発表、新型メルセデスAMG GT|Mercedes
CAR / NEWS
2016年10月27日

発表、新型メルセデスAMG GT|Mercedes

Mercedes AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ、日本デビュー

発表、新型メルセデスAMG GT

「SLS AMG」につづく、メルセデスAMG社によるスポーツカーの第二段「メルセデスAMG GT」がついに日本へ上陸。“Handcrafted by Racers”をスローガンに仕立て上げられた、新世代ハイパフォーマンススポーツカーはいかなるものか、会場となった富士スピードウェイから大谷達也がレポートする。

Text by OTANI TatsuyaPhotographs by HANAMURA Hidenori

“AMGフルオリジナルモデル”の第二弾

「私たちはこのクラスのトップに君臨するコンペティターに挑みます。皆さんもよくご存じで、私たちの本拠地からもそう遠くない南ドイツのコンペティターです」

名指しこそしなかったものの、これがポルシェであることは誰の目にも明らかだ。刺激的な発言の張本人はAMGのトビアス・ムーアスCEO。5月8日に富士スピードウェイでおこなわれた「メルセデスAMG GT」発表会でのできごとだった。

327_10_mercedes_amg_gt

富士スピードウェイでの会見に出席したAMGのトビアス・ムーアスCEO

327_03_mercedes_amg_gt

AMGを「メルセデスAMG」、マイバッハを「メルセデス・マイバッハ」と呼ぶサブブランド制が発表されたのは昨年11月に開かれたLAショーでのことだが、これに伴い、たとえば従来はC63AMGだったモデル名は「メルセデスAMG C63」に改められることになった。したがって、ここで紹介するAMG GTも、正式にはメルセデスAMG GTと呼ぶべきモデルである。

AMG GTは、2010年に発表された「SLS AMG」に続く“AMGフルオリジナルモデル”の第二弾。技術的に見ても、新作GTとSLSの共通点は少なくない。たとえばV8エンジンを前車軸とキャビンの間に搭載する、いわゆる“フロントミッドシップ”としたほか、通常は一体化しているエンジンとギアボックスを切り離し、ギアボックスを後車軸上にレイアウトするトランスアクスル方式を採用。さらにボディの大半をアルミ製とした点もSLSと共通だ。

「ポルシェ911」を直接のライバルと見据えながら、なぜAMGはフロントミッドシップ+トランスアクスルにこだわったのだろうか? 昨年9月にAMGの本拠地であるアファルターバッハでおこなわれたワーキングショップでは、このプロジェクトを率いたマルクス・ホフバウアー氏が「本格的なスポーツカーに相応しい性能とドライバーがコントロールしやすいスタビリティを両立できるから」と説明している。

Mercedes AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ、日本デビュー

発表、新型メルセデスAMG GT (2)

ポルシェ911と対極をなす考え方

つまり、リアエンジンよりも基本的なスタビリティが高いフロントエンジンとすることで扱いやすさを実現し、前後重量バランスを均等に近づけるのに有利なトランスアクスルを採用してミッドシップに迫る運動性能を達成しようとしたのだ。

ここで特に注目されるのが、「コントロールのしやすさ」を優先してフロントエンジンを選択した点にある。これは、歴史的にリアエンジン レイアウトにこだわり続けてきたポルシェ911と対極をなす考え方で、911とAMG GTが狙っている顧客層の違いを示しているともいえる。

ちなみに、このホフバウアー氏はどうやらポルシェで「911ターボ」のシャシー開発に関わった人物らしい。つまり、AMGは自分たちのベンチマークを誰よりもよく知るエンジニアに、そのライバルの開発を任せたのである。

いっぽうで、AMG GTではSLSから大きな進化を遂げた部分も少なくない。エンジンはおなじV8でも新開発の4.0リッター直噴ツインターボエンジン“M178”を搭載。SLSのV8 6.3リッター NAから置き換えることで小型・軽量化、高効率化を図り、時代の要請である省燃費性を実現した。

そのパフォーマンスは、上級グレードのGT Sで510ps/650Nm、スタンダードなGTで462ps/600Nmというもの。ライバルとされる911ターボはスタンダード仕様で520ps/660Nm、より高性能な911ターボSは560ps/700Nmだから、数値のうえではAMG GTが敗れるものの、AMG GTには価格という強力な武器がある(詳細は後述)。この辺をどう評価するかも、ポルシェ派とAMG派に分かれるひとつポイントとなりそうだ。

新開発の“M178”は吸気系をVバンクの内側に配置する“ホットインサイドV”レイアウトとすることで、排気側に位置するターボチャージャーからエンジン内に吸気を送り込むインテークマニフォールドまでの距離を短縮してレスポンスを向上させたほか、レーシングカーでは一般的なドライサンプと呼ばれる潤滑方式を採用して低重心化を図っている。

また、AMGの伝統である“ワン・マン、ワン・エンジン”(ひとりのメカニックがエンジンの組み立てを最初から最後まで責任をもって担当する方式。完成後には担当したメカニックの署名が入ったプラックを本体に貼り付ける)を踏襲していることもAMGファンには嬉しい点だろう。

ギアボックスがデュアルクラッチタイプのAMGスピードシフトDCTとなることもSLSから受け継いでいるが、SLSで弱点とされていたリアクションタイム(パドルシフトを操作してから実際にシフトがおこなわれるまでの時間)については、その短縮が図られたという。

サスペンションは前後ともコンベンショナルなダブルウィッシュボーンながら、可変ダンパーシステムのAMGライドコントロール スポーツサスペンションがGT Sには標準装備、GTにはオプションで装着可能となっている。また、ブレーキディスクはどちらもスチールが標準だが、GT Sのみオプションでセラミックブレーキにアップグレードできる。

Mercedes AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ、日本デビュー

発表、新型メルセデスAMG GT (3)

次世代のメルセデス デザイン

スペースフレームやボディの素材としてアルミが広範に採用されているのはSLSと同様ながら、スチールやマグネシウムを適材適所で用いることで前/後=47/53とフロントエンジンながらリア寄りの重量配分を実現している。ちなみに、アルミ・ボディはSLS同様、サプライヤーからAMGに対して供給されるが、その供給元には新たにティッセンクルップ(ThyssenKrupp)が選ばれた。

デザイン面では、スポーツカーでは古典的ともいえるロングノーズ ショートデッキのプロポーションをSLSに続いて採用しているが、これはフロントミッドシップを選択している以上、ほかに選びようがないともいえる。もっとも、エクステリアの印象はSLSのやや無骨で力強いタイプのものから、エレガントな曲面を多用した女性的なタイプに大きく路線が変更された。

これは、AMG GTがメルセデスのチーフデザイナーであるゴードン・ワーグナー氏の指揮下でデザインされたことを象徴するものだ。インテリアもセンターコンソール周りをなだらかにスラントさせた形状となっているが、これも実は次世代のメルセデス デザインを示唆するものだ。

会場となった富士スピードウェイでは発表会後に短時間のサーキット走行に臨むチャンスが得られたが、ミシュラン パイロット スーパースポーツを履いているためもあって、AMGの主張どおり限界領域が掴みやすい点が印象に残った。

今回発表された価格はAMG GTが1,580万円でAMG GT Sは1,840万円というもの(デリバリーの開始時期はGT Sが5月中旬でGTは9月以降の予定)。ライバルの911ターボは2,128万円、911ターボSは2,539万円だから、AMG GTのほうが600-800万円も安いことになる。

2+2の4人乗りとなるポルシェ911に対してAMG GTは純粋な2シーターとなるものの、テールゲートからアクセスできるラゲッジスペースは容量が350リッターと実用的。これで本当に運動性能が911ターボ並みならば、ポルシェにとっては強力なライバル登場といえるだろう。

080507_eac_spec
Mercedes AMG GT S|メルセデスAMG GT S
ボディサイズ|全長 4,550 × 全幅 1,940 × 全高 1,290 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,680 / 1,650 mm
重量|1,670 kg
エンジン|3,982 cc V型8気筒 直噴 ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5:1
最高出力|375 kW(510 ps)/6,250 rpm
最大トルク|650 Nm/1,750-4,750 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(AMGスピードシフトDCT-7)
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|265/35R19 / 295/30R20
0-100km/h加速|3.8 秒
最高速度|310 km/h
トランク容量|350 リットル
価格|1,840万円

Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT
ボディサイズ|全長 4,546 × 全幅 1,939 × 全高 1,287 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,686 / 1,651 mm
重量|1,615 kg
エンジン|3,982 cc V型8気筒 直噴 ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5:1
最高出力|340 kW(462 ps)/6,000 rpm
最大トルク|600 Nm/1,600-5,000 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(AMGスピードシフトDCT-7)
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|255/35R19 / 295/35R20
0-100km/h加速|4.0 秒
最高速度|304 km/h
トランク容量|350 リットル
価格│1,580万円

メルセデスコール
0120-190-610

           
Photo Gallery