたひさしぶりのピュアスポーツ・ジャガーだ。

Jaguar XKR-S & XFR|ジャガー XKR-S & XFR

ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗(2)

ジャガー史上最速

「XKR-S」のエンジンはベースモデルのXKRに搭載される5リッター+スーパーチャージャーユニットを元に、吸排気アイテムやマネジメントの変更などがくわえられた。

550psという猛烈なパワーはもちろん歴代のジャガーにおいて、レースモデルや特殊な限定車を除けば最強ということになる。最高速は現在のスーパースポーツの大台ともいえる300km/h。これもまた、ジャガー史上最速といえるものだ。

その高速性能をサポートすべく、フロントバンパー左右にはカナード効果を持たせたエフェクトが付加。ボディとは別色仕立ての前後アンダースプリッターやリアウイングに使用した、引き締まった印象を与えるブラックパーツはリアルカーボンだ。薄い新意匠のヘッドライトに挟まれるようにインテークスリットが設けられたその佇まいは獰猛ながら、各々のパーツのデザインはブランドイメージとの調和を考慮して流麗に仕立てられている。

Jaguar XKR-S|ジャガー XKR-S

Jaguar XKR-S|ジャガー XKR-S

綾目をエンボスしたカーボン調のテクスチャーを持つレザーをメインにフルラッピングされたインテリアも基本的にはレーシーな仕立てだが、はしばしに効かせられた青いパイピングが英国車的な世界観を物語っている。

シートは16WAYの電動調整式でフルハーネスのベルトも通せるリクライニングバケットタイプを標準採用。とはいえかけ心地自体は拘束感の少ない、体全体をほどよく包み込むものだ。

ほかにもクライメートコントロールやエンターテイメントはベース車とおなじものが実装され、遮音材の類も省略されることはなく……と、一定のラグジュアリー性はキープされている。

Jaguar XKR-S & XFR|ジャガー XKR-S & XFR

ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗(3)

ジャガー以外のなにものでもない

専用エキゾーストシステムから放たれるサウンドは、ベースモデルのXKRにも増して獰猛だ。おなじV8でもフェラーリのようにハイトーンで揃えられたものではなく、回転の高まりとともにキャビンに入ってくるザラリと低く野太いそれは、いかにもジャガーのスポーツモデルである。

そしてエンジンの特性もまた、XKRにたいして明らかに高回転型にしつけられている。スーパーチャージャーをして、6,000rpmオーバーまでスパッと吹け上がるそのフィーリングはスーパースポーツを名乗るに相応しいものだ。

一方で、低中回転域のトルクバンドもしっかりキープしているところはいかにもイギリスのスポーツカーである。

とはいえ、試乗はあいにくの土砂降り。とても550psものパワーを解き放つ状況ではなかったが、それでも隙をみてフィーリングを確認できたのは、抜群にコントローラブルなシャシー側のポテンシャルがあってのことだ。

XKRにたいして28パーセントも締められたというアシはさすがに低速域では硬さを感じられるが、速度域が高まるほどにしんなりと馴染みつつ、ドライバーにつねに適切な接地感を伝えてくる。

ステアリングフィールは絶品で、始終しっとりとした感触ながらインフォメーションはまったく不足がなく、そのフィードバックもつねに優しい。

Jaguar XKR-S|ジャガー XKR-S

つねにビタッと路面を捉えてはなさない安定感と、操舵にたいしてヒラリと向きを変える軽快さとが巧妙に絡み合っている、300km/hのポテンシャルをしてこのライド感はやはりジャガー以外のなにものでもない。

Jaguar XKR-S & XFR|ジャガー XKR-S & XFR

ジャガーのハイパフォーマンスモデル2台に試乗(4)

特別な記号が与えられた2台

そんなジャガー特有のライド感をより濃厚に味わわせてくれる「XFR」は、いま、個人的にももっともお薦めしたいジャガーサルーンだ。

装着される大径タイヤをものともせず、走り始めから路面の凹凸をトロンと滑らかにいなし、速度を上げるほどに車体がじわじわと沈み込んでいくかのような安定感を、柔らかさの中に伝えてくる。車体はつねにフラットな姿勢を保ち、大きな入力にもまったく動じる気配がない。その衝撃の収め方ひとつでもクルマ好きは溜飲を下げられるほど優雅だ。

ステアリングフィールはつねに優しくも、インフォメーションは豊かでタイヤにもて遊ばれているような空白は皆無。コーナリングの最中にギャップを踏んだりブレーキングを余儀なくされる状況でも姿勢変化はドライバーの意志と完璧に一致しており、不安要素は大幅に低減される。

速く走るにしてもスラスラと流すにしても、そのセットアップは実践向け、つまり公道への適性が極めて高い。その上でフィードバックの上質さは一頭地を抜いている。

直接のライバルの中ではAMGのE63が同質のキャラクターをもっているが、価格差を含めて非常に高いポテンシャルをもったクルマだということができる。

Jaguar XFR|ジャガー XFR

Jaguar XFR|ジャガー XFR

ともあれ、「XKR-S」も「XFR」も、特別な記号が与えられたジャガーのスポーツラインである。内外装の仕立てをみて、わかりやすくジャガーらしさを表現しているとは言い難い。が、乗ってナンボの話をすれば、この両車は特にライドフィールにおいて、まごうかたなきジャガーのそれをもっている。かつてはそのフットワークのよさを社名に引っ掛けて「猫足」と称されることも多かったが、それはけっして過去形ではない。

美しさにこだわりつづけるジャガーの歴史において、その言葉がしめす意味はデザインだけではなくパワーやフットワークにもあてはまる。この両車はそれを乗る者に知らしめる。

spec

Jaguar XKR-S Coupe|ジャガー XKR-S クーペ
ボディサイズ|全長4,795×全幅1,915×全高1,310mm
ホイールベース|2,750mm
車両重量|1,810kg
エンジン|5リッターV型8気筒DOHC+スーパーチャージャー
最高出力|405kW(550ps)/6,500rpm
最大トルク|680Nm/3,500rpm
トランスミッション|6段AT
駆動方式|FR
燃費|6.6km/ℓ(10・15モード) 6.6km/ℓ(JC08モード)
価格|1,750万円

Jaguar XFR|ジャガー XFR
ボディサイズ|全長4,975×全幅1,875×全高1,460mm
ホイールベース|2,910mm
車両重量|1,960kg
エンジン|5リッターV型8気筒DOHC+スーパーチャージャー
最高出力|375kW(510ps)/6,000-6,500rpm
最大トルク|625Nm/2,500-5,500rpm
トランスミッション|6段AT
駆動方式|FR
燃費|6.6km/ℓ(10・15モード) 6.6km/ℓ(JC08モード)
価格|1,200万円

           
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