レクサスISプロトタイプをロサンゼルスでテストドライブ!|LEXUS
Lexus IS Prototype|レクサス IS プロトタイプ
新型ISプロトタイプをロサンゼルスでテストドライブ
レクサスが日本での販売を開始した2005年に誕生したミドルサイズサルーン「IS」が2013年、ついにフルモデルチェンジをむかえ、3代目となる。それに先立ち、レクサスが来年1月に開催される北米国際オートショー(デトロイトオートショー)でのワールドプレミアを予告したことは既報のとおり。「パリモーターショー2012」で披露されたミドルサイズFRクーペ、「LF-CC」をルーツとする「次期IS」は、現状どの程度の完成度にあるのか? ここからどのような進化を遂げるのか? それを見極めるべく、レクサスの実験車両である「IS プロトタイプ」が存在するアメリカはロサンゼルスに、島下泰久氏が飛んだ。
Text by SHIMASHITA Yasuhisa
基本は現行を踏襲。しかし……
2005年、日本におけるレクサス開業と同時にデビューした「レクサスIS」が、いよいよ2013年にフルモデルチェンジを迎える。1月の「デトロイトモーターショー」といわれる、そのワールドデビューに先駆けて、11月のLAにてそのプロトタイプを試すことができたので報告したい。
LA郊外のクローズドコースにて待っていた「ISプロトタイプ」は、車体全面がディテールを覆い隠す渦巻き模様の覆面で覆われていた。車両の詳細についてもすべてがあきらかにされたわけではないが、ボディサイズについては全長4,660mm(現行比75mm増)×全幅1,812mm(同12mm増)×全高1,430mm(変わらず)で、ホイールベースが70mm増の2,800mmとあきらかにされている。見たところで、ウェッジの効いたフォルムにコンパクトなキャビンを載せたフォルムの基本は踏襲されているが、じっくり目を凝らすとヘッドランプの辺りなどは相当大胆な造形になっているようだ。
いっぽう、インテリアは一新されて、ダッシュボードなどは最新のレクサスに共通の横基調の造形とされている。
全体に、より落ちついた印象。とはいえ、メーターパネルに目をやると、そこにはTFT液晶パネルと可動式メーターリングを組みあわせた、「LFA」譲りの“Fメーター”が組み込まれて、未来的かつスポーティな印象をグンと引きあげているのだった。詳細は後述するが、これは「F SPORT」のみの装備である。
見た目だけでなく座った雰囲気としても、着座位置が20mm下げられ、ステアリングの角度が3°起こされるなどの変更によって、ドライビングポジションが劇的に改善されている。またサイズアップ、そしてシートバックの薄肉化などにより、後席スペースも前後長が95mm増となるなど随分と余裕が増した。
しかし何より力がいれられているのは、最近のレクサスがどれもそうであるように走りである。そのために新型ISでは、特に土台となるボディの強化がはかられている。そのためにスポット溶接の打点が増やされるのみならず、LSでつかわれたレーザースクリューウェルディング、接合部分への車両全体でおよそ30メートルにも及ぶ接着剤の塗布といったあたらしい生産技術も積極的に導入しているのだ。
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新型ISプロトタイプをロサンゼルスでテストドライブ(2)
雨上がりのコースにて
サスペンションは、新型GSのものをベースとする。マクファーソンストラット式のフロントはレイアウト変更によりスタビライザー剛性の20パーセントアップを実現。リアはトーコントロールアームの後方配置化などジオメトリーを変更したほか、ダンパーとスプリングの別置化もおこなっている。また操舵フィールを高めるためステアリングギアも刷新された。
そして注目のパワートレインは3種類を用意する。エントリーの「IS250」は、従来通りV型6気筒2.5リッターの直噴エンジンに6段ATの組みあわせとなるが、「IS350」にはV型6気筒3.5リッター直噴エンジンにあらたに8段ATを組みあわせる。さらにあたらしいラインナップとして、直列4気筒2.5リッター直噴エンジンと電気モーターを組みあわせたハイブリッドモデルの「IS300h」も用意されることとなった。
今回の試乗車は、この3つのパワートレインすべての「F SPORT仕様」。内外装をスポーティに仕立てたほか、試乗車ではIS350とIS300hに電子制御式ダンパーのAVS、IS350にはさらにギア比可変ステアリングシステムのVGRSも装備されていた。
まずは基本特性を確認するべくパイロンスラロームを試す。とはいえ速度の乗る速いコースであり、路面も雨もようから半乾きという難しい状況だ。
比較のため用意されていた現行モデルと乗りかえながらチェックすると、まず3グレードすべてに共通しているのは乗り心地がきわめて上質だということだ。具体的には、剛性感たっぷりのボディを土台にサスペンションがしなやかに動き、しっとりとした乗り味をつくりだしている。特にリアの動きのスムーズさは、後席の乗り心地にも随分効いてきそうである。
開発の狙いどおりステアリングフィールは上々で、ナチュラルなターンインも心地良い。ただし、ノーズが入ったそのさきの切れ味はちょっと切れ味が鈍る。フロントがたりないというよりはリアの粘りが勝っているという印象。挙動は軽快ながらタイヤが滑るような領域では動きが速く冷や汗をかく現行モデルにくらべると余裕は段違いだが、クルマの性格からすれば、もう少し曲げやすくてもいいかもしれない。
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新型ISプロトタイプをロサンゼルスでテストドライブ(3)
インパクトは十分
IS250のパワートレインには基本的に変更はないが、空気脈動を利用したサウンドジェネレーターによる快音のおかげで加速感はなかなか心地良い。IS350は全体にひとまわりパワフルなのはもちろん、8段ATの採用が小気味良い、いま風の走行感覚につながっている。特にMレンジでは2段以上でのフルロックアップとブリッピング機能により、アクセル操作に鋭く反応するレスポンスを満喫できる。
そして注目のIS300hはといえば、加速感はやはり滑らかさが際立つ。シフトパドルをつかえば擬似的にマニュアル変速を楽しむこともできるが、基本はあくまで電気式CVTということで、ダイレクト感や切れ味はそこそこ。むしろCVT的なエンジン回転が先行する感覚を極力薄めたというDレンジこそ、意のままになる感覚は強そうに感じられた。
このIS300h、燃費はIS250のほぼ倍ちかい数値を稼ぎだし、欧州モードでのCO2排出量も100g以下が目指されているという。全開加速時など“速い”と感じられる動力性能からすれば、インパクトは十分のはずだ。
あらかた確認できたところで一般道へ。ここでは改めてフラット感たっぷりの乗り心地に感心させられた。
アメリカのハイウェイの良いとはいえない舗装でもまずますなのだから、日本でなら大いに満足させてくれるのではないだろうか。
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新型ISプロトタイプをロサンゼルスでテストドライブ(4)
発売までにどう煮詰められる?
ワインディングロードでは、ターンインの滑らかさが心地良いいっぽうで、そのあとは切ればそれなりに曲がるものの、やはり全体に舵角が大きくなりがちだ。きけば開発陣も、それは十分把握しているという。発売はまだ先だけに、今後まだまだ煮詰めていくというから、そこに期待することにしたい。
また、せっかくドライブモードセレクトをもっているのに、「NORMAL」と「SPORT」あるいは「SPORT+」でもサスペンションの硬さなど、雰囲気がそう大きくはかわらないのも、もったいない。快適なのはいいが、「SPORT+」などでは、もう少し歯応えをだしてもいいのではないだろうか。
面白いのはIS300hが、じつは一番コーナリング中のバランスに優れているように感じられたこと。ハイブリッド用バッテリーが車体後部に積まれているため、前後重量配分が他グレードの53:47あたりから、ほぼ50:50に改善されているというから、そのおかげだろう。
新型ISは、走りはとにかく全体に上質感が増したという印象が際だっている。いっぽう、プロポーションにしてもそうだし、特に走りについては、ちょっと大人しくなり過ぎたかなという感もなくはない。真正面から競合するライバル達を見れば、定番の
「BMW3シリーズ」はもちろん、新顔の「キャデラックATS」なども、非常にアグレッシヴに存在感を主張し、実際にハイレベルな走りを実現してもいるだけに、最後の仕上げで遮二無二攻めてほしいとおもう。
まだ気掛かりもあるが、一方で走りの刺激と質はたかまり、ハイブリッドという強力な、そして魅力的な武器もそなえている。新型IS、完熟状態でのデビューが楽しみが1台であることは間違いない。