ミニ、7番目のモデル、ペースマンに試乗|Mini
MINI Paceman|ミニ ペースマン
MINI発 クーペボディのSUV
ミニ ペースマンを国内試乗
クーペボディをSUVのシャシーに載せたような特異な外見をもつ、ミニ「ペースマン」。現在展開するミニブランドとしては7番目のラインナップとなったこのペースマンに、大谷達也氏が日本で乗った。
Text & Photographs by OTANI Tatsuya
クーペボディは格好いい
ミニの7番目の兄弟として登場した「ペースマン」。けれども、その立ち位置がよくわからないという話をよくきく。
まあ、兄弟が7人にもなれば見わけがつきにくくなるのは当然のことかもしれないが、ペースマンにはペースマンのはっきりとした個性がある。
まず、ペースマンのフロントセクションは基本的にミニ版SUVの「クロスオーバー」とおなじ造形。ただし、ドアの数はクロスオーバーとおなじ“4”ではなく“2”となっており、これにあわせてクーペのような後ろさがりのルーフが採用されている。つまり、SUVベースのクーペボディというのが、ペースマンの本当の姿なのである。
「え? クーペライクなSUVって、ほかにもあったんじゃない?」と気づいたアナタは鋭い。そう、おなじBMWの「X6」がまさにクーペのSUVで、これをBMWは「スポーツアクティビティクーペ」と呼んでいた。というわけで、ミニ ペースマンはプレミアムコンパクトカークラスで世界初のスポーツアクティビティクーペというのがBMWの主張なのである。
では、クーペのSUVって、なにかいいところがあるんだろうか? いやいや、そんなことは悩むまでもなく、ペースマンに実際に触れてみればすぐにわかるはず。まずは運転席に腰掛けてみよう。着座位置はSUVらしく少し高めで、コンパクトなミニにしては見晴らしがいい。ボディはミニ ハッチバックよりも幅方向にちょっぴり広いし、ヘッドクリアランスにも余裕があるから、狭苦しい印象は薄い。やっぱり、SUVのキャビンは開放感が強い。
で、私も男の子の端くれとして、やっぱりクーペボディは格好いいとおもう。ペースマンのルーフはそれほど極端な後ろさがりにはなっていないけれど、それでもクーペならではの躍動感というか軽快感が演出されている。クロスオーバーのようなドッシリ感とはだいぶ印象がことなる。しかも、ペースマンはリアハッチまわりの造形が美しい。
ルーフがさがっているせいでリアエンドがぎゅっと凝縮されているように見えるし、ふくよかな曲面を描くハッチゲートがなんともいえない高級感を醸し出している。そしてその中央を飾るのがミニのトレードマークと「PACEMAN」の文字。はじめてこれを目のあたりにしたときは、素直にカッコイイ! とおもってしまった。
MINI Paceman|ミニ ペースマン
MINI発 クーペボディのSUV
ミニ ペースマンを国内試乗(2)
ターゲットはやや高い年齢層か?
インテリアではクロスオーバーで登場したセンターレールを採用。左右シートが独立している印象を強めるとともに、カップホルダーなどの小物入れを自分好みの位置にスライドできる機能を実現した。また、ドアトリムに大きな楕円形のアクセントを採り入れていることもペースマンの特徴である。
グレードはクーパー、クーパーS、クーパーS ALL4の3タイプ。他のボディに用意されるONEがラインナップされないのは「クーペらしさを表現するため」で、これは日本に限らず全世界共通の設定という。ギアボックスはALL4を含めた3グレードすべてにMTとATを用意。ステアリングは右側のみとなる。価格はクーパー(6MT)の312万円からクーパーS ALL4(6AT)の396万円まで。
試乗したのは、このうちクーパーSの6AT。1.6リッター4気筒ツインスクロールターボエンジンは184ps/5,500rpmと240Nm/1,600-5,000rpmを発揮。しかも、車重はおなじエンジンを搭載するクーパーS ALL4より70kgも軽い1,390kgだから、走りの軽快感がもっとも強いモデルといえる。
率直にいって、ドライビングフィールはほかのミニ クーパーSとよく似ている。スロットルを踏み込むと弾けるように飛び出す瞬発力、それにゴーカートフィーリングと呼ばれるステアリングレスポンスの良さは、いずれもミニならでは。ただし、乗り心地はミニとしては珍しくストローク感があって快適。この点は、他のミニより少し高い年齢層を狙っているようにおもえた。
MINI Paceman|ミニ ペースマン
MINI発 クーペボディのSUV
ミニ ペースマンを国内試乗(3)
young at heart
とはいえ、エンジンのビート感はわりとはっきり伝わってくるし、ロードノイズだって小さくない。ただし、この辺はBMWの技術力をもってすれば簡単に打ちけすことだってできるだろう。
そこまで考えると、ひょっとするとミニはわざとこういうテイストを残しているんじゃないか、という気がしてくる。エンジン音が聞こえて、路面の感触が伝わってくると、自分が自動車という機械を操っているという実感が何倍にも強まる。この、クルマを運転するライブ感をミニは大切にしているんじゃないだろうか?
そしてこの感覚こそ、毎日をアクティブに生きる若者とyoung at heartな人たちからミニが愛され、支持されている最大の理由ではないのか? ペースマンのステアリングを握りながら、私はそんなことを考えていた。
ハッチバックからスタートした2代目ミニは、その後、コンバーチブル、クラブマン、クロスオーバー、クーペ、ロードスター、そしてペースマンと順調に兄弟を増やしてきた。単一モデルのブランドゆえ、ニュースを提供しつづけ、つねに新鮮な印象を与えるにはボディバリエーションを増やすのがいちばんという戦略なのだろう。
さて、つぎに登場するのは8番目の兄弟か? それともフルモデルチェンジを果たした3代目ミニなのか? そんなことが気になるなんて、私自身がミニの術中にはまっているなによりの証拠かもしれない。
MINI Cooper S Paceman|ミニ クーパーS ペースマン
ボディサイズ|全長4,115 × 全幅1,786 × 全高1,522 mm
ホイールベース|2,596 mm
トレッド 前/後|1,525 / 1,551 mm
最低地上高|124 mm
最小回転半径|5.8 m
トランク容量|330-1,080リットル
重量|1,305 kg [1,330 kg]
エンジン|1,598cc 直列4気筒DOHCガソリン
最高出力|135 kW(184 ps)/ 5,500 rpm
最大トルク|240 Nm / 1,600-5,000 rpm
最大トルク(オーバーブースト時)|260 Nm / 1,700-4,500 rpm
トランスミッション|6段マニュアル [6段オートマチック]
サスペンション 前/後|マクファーソンストラット / マルチリンク
ブレーキ 前/後|ベンチレーテッドディスク / ディスク
タイヤ|205 / 55 R17
0-100 km/h 加速|7.5 秒 [7.8 秒]
最高速度|217 km/h [212 km/h]
燃費|6.1 ℓ / 100 km [7.1 ℓ / 100 km](欧州サイクル値 複合)
CO2排出量|143 g/km [166 g / km]
※[]内は6段オートマチックモデル