モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗|Lexus
Lexus IS|レクサス IS
レクサスの走りが輝く
モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗
日本でのレクサスブランドのスターティングメンバーにして、これまで、モデルチェンジを受けていなかった レクサス「IS」が、ついにモデルチェンジを果たす。レクサスのスポーツイメージの牽引役となる、新型ISの国内発売を目前にひかえ、レクサスは、箱根 ターンパイクを貸切って、ほぼ市販化モデルのプロトタイプによる大試乗会をおこなった。OPENERSは、河村康彦氏とともに、レクサスの走りを試す。
Text by KAWAMURA Yasuhiko
Photographs by ARAKAWA Masayuki
これならば戦える
年頭のデトロイトモーターショーでその姿が公に発表され、アメリカ西海岸で開催された“プロトタイプ試乗会”の模様も当サイト上に掲載済みのあたらしいレクサス IS。レクサスファミリーの中では末っ子のこのモデルに、国内で乗れるタイミングがやって来た。
ただし、今回乗る事ができたモデルも、擬装こそ施されないもののまだ発売前のプロトタイプの扱い。それでも、「すでに生産ラインを流して組み立てられたもので、仕上がりレベルはこの先市販をされる車両と同等と受け取って貰って差し支えない」と、まずはテストイベントのスタートの前にそんな説明を受ける事となった。
そうした事情もあり、閉鎖された箱根の有料道路という限定された舞台でのテストドライブとなった、あたらしいISにたいする第一印象は、実はおもいのほかに”衝撃的”なものだった。
端的に言って、その走りの質感は予想を遥かに超えたハイレベルなもの。「これならば、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」という”両巨頭”とも、対等に渡りあえる」と、そんな実感を味わわせてくれたのだ。
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モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗(2)
まずは IS 350 F SPORT
割り当てられた時間内で「このモデルだけは逃すわけにはいかない」とまず最初にチョイスをしたのは、自ら“スポーツセダン”を謳うIS全体のイメージリーダーでもある「IS 350 Fスポーツ」。
最高出力318psを発する3.5リッターのV型6気筒エンジンは従来型からのキャリーオーバーだが、組みあわされる8段ATはISとして初搭載。そのトランスミッションは、「コーナー入り口での制動G変化に対応して最適ギアへのシフトダウンをおこない、旋回中は不要なシフトアップを抑制」と謳われている。
なるほど、変速レンジの拡大とクロスレシオ化を同時に実現させるそんなアイテムの効用もあって、加速の力感もそのシフトクオリティも一層進化をしたと感じられる動力性能は文句ナシだ。
“サウンドジェネレーター”で強調されるアクセルペダルを深く踏み込んだ際にエンジン回転の上昇と共に耳に届く吸気音も、ISをスポーツセダンと認識する人にとってはきっと「心地良い」と好意的に受け取れるものにちがいない。
しかし、個人的にそれよりも強く感心させられたのは、その乗り味の上質さにかんしてだった。
いかにも「強靭なボディと良く動く脚の組み合わせによって実現された」と、そんなイメージができるしなやかな乗り味は、この分野においては世界の“双璧”ともおもわれる前述Cクラスや3シリーズという競合モデルに一歩もヒケをとらない。
小さな入力は軽やかに動いてそれを吸収し、大入力にたいしても決して破綻をしめさないサスペンションの働きは、常に高いフラット感を実現させ、いわゆる“ボディコントロール能力”がすこぶる高いものだ。
センターコンソール上の”ドライブモードセレクト”のダイヤルで「スポーツ+」モードを選択すると、ダンパーの減衰力が高まってボディの動き量が抑制されるが、その場合でも快適性にさしたるマイナスの影響が及ばないのはちょっとした驚きだった。すなわち、このモードでも「乗り心地は十分優れている」と、そうした評価が当てはまるのだ。
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モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗(3)
人車一体
コーナーに差し掛かると、今度は4ドアセダンとしてはかつて経験をした事がないほどの“人車一体感”の強さに、感銘をあらたにする。
ギア比可変ステアリングと後輪操舵システムを標準採用するのがこのモデルだが、小気味良い俊敏性を演じつつ決して違和感には繋がらないそのセッティングはなかなか絶妙だ。
実は、テストの舞台は中高速コーナーがメインで残念ながらタイトターンでの挙動をつぶさに観察する機会はなかったが、少なくとも今回経験ができた条件の中でのフットワークの印象は、かくも高い好感度が抱けるものであった。
フル電動式のパワーステアリングは、ごく低速時に大きな転舵をおこなうと、この種のシステムに特有の“コギングトルク”を連想させる、ごくわずかな摩擦感が伝えられはする。
しかし、それを除けばごく自然なフィーリングで、路面の荒れなどによるキックバックやワンダリングなどの”雑音”を遮断してくれるという点では、オーソドックスな油圧式以上のポテンシャルの持ち主。
ブレーキにかんしては大きな特徴は感じなかった。が、それは「意識をせず自然に踏めるブレーキ」である事をしめしているにもほかならない。
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モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗(4)
version Lから見えるF SPORT
そんな「IS 350 Fスポーツ」から乗り換えたのは「350 バージョンL」。エンジン/トランスミッションに変わりはないので、動力性能にかんする印象は同様となる。
「よりスポーティな走りを追求して専用チューニングされた」と謳われるサスペンションを採用のFスポーツにたいし、こちらはきっとより高い快適性を備えているはず──そんな事前の予想は、実は当たってはいなかった。
そう、よりしなやかな乗り味を享受できたのは、むしろFスポーツの方であったのだ。
そんな印象の差が生まれた最大要因として考えられるのは、Fスポーツには標準装備の“AVS”、すなわち電子制御式の可変減衰力ダンパー。状況に応じて瞬時に減衰力を変化させるこのアイテムの働きこそが、「もっともスポーティなグレードで、標準仕様以上にしなやかな乗り味を実現させていた」と、そう考えられる。
もっとも、バージョンLが採用する標準仕様のサスペンションとて、周辺ライバル車との比較では水準以上にしなやかな乗り味を実現させていたのは間違いない。
先に述べた“人車一体感”もFスポーツにくらべてしまえばやや薄味。とはいえ、ハンドリングの仕上がりレベルは「なかなかの高水準」という評価に偽りはない。
欧州を見据えるハイブリッドの300h
いっぽう、わずかに99g/kmというCO2排出量を達成し、“100g/km切り”を実現できない最新のクリーンディーゼルエンジンを搭載する欧州メーカー発のライバル勢を圧倒する環境性能を売り物とするのが、ハイブリッドモデルである「IS 300h」だ。
その動力性能が、パンチ感という点では「350」に大きく見劣りするのは事実。駆動系のリダクションギア段数を敢えて1段に留め、それゆえに「最高速度は約200km/h」というこのモデルは、新型ISシリーズ中で唯一欧州市場に向けても展開予定との事。
このハイブリッドモデルが、前出“2桁CO2排出量”の獲得と低コストの実現にこだわった結果に「加速性能をある程度犠牲にした」とそう表現しても、あながち間違ってはいないはずだ。
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モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗(5)
ハイブリッドの進化
ただし、そうは言っても220psというシステム出力を実現させた新型「クラウン」譲りのハイブリッドシステムを搭載のこのモデルの動力性能が、日常シーンで「物足りない……」と判断される可能性は、少なくとも日本の市場ではごく低いはずだ。6気筒ではなく、4気筒エンジンとの組みあわせという点にスペック上の不足感を抱く人も居るかも知れないが、エンジン回転数が3000rpm以上に達しない限り、4気筒エンジンならではのノイズもほぼ気にならない。
走行状況に応じて自動的におこわれるエンジンの始動と停止のスムーズさは、トヨタが手掛けるハイブリッドシステムですでに定評ある部分。そして、日常的な使い方を考える限り、まず9割方のシーンではエンジン回転数が3,000rpmまでという範囲の間で、必要とする加速力は十分に得られてしまう印象。
すなわち、基本的には静粛性にも大いに長けているのが300hというわけだ。
スッキリとした乗り味もまた、このモデルの走りの美点として採り上げる事ができる。
2012年にリリースされた現行の「GS450h」も、実はこの点で改善著しい。が、それ以前のレクサス、そしてトヨタのハイブリッドモデルでは、おなじシリーズ内のコンベンショナルエンジン車にたいして、どうしても“ブルブル”とどこかに振動が残留するような、ウエット感の漂う乗り味が拭えなかったものだ。
それがこのIS 300hでは前出GS 450hを上まわり、さらにドライで、振動の特性がエンジン車に遜色のない乗り味が実現されている。“スッキリ”と表現したのはこういう事だ。
それとともに、ハンドリングの感覚にもはや「ハイブリッドモデルゆえのハンディキャップ」が感じられないのも特徴と言える。
実は、この稿執筆段階では重量データが明らかにされていないが、クラウンの例からすれば「350」とほぼ同等であるはずなのがハイブリッドモデルの車両重量。その中で、駆動用のバッテリーがトランクルーム内の低い位置に搭載される事で、「重量配分的にはむしろより優れる」と推定できるのが、300hでもあるのだ。
なるほど、そのハンドリングはごく素直でクセがなく、良くできたFR車のそれを彷彿とさせる。この点でも、もはや“特別なモデル”である事を意識させないのが今度のISのハイブリッドモデルと言って良い。
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モデルチェンジを果たした レクサス ISに先行試乗(6)
原石は輝く
かくして、どの仕様に乗ってもその走りが予想以上に好印象で、おもわずその列記からスタートを切ってしまったここでの報告。
しかし、今度のISの魅力は「世界で好評だった」という従来型のスタイリングをさらに昇華させて“ISらしさ”を強めたそのルックスや、グンと使い勝手が高められた後席やトランクの空間デザインにも、もちろん見てとる事ができる。
いっぽうで、GSの電気式から再び時代が逆戻りをしてしまったかのような足踏み式パーキングブレーキの採用や、ハイブリッド仕様のエンジン以外へのアイドリングストップ メカの不採用など、本来は時代を切り拓いていくべきプレミアムブランドの作品でありながら、いくつかの部分で“旧い記号”が見え隠れするのが惜しいのも、また今度のISというモデル。
いずれにしても、その原石としての輝きはこれまでの日本車史上の中にあっても、飛び切りの高さであるのは間違いナシ。何とも発売が待ち遠しいニューモデルの誕生だ。
Lexus IS 350 F SPORT|レクサス IS 350 Fスポーツ
ボディサイズ|全長4,665×全幅1,810×全高1,430mm
ホイールベース|2,800 mm
トランク容量|480リットル
エンジン|3,456 cc V型6気筒 DOHC
最高出力| 234kW(318ps)/ 6,400 rpm
最大トルク|380Nm(38.7kgm)/ 4,800 rpm
トランスミッション|8段オートマチック(8-Speed SPDS)
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|225/40R18 / 255/35R18
Lexus IS 300h "version L"|レクサス IS 300h バージョンL
ボディサイズ|全長4,665×全幅1,810×全高1,430mm
ホイールベース|2,800 mm
トランク容量|450リットル
エンジン|2,493 cc 直列4気筒 DOHC(アトキンソンサイクル)
エンジン最高出力| 131kW(178ps)/ 6,000 rpm
エンジン最大トルク|221Nm(22.5kgm)/ 4,200-4,800 rpm
モーター最高出力|105kW(143ps)
モーター最大トルク|300Nm(30.6kgm)
システム最高出力|162kW(220ps)
トランスミッション|電気式無段変速機
駆動方式|FR
タイヤ 前/後|225/40R18 / 255/35R18