Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 試乗
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2015年2月26日

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 試乗

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG

最強のガルウィングAMG(1)

ガルウィングドアを備え、571psエンジンを搭載したメルセデス・ベンツ SLS AMGにジャーナリスト 小川フミオが試乗した。

文=小川フミオ写真=OPENERS

AMG発のオリジナルスポーツカー

SLS AMGは、メルセデス・ベンツの高性能車を担当するAMGが、既存のメルセデスをベースにせずつくりあげた初のモデル。それがスポーツセダンでなく、純粋なスポーツカーだったというのは、これまでにない車種による市場拡大がメルセデスの意向なのだろう。

SLS(2,430万円)は価格からすると、たとえばCL65AMG(3,020万円)よりぐっと安い。でもアルミニウムなど軽量素材をふんだんに使ったシャシーをはじめ、すべてオリジナル。エンジンにかんしても、いままでE63AMGなどに搭載されていた6.3リッターV8をベースに120カ所以上手をいれたとされる。

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 20

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 03

エンジンにおけるとりわけ大きな特徴は、ひとつは自然吸気でこれだけのパワーを得ていること。さらに、潤油系がスポーツカーなみにドライサンプ化されたのも注目だ。これで重心高も下がり、コーナリング能力はさらに高まっている。最高出力は420kW。最高速は317km/h。一方の燃費はリッター7.6kmと高い水準だ。

実際にSLSに接すると、全幅が1,940mm、全高が1,260mmというだけあって、かなり幅広く、かなり低い印象。V8エンジンをおさめたノーズはとりわけ長く、キャビンはコンパクト。昔のスポーツカー的なプロポーションにしようという、デザイン上の「遊び」もあるのだろうか。

ドアロックを解除すると、ドアハンドルがポップアップする。左右ドアとも各2本のダンパーをもち、ドアハンドルでもち上げるようにすると、軽く開く。路上でドアが開くとき、ガードレールのある歩道側では、通常の前ヒンジドアで乗り降りができるのとおなじぐらいのスペースを考えておくといいそうだ。

メルセデス・ベンツ初のデュアルクラッチトランスミッションを採用

乗りこむのに苦労はない。が、スカートの女性はちょっといやがるかもしれない。以前、フェラーリのエンツォも、オリジナルデザインはSLSのように高かったとか。しかし、社長のガールフレンドがミニスカートでやってきて、「これでは乗れないわ」と言ったので、急きょドアまわりのデザインをやり直したとか。そんなエピソードはSLSにかんしてはなかった模様だ。

インテリアはメルセデスらしさを随所に残しながら、シートをふくめ、かなり特別だ。とりわけ、メルセデス初のデュアルクラッチシステムを採用したトランスミッションのための、短いシフトレバーと、エンジンレスポンスやダンピングの硬軟を変更できるAMGドライブユニットシステムのコントロールユニットが眼を惹く。

AMGドライブユニットシステムは、ノーマルモード、スポーツモードが2種類、サーキットモードと選択可能。さらにその下にハンドルの重さやダンパーの硬さやエンジンレスポンスなど、自分好みの組み合わせをメモリーできるAMGと書かれたボタンも備わる。

試乗車は、「AMGパフォーマンスパッケージ」(175万円のオプション)を装着していた。内容はカーボンセラミックブレーキ、スポーツサスペンション、スポーティなステアリングホイール、フロント19インチ、リア20インチの鍛造アルミホイールからなる。なので乗り心地はノーマルモードでもかなり硬め。路面の凹凸をよく拾った。しかしそのぶん操舵に対する応答性は抜群で、ごくわずかな切れ角で車両が向きを変える。しかもトルクは低回転域から高回転域まで途切れることなくふんだんに出てくるので、わかりやすくもおもしろい。

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG

最強のガルウィングAMG(2)

コンマ1秒を記録する迅速な変速

スタンダード版は乗り心地もややソフトで、市街地でも洗練された乗り味を見せるというが、よりスポーティな仕様も、これはこれで運転の楽しみというバリューがある。握りのよい立体形状のグリップをもつ特別製のステアリングホイールを握りながら、大きな吸気音がコクピットに充満するのを楽しみ、ホールドのよい硬めのレザーシート(フルレザー仕様は36万円のオプション)に身をあずけると、「これがメルセデスだろうか?」と思えるほど、とんがった仕上がりに感心する。

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 18

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 17

デュアルクラッチ式のトランスミッションは、最短でコンマ1秒と言われるとおりで、変速はすばやく、かつシフトショックはほとんど感じられなかった。走りに興奮していたせいだろうか(笑)。とにかく5,000rpmあたりの、おもしろいぐらいアクセルへの反応がよい回転域を常用するのに、ダイレクト感の強い新世代のトランスミッションは強い味方だ。

オーナーにはすべてがうれしくなる、凝った設計もSLSの特徴だ。エンジンは前車軸より後方に搭載したフロントミドシップ。前後の重量配分を考えて、トランスミッションはリアに移して、いわゆるトランスアクスル方式を採用。これで前後重量配分は47対53。プロペラシャフトは約4kgの超軽量カーボンファイバー製。さらにアルミ鋳造モノブロック製トルクチューブが採用されている。

ライバル車は911 ターボS、458 イタリア

2,430万円という価格で比べると、ポルシェなら530psのエンジンにフルタイム4WDシステムを組み合わせた911ターボS(2,365万円)が競合だろう。フェラーリなら570psの458イタリア(2,830万円)だろうか。なにはともあれ印象ぶかいのは、これらの純正スポーツカーと真剣に比較検討できるスポーツカーをメルセデスがつくったことだ。

シャシーは、キャビンがモノコックシェルのようにつくられ、これにスペースフレームを組み合わせたもの。素材にアルミニウムの削り出し材を使うなど、かなり贅たくなつくりだ。結果、シャシー単体で300kgを切るという、軽量化に成功している。

メルセデスのプロダクトをベースにしたAMG製品もかなりよいできで、自動車好きには頼りになるブランドだと、SLSを操縦するとしみじみ感じいるのだった。

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG

ボディ|全長4,640×全幅1,940×全高1,265mm
ホイールベース|2,680mm
車両重量|1,710kg
エンジン|6.2リッター V型8気筒 DOHC
最高出力|420kW(571ps)/6,800rpm
最大トルク|650Nm(66.3kgm)/4,750rpm
駆動方式|RWD
トランスミッション|7段デュアルクラッチ
価格|2430万円

Mercedes-Benz SLS AMG|メルセデス・ベンツ SLS AMG 04

           
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