BMW M235iを試乗する|BMW
BMW M235i Coupe|ビー・エム・ダブリュー M235i クーペ
かなりゴキゲン!な万能コンパクトクーペ
BMW M235iを試乗する
BMWのラインナップで、もっとも小さなクーペモデル「2シリーズ クーペ」。そのなかでも、縦置き直6エンジン、FRレイアウト、Mの名称、そしてMTも用意と、BMWらしいスポーティな記号たちをもつのが「M235i クーペ」だ。その名称から往年のスポーティクーペ「02シリーズ」の再来を謳うこのM235iを、河村康彦氏が8段ATモデルと6段MTモデル2台同時に試乗した。
Text by KAWAMURA YasuhikoPhotographs by ARAKAWA Masayuki
モデル名もあらたに、よりクーペらしく
「駆けぬける歓び」という自らの製品特徴を象徴する、ユニークなキャッチフレーズを謳うBMW。そんなブランドから、まさにそうしたキャラクターを彷彿とさせるニューモデルが日本上陸となった。その名は「2シリーズ クーペ」だ。
それは「まったくあたらしいシリーズである」と紹介されるいっぽう、従来の「1シリーズ クーペ」からの流れをくんだ立ち位置にあることもあきらかなもの。さらに、往年の名モデルとしていまでもファンのあいだで語り草となる「02シリーズ」の発売いらい「45年以上にわたり2ドアコンパクトカーにおけるスポーティな走りを象徴する、“2”という数字があたえられたもの」との説明がくわえられてもいる。
従来の「3シリーズ クーペ」が「4シリーズ クーペ」に変えられたのと同様、名前を改めたこのモデルが従来の1シリーズ クーペや現行「1シリーズ ハッチバック」にたいして、より上位に置かれたモデルという意志表示が明確におこなわれた点も注目に値する。
それがもっとも顕著なのが、1シリーズ クーペにたいして100mm、現行ハッチバックの「M135i」にくらべても70mm大きな全長だ。
そんな“余裕の寸法”を手にした2シリーズ クーペは、結果としてルーフ後端部の段差がきつく、目にするアングルによってはむしろ“2ドア セダン”のようにも受けとれた1シリーズ クーペにくらべると、フル4シーターのパッケージングはキープをしながらよりなだらかでクーペらしいルーフラインを手にすることに成功している。
そう、「1から2への名前の変更」は、BMWの末っ子クーペに、より流麗なフォルムを提供することにもなったということだ。
BMW M235i Coupe|ビー・エム・ダブリュー M235i クーペ
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BMW M235iを試乗する (2)
神経がクルマの隅々までゆき渡るような一体感
今回テストドライブをおこなった「M235i」は、シリーズ中でも特に“走り”にたいしてのこだわりをそなえたモデル。
なにしろ、BMW流儀の長いフード下に収まるのは、このブランドにとってのいまだ重要なアイコンでもある直列6気筒デザインのエンジン。直噴化がはかられた上でターボチャージングが施されたその心臓は、3リッターの排気量から326psという最高出力と450Nmという最大トルクを発揮する。
いっぽう、その車両重量は従来の1シリーズ クーペと同等レベルに抑えられ、ウエイト/パワーレシオは5kg/psを大きく下まわる。言うまでもなく、これはもはや「世界一級のスポーツカーレベル」と、ためらいなくそう紹介のできるすぐれた値というわけだ。
嬉しいことに、本国と同様に日本でもMTモデルがカタログ ラインナップにくわえられたM235i。まずは早速、そんなMT仕様を選んでテストドライブへとスタートする。
じつはこのモデルを最初に受け取ったのは、とある地下の大規模駐車場。当然、20km/hも出せないというそんな条件の下で、ホンの数十メートルを走った時点で感じさせられた第一印象は、「尋常ならざる“人とクルマの一体感の高さ”」というものだった。
「駆けぬける歓び」を“社是”(?)とするこのブランドの場合、一体感の高さが際立つモデルは決して少なくない。
が、そうしたこれまでの経験のなかにあっても、このモデルのそれは「また格別!」なのだ。まるで、自身の神経が車体の隅々にまで伸び、自由自在にコントロールできるかのような感覚が、何とも新鮮。そんな印象がごく低速域でも実感できるということは、すなわち「街中をゆったりと流していても快感そのもの」を意味している。
操作ストロークはやや大きめながら、じゅうぶんに操る楽しさが味わえるMTも、ギア比の決め方を含めなかなか好印象。6速100km/hは2,200rpmほどでこなすが、この付近からでもアクセル踏み込みにしっかり応答するのは、“燃費ばかりを気にしたトップギアの持ち主”に慣れたドライバーに、ふたたび『駆けぬける歓び』を思い起こさせるにはじゅうぶんだ。
タコメーター上のレッドラインは7,000rpm。そして、その500rpmほど手前、すなわち6,500rpm付近まで、心臓はためらいもなくスムーズ、かつきわめてパワフルにまわってくれる。
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BMW M235iを試乗する (3)
ドライバーを虜にするフットワーク
いっぽう、フットワークの仕上がりぶりは「かなりゴキゲン!」だ。
社名そのものが“エンジン製造会社”をあらわす、いかにもBMWの作品らしいパワーユニットの仕上がりぶりは、前述のとおり。そして、その珠玉のような心臓の魅力をさらに倍化させて味わわせてくれるのは、“人とクルマの一体感”をともに演じるこのモデルならではの、自在なハンドリングの感覚であるはずだ。
「どんなシーンでも、おもったとおりに曲がってくれる」M235iのフットワークのテイストは、こうして多くのドライバーを虜にするにちがいない。4つのタイヤのいずれもが、それぞれ過不足なくしっかり仕事をこなす感覚も、バランスに長けたFRレイアウトの持ち主ならではという印象だ。
くわえて、そんな脚がなかなか高い快適性を提供してくれた点も見逃せない。じつは、低速域を中心にちょっとヒョコヒョコと揺すられる挙動が目立つシーンも存在する。が、そんな現象には今回の2台のテスト車が、ともに「M235iには無償オプション」とされるランフラット タイヤを履いていた影響の可能性もかんがえられる。
全般にちょっとかためではあるものの、そこに文句を付けようという人は、このモデルに興味をしめす人びとのなかには皆無であるはずだ。
そもそもは、純粋な“Mモデル”と“Mスポーツ”の狭間を埋めるべく誕生した、“Mパフォーマンス”というあたらしいモデルライン──そこに属するM235iは、しかし限りなくオリジナルのMモデルにちかいというテイストの持ち主だ。
確かに、500万円を大きく超えたその価格は、一般的には「お手頃」と表現するわけにはゆかないだろう。
けれども、あきらかにピュアなスポーツカーレベルの走りを披露するこのモデルが、同時にフル4シーターキャビンに実用性に富んだトランクスペースまでもを用意していると知れば、その“万能性”の高さにおもわず食指が動く人はきっと少なくないはずだ。
BMW M235i Coupe|ビー・エム・ダブリュー M235i クーペ
ボディサイズ|全長 4,470 × 全幅 1,775 × 全高 1,410 mm
ホイールベース|2,690 mm
車輛重量|1,530 kg(6段MT)、1.550 kg(8段AT)
エンジン| 2,979 cc 直列6気筒 ツインパワーターボ
最高出力|240 kW(326 ps)/5,800 rpm
最大トルク|450 Nm(45.9 kgm)/1,300-4,500 rpm
トランスミッション|6段マニュアル / 8段オートマチック
駆動方式|FR
サスペンション 前|ダブルジョイント スプリング ストラット
サスペンション 後|5リンク
タイヤ 前/後|225/40 R18 / 245/35 R18
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ベンチレーテッドディスク
燃費(JC08モード)|12.0 km/ℓ(6段MT)、12.5 km/ℓ(8段AT)
0-100km/h加速(欧州値)|5.0 秒(6段MT)、4.8 秒(8段AT)
価格(消費税込み)|601万円(6段MT)、615万円(8段AT)
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