V8ツインターボを搭載した「AMG C 63」|Mercedes-Benz
CAR / MOTOR SHOW
2015年5月27日

V8ツインターボを搭載した「AMG C 63」|Mercedes-Benz

Mercedes-AMG C 63|メルセデス AMG C 63

W205型CクラスにAMG GT 譲りのV8ツインターボを搭載

メルセデスAMG C 63、パリでデビュー

すでにお伝えしたように、メルセデス・ベンツは、新型となるW205型「Cクラス」に、AMGモデル「C 63 AMG」を追加した。注目のパワーユニットは、「メルセデス AMG GT」譲りの新型V8ツインターボである。トップモデルでは、AMG GTに並ぶ最高出力510ps(375kW)/5,500-6,250rpmと最大トルク700Nm/1,750-4,500rpmを発揮。これはすなわち、史上最強の「Cクラス」の誕生でもある。

Text by SAKURAI Kenichi

AMGのスタンスも変化

先代モデルに搭載されたNAの6.2リッターV8の代わりに新型「C 63」搭載されるのは、「メルセデス AMG GT」譲りの4.0リッターV8ツインターボ エンジン。「C 63」では、最高出力476ps(350kW)/5,500-6,250rpm、最大トルク650Nm/1,750-4,500rpmを発揮し、よりパワフルな「C 63 S」では、510ps(375kW)/5,500-6,250rpmと700Nm/1,750-4,500rpmという、AMG GTに並ぶスペックを得ている。

排気量は前作とくらべ、2リッター以上も小さくなったが、ベースモデルといえる「AMG C 63」でさえ最高出力は19psアップを果たし(2013年モデルのC 63 AMG比)、ハイパフォーマンスバージョンともいうべき「AMG C 63 S」においては、W204の最終特別仕様の「C 63 エディション507」との比較でも、3ps(2kW)のアドバンテージをもつ。

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

ツインターボ化されているとはいえ、わずか4.0リッターの排気量でこの出力とは、見事であるというしかない。「Eクラス」がベースとなる「E 63 AMG」でも、すでに排気量5.5リッターのツインターボにダウンサイジングしているが、これはそれよりもさらに一歩進んだ、ダウンサイジングのバージョンアップといえるだろう。

“M177”と呼ばれるこのパワーユニットは後ほど詳しく報告するが、その前に注目しなくてはならないトピックスがある。それは車名だ。これまでAMGモデルは、フラッグシップモデルたる「SLS AMG」を除き、すべてベースモデル名にエンジン出力に相当する排気量の数字をくわえ、さらにそこに「AMG」の名を冠するというルールがあった。例えば先に出たE 63 AMGしかり、先代となるW204ベースの「C 63 AMG」しかり、である。

しかし今回発表されたW205ベースのAMGはちがう。その正式車名を、「メルセデス AMG C 63」という。従来であれば、「メルセデス・ベンツ C 63 AMG」と呼ぶべき車名が、根本から変わり、「ベンツ」と入るべき位置が「AMG」に差し替えられていることにお気づきだろうか。この新ルールともいうべき名称変更は先に登場した「メルセデス AMG GT」でも同一である。

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名称の変更が物語るもの

車名の変更が何を意味するのか。答えはおそらく、ふたつある。

ひとつ目は、メルセデスでは、通常のラインナップを「ベンツ」に、ハイパフォーマンスバージョンを「AMG」へと明確にわけ、今後ふたつの大きなカテゴリーをもつブランドプランを推進するというものである。メルセデス・ベンツの高性能モデルがAMGなのではなく、メルセデスは、「ベンツ」と「AMG」というキャラクターが明確に異なる2ラインナップに別れることになる、という意味である。似ているようで、これまでとはその意味と意義が大きくことなる。

もうひとつは、AMGの独立性や特別性をある程度保ちながら、よりメルセデス本体にちかい場所に、「AMG」を置こうという戦略である。簡単にいえば、AMGの取り込みである。その端的な例は、メルセデス AMG GTですでに表面化している。

Mercedes-AMG C 63|メルセデス AMG C 63 S

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S

メルセデス AMG GTのデザインは、メルセデスのチーフデザイナー、ゴードン・ワーグナー氏が監修。よって独創的だったSLS AMGよりもAMG GTではメルセデスのもつ最新デザインにちかく、しかるべくメルセデスのデザイン言語も採用されている。本国で先月開催されたAMG GTの発表会では、プレゼンテーションの際に「AMGの研究開発は、現在ではメルセデス・ベンツと完全に統合されている」との発表もなされている。開発コストの削減やスピードアップを図るためにも、研究開発の統合は必要不可欠なのだろう。

と、若干前置きが長くなってしまったが、これらを踏まえてみていくと、先日発表されたメルセデスの頂点に立つ(重ねていうが、ベンツの頂点ではない)新世代スポーツクーペ「メルセデス AMG GT」を筆頭とした、「メルセデス AMG」の第2弾という位置づけとあらたな戦略が、この「AMG C 63」にも見えてくる。

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メルセデスAMG GT由来のM177エンジン

フロントに積まれるエンジンは、M177型と呼ばれ、もちろんこれは「メルセデス AMG GT」に搭載されているM178型をベースとしている。Vバンクの中に2基のターボチャージャーを搭載し、スプレーガイド式燃焼とガソリンピエゾ直接噴射などの最先端技術を盛り込みユーロ6排出ガス基準を満たすなど、多くのメカニズムを共有するのは「AMG」ファミリーならでは、である。

このエンジンも、AMGの伝統に則り「ワンマン、ワンエンジン」のポリシーを貫く。組み立てから完成にいたる複雑な作業を、ひとりのエンジニアが担当。責任をもって完成に導くのだ。

総排気量は「AMG C 63」も「AMG C 63 S」も、同様に3,982cc。AMG C 63が最高出力476ps(350kW)/5,500-6,250rpm、最大トルク650Nm/1,750-4,500rpm、もう一方のAMG C 63 Sでは510ps(375kW)/5,500-6,250rpmと700Nm/1,750-4,500rpmと、「AMG GT」を50Nm(5.1kgm)上まわる最大トルク値を誇る。これはAMG GTの車重が1,540kgと軽量であるのにたいして、AMG C63 Sでは1,665kgと、100kg以上も重いことが関係していると予想可能だ。

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

リミッターにより最高速度は250km/hにおさえられているものの、0-100km/h加速はAMG C 63で4.1秒、AMG C 63 Sは4.0秒フラットというデータが発表されている。しかし、こうしたパフォーマンスを向こうに、特筆すべきは、その燃費効率の良さである。

従来あったM156型と呼ばれる「C 63 AMG」に搭載されていたエンジンにくらべ、燃料消費量において著しい減少を実現。6.3リッターV型8気筒自然吸気エンジンとの数値比較では、約32パーセント少ない燃料消費率となる、100kmあたり8.2リッター(リッターあたり12.19km、NEDC値)もの低燃費をたたき出す。この大幅な燃費性能の向上では、60km/hから160km/hのあいだでアクセルをオフしたさい、AMGスピードシフトMCT 7段スポーツトランスミッションのクラッチがリリースされエンジンパワーが駆動系から切り離される、いわゆるコースティングモードが有効に働いていることも知っておくべきだろう。

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排気サウンドへのこだわり

AMG C 63とAMG C 63 Sは、それぞれ排気フラップ付きのスポーツ排気システムを採用。排気フラップはデュアルパイプとメインマフラーのあいだに置かれ、AMGダイナミック セレクト ドライブプログラムに応じて、エキゾーストノートが変化する。さらに、オプションとしてパフォーマンス排気システムを用意しているのもあたらしい。

すなわちこれは、排気サウンドの重要性を、スポーツカーブランドとして認識している証でもある。パフォーマンス排気システムは、3つのモードに切り替え可能な排気フラップが付き、“コンフォート ドライブプログラム”では低く快適性を犠牲にしないボリュームで、“スポーツ+”と“レース”モードでは、ツーリングレースマシンさながらの刺激的なV8サウンドをもたらすという。ドライブプログラムを介して設定することにくわえて、スイッチを押すだけで、いつでもこれらのサウンドを個別に楽しむことができる。

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

また、エンジンの搭載方法は、AMG GTとおなじく、エンジンやトランスミッションユニットからの振動を低減し、快適さとスポーティなハンドリングに寄与するダイナミックマウント方式をAMG C 63 Sに標準採用。通常のソフトなエンジンマウントは、騒音や振動をシャットアウトし快適性を向上させるが、このダイナミックマウント方式は、ステアリングレスポンスの向上や、ダイレクトなハンドリングが感じとれるのだという。パワーユニットの小型化によるドライブトレインの質量削減もまた、コーナリングの際には有効に働く。

組み合わされるトランスミッションは、お馴染みとなったAMGスピードシフトMCT 7段スポーツトランスミッションだ。“コントロールド エフィシェンシー”、“スポーツ”、“スポーツ+” そして“レース”モードでそれぞれシフトスピードを変え、シチュエーションにあったドライビングを提供する。モードのセレクトは、コクピットに用意されるダイヤルスイッチで簡単におこなえる。さらにこれらにくわえ、“テンポラリーM”モード(パドルシフト操作のみ)も備え、よりダイナミックなドライビングに寄与する。

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注目の足まわり

足まわりでは、減衰力を3段階に調整可能なAMG ライド コントロール スポーツサスペンションと、AMG C 63 Sに採用された、電子制御式リア ロッキング ディファレンシャル(AMG C 63は機械式)に注目したい。

AMG ライド コントロール スポーツサスペンションは、敏捷性と高いコーナリングスピード、そして快適性をバランスさせたもので、軽量なアルミニウム製となっている。ドライバーは、サーキット走行にふさわしいスポーツ性能と、優れた長距離走行にマッチする快適性重視のセッティングのあいだから、3つ段階でサスペンション特性を任意に変化させることができる。

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S

いっぽうの電子制御式リア ロッキング ディファレンシャルは、コーナリング時における内輪の滑りを軽減。その結果、コーナー脱出をおこなうために素早く加速することができ、高速時には安定性を維持させる働きをもつ。また、停止状態からの発進の際にトラクションを向上させる効果も得られる。機械的と比較してより細かく調整制御がおこなえるほか、「ESP ON」、「ESP OFF」、「スポーツ ハンドリング モード」と、3段が用意されるESPともネットワーク化し、ダイナミクスレベルの向上に貢献している。

これらを受け止めるのは、フロント245/40R18、リア265/40R18サイズのタイヤと、チタングレーのカラーリングを標準としたフロント8.5×18インチ、リア9.5×18インチサイズの10スポークデザインのアルミホイール。AMG C 63 Sでは、フロント245/35R19、リア265/35R19サイズのタイヤと、8.5×19(フロント)および9.5×19に5ツインスポークのポリッシュド ホイールを採用する。高性能セラミック コンポジット ブレーキシステムは、AMG C 63 S専用オプションとなる。

 

 

Mercedes-AMG C 63|メルセデス AMG C 63

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恒例の新型限定仕様、エディション1も設定

デザインは、スポーティのひとことでベースモデルとは完全に趣を異にしている。AMG専用の“ツイン ブレード”デザインを採用したラジエーターグリルをはじめ、“Aウィング”と呼ばれる冷却用エアの取り込みを計算したフロントスポイラー、フロントフェンダー、パワードームと称される盛り上がったボンネットフード、リアディフューザーはAMGのオリジナル。これらはすべてモータースポーツからインスパイアされたデザインであるという。

こうした装備の採用によって、ボディ全長はベースのW205に比べ54mm延長されている。ついどうしてもスポーティなパーツやルックスに目を奪われがちだが、じつはホワイトボディの段階からAMG専用モデルとしてボディが強化されているのも特徴だ。500ps強のパフォーマンスにたいするボディ剛性アップが、すでに生産時から考慮され、実践されているというわけだ。

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデス AMG C 63 S

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデス AMG C 63 S ステーションワゴン

いっぽうのインテリアは、ファーストクラスの素材と緻密な組み立てで、これまでにないプレミアム感をもたらしている。エクステリアと同様に、ここでも「AMG C 63 S」と「AMG C 63」はことなる素材やデザインが与えられた。オプションで結晶塗装のグレー色を採用したダッシュボードや、ブラックのカラーリングとなるイタリアはアルティコ社製の人工皮革のほか、アルミニウム製のトリム、AMG専用IWCアナログ時計等もセレクトできる。

ローンチ記念モデルとして、ソフトホワイト、デジーノダイヤモンドホワイトブライト、イリジウムシルバーメタリック、パラジウムシルバーメタリック、オブシディアンブラックメタリック、AMG専用塗装仕上げデジーノ イリジウム シルバー マグノというボディカラー6色をラインナップする「AMG C63 エディション1」も登場する。

セダン、ステーションワゴンの両車種に用意されるこのモデルは、赤いリムとブラックマットカラーのクロススポークデザイン鍛造アルミホイール(フロント8.5×19インチ、リア9.5×19インチ)に、フロント245/35R19、リア265/35R19サイズのタイヤを組み合わせたほか、ナイトパッケージ(Aウィング、高光沢トリムブラック、高光沢のサイドミラーハウジング、ブラック高光沢仕上げの窓枠など)、ブラッククローム ツインエンドパイプ フェアリング、ラジエーターグリルとウイングミラー上のアクセント(レッドデカール) 、ダイヤモンドパターンに赤のコントラストステッチを採用したブラック ナッパレザー パフォーマンスシート、レッドのデジーノ シートベルト、ダイナミカ マイクロファイバー パフォーマンス ステアリングホイールなどなど、数々の特別装備を採用している。

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Mercedes-AMG C 63|メルセデスAMG C 63

Mercedes-AMG C 63 Estate|メルセデスAMG C 63 ステーションワゴン

車両重量|(セダン)1,640 kg  (ワゴン)1,710 kg

エンジン|3,982 cc V型8気筒 ツインターボ

圧縮比|10.5

最高出力| 350 kW(476 ps)/ 5,500-6,250 rpm

最大トルク|650 Nm/ 1,750-4,500 rpm

トランスミッション|AMGスピードシフトMCT 7段スポーツトランスミッション

駆動方式|FR

サスペンション 前/後|4リンク / マルチリンク

タイヤ 前/後|245/40R18 / 265/40R18

トランク容量|490-1,510 リットル

0-100km/h加速|(セダン)4.1 秒  (ワゴン)4.2 秒

最高速度|250 km/h

燃費(NEDC)|(セダン)8.2 ℓ/100km  (ワゴン)8.4 ℓ/100km

CO2排出量|(セダン)192 g/km  (ワゴン)196 g/km

Mercedes-AMG C 63 S|メルセデスAMG C 63 S

Mercedes-AMG C 63 S Estate|メルセデスAMG C 63 S ステーションワゴン

車両重量|(セダン)1,655 kg  (ワゴン)1,725 kg

エンジン|3,982 cc V型8気筒 ツインターボ

圧縮比|10.5

最高出力| 375 kW(510 ps)/ 5,500-6,250 rpm

最大トルク|700 Nm/ 1,750-4,500 rpm

トランスミッション|AMGスピードシフトMCT 7段スポーツトランスミッション

駆動方式|FR

サスペンション 前/後|4リンク / マルチリンク

タイヤ 前/後|245/35R19 / 265/35R19

0-100km/h加速|(セダン)4.0 秒  (ワゴン)4.1 秒

最高速度|250 km/h

燃費(NEDC)|(セダン)8.4-8.2 ℓ/100km  (ワゴン)8.6-8.4 ℓ/100km

CO2排出量|(セダン)195-192 g/km  (ワゴン)200-196 g/km

           
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