試乗、メルセデスAMG GT|Mercedes-AMG
CAR / IMPRESSION
2016年10月27日

試乗、メルセデスAMG GT|Mercedes-AMG

Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ

試乗、メルセデスAMG GT

あらたなメルセデスのスポーツ フラッグシップとして、パリサロンでワールドプレミアを飾ったメルセデスAMG「GT」。あらたなるサブブランド「メルセデスAMG」をひっさげ、名実ともに“メルセデス・ベンツ”とは別格の存在であることを明確にする。そのAMG GTを、アメリカはサンフランシスコ市街から郊外、そしてサーキットまで試乗。満を持して登場したメルセデスの最新スポーツカーの仕上がりを、山崎元裕氏がリポート。

Text by YAMAZAKI Motohiro

非常に斬新で魅力的な第一印象

メルセデス・ベンツのプロダクションモデルラインナップに、ふたつのサブブランドが誕生することになった。ひとつは「メルセデスAMG」、そしてもうひとつは「メルセデス・マイバッハ」だ。前者はパフォーマンス、そして後者はラグジュアリーを究極の域にまで追求したモデルということになるのだろう。

こんかいカリフォルニアでステアリングを握ったのは、メルセデスAMGの頂点をきわめる新型スーパースポーツ、「AMG GT」シリーズの高性能仕様となる「GT S」。ベーシック仕様の「GT」とのちがいは多く、フロントに搭載されるエンジンは、いずれも3,982ccのV型8気筒ツインターボだが、過給圧設定などチューニングの差によって、最高出力&最大トルクは、GT Sでは510ps&650Nmとなるが、いっぽうのGTでは462ps&600Nmとなることなどは、スペックシートにおけるもっとも象徴的な例だ。

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S

2014年秋に開催されたパリサロンで、すでにファーストコンタクトを果たしていたAMG GTシリーズだが、あらためてカリフォルニアの地で見るそのエクステリアは、最新のスーパースポーツとして、非常に斬新で魅力的な第一印象を抱かせてくれた。

ロングノーズとコンパクトなキャビンのデザインは、それだけでも走りへの期待を大きく高めてくれるし、前作の「SLS AMG」で採用されたガルウイングドアが継承されなかったことも、このスムーズでエモーショナルな造形を見れば、それに対して否定的な意見を唱えることはできない。ダイムラーのデザイン担当副社長ゴードン・ワグナー氏は、AMG GTのデザインを「美と知性の完璧な融合」と表現するが、この言葉を納得させるだけの説得力が、そのエクステリアデザインにはあると報告できる。


Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ

試乗、メルセデスAMG GT (2)

いままでにない内装

インテリアのデザインもじつに斬新だ。とくに印象的なのは、キャビンを左右に二分するワイドなセンターコンソールに設けられたコントロールパネル。V型8気筒エンジンをモチーフに、左右各々に4個ずつのスイッチをレイアウトするなど、そのフィニッシュはこれまでのどのAMGモデルにも見られなかったもの。

ただしこのコントロールパネルは、いかにもデザイン優先といった印象。機能性を考えた場合には、ルーフライナーに一部のスイッチがレイアウトされていることも含め、メルセデスの名を掲げるモデルらしからぬ、不満を感じてしまったのも正直なところだ。

このコントロールパネルで、走りのキャラクターを変化させるというもっとも重要な役割を担うのは、左上に配置される「AMGダイナミックセレクト」のスイッチだ。「コンフォート」、「スポーツ」、「スポーツプラス」、「インディビジュアル」、そしてGT Sではさらに「レース」の各モードが選択できる。それによって7段DCTやステアリング、スロットルレスポンス、サスペンション、エグゾーストシステム、可変式リアスポイラー、ESPなどの制御は走行シーンに応じて最適化される仕組み。

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S

大排気量のNAのようなV8ツインターボエンジン

今回用意されたテストコースは、サンフランシスコの市街地からのスタートだったので、まずはアイドリングストップも機能する「コンフォート」モードをチョイスし、ドライブをスタートすることにした。

AMG GTというスーパースポーツが、とりわけその高性能仕様であるGT Sが、きわめてスパルタンなモデルであることは、スタートした直後からダイレクトに伝わってきた。

その直接の理由となったのは、ほかのAMGモデルにはない硬質な乗り心地。いま自分がステアリングを握っているモデルは、特別ななかにも特別なAMGなのだと、改めて覚悟を決める。そのいっぽうでボディー剛性そのものには、まったく不満を感じさせないのは、さすがにメルセデスAMGの作といった印象だ。

前作のSLS AMGでは自然吸気エンジンを採用したメルセデスAMG。AMG GTシリーズに搭載されたV型8気筒エンジンは、ツインターボのシステムをVバンクの内側にレイアウトするという独特なものだ。「ホットインサイドV」とも呼ばれるこのエンジニアリングは、エンジン全体を小型化するばかりではなく、ターボのレスポンス向上、排出ガスの低減など、さまざまなメリットをもつ。

実際にGT Sでそのフィールを味わっても、まず感じるのはナチュラルの一言に尽きるキャラクター。感覚としては大排気量の自然吸気エンジンとほとんど変わるところはない。

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S


Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ

試乗、メルセデスAMG GT (3)

ワインディングからサーキットへ

サンフランシスコの市街地を抜け、海沿いのハイウエイからワインディングロードを目指す。このセクションでは「スポーツ」、「スポーツプラス」という走行モードをチョイスしてみたが、トルクバンドがワイドなエンジンと、これらのモードでもじゅうぶんな速さのシフト制御を見せる7段DCTのコンビネーションは、じつに魅力的であり、また官能的だ。

GTの機械式に対して、電子制御デファレンシャルを採用するGT Sは、ワインディングではとてもリズミカルな、そしてもちろんハイスピードのコーナリングを実現してくれる。47:53という前後重量配分は、これもまたSLS AMGからの伝統的なセッティング。さらに低重心化が図られたことで、コーナリング時の安定感は飛躍的に高まったという印象を受ける。

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S

Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT

今回の試乗プログラムの最後には、ラグナセカ レースウエイでのサーキット走行も用意されていた。ただし残念ながら当日のコンディションはウエット。だがそれは逆に、おなじ挙動を、ドライ時とは比較にならないほどに低い速度域で検証できるチャンスなのだと覚悟を決め、これまでオンロードでは使用しなかった「レース」モードでの走りをためす。

事前の想像をはるかに超える、いやそれまでのオンロードで得ていた好印象を、さらに上書きするほどに素晴らしい世界が、このサーキット走行にはあった。とくに印象的だったのは、さらにリニアな感触が強まるステアリングの動き。メルセデスAMGのエンジニアが、積極的なターンインというものを相当に強く意識していることが、コーナーの進入から脱出までの一連の動きにはあらわれていた。

ちなみにレースモードを選択しても、ESPはスポーツハンドリングモードを維持するから、さらに自分自身の意思でESPスイッチからその機能をキャンセルしないかぎりは、じゅうぶんなコントロールの楽しみを与えつつも、車体の側はスタビリティを制御しつづけるから安心だ。


Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT

メルセデスの新世代スーパースポーツ

試乗、メルセデスAMG GT (4)

ブランドバリューをダイレクトに表現するスーパースポーツ

ラグナセカに用意されていた、サーキット走行用のGT Sは、さまざまな装備を満載した、特別仕様の「ファースト エディション」だった。オンロードを試乗してきたGT Sの中にも、何台かはカーボン セラミックブレーキの装着車があったが、スタンダードなスチールブレーキをもつモデルとの差は、制動力のみならず、コーナリング時の動きにも意外におおきなちがいを生み出していることが印象的だった。

オンロードでディスクにじゅうぶんな熱が入るまでのタッチには、このタイプのブレーキの宿命で若干の不満が残るが、サーキットでの圧倒的な制動力や耐フェード性、そして何よりフットワークの軽さを味わうと、それはぜひとも選択したいオプション装備となる。

Mercedes-AMG GT First Edition|メルセデスAMG GT ファースト エディション

Mercedes-AMG GT First Edition|メルセデスAMG GT ファースト エディション

それにしても、メルセデスAMGはなんと魅力的で、またみずからのブランドバリューをダイレクトに表現したスーパースポーツを生み出してくれたのか。

AMG GTシリーズは、SLS AMGにつづくモデルではあるが、サイズやプライスを考えても、それは後継車としての役を担うモデルではない。プライスレンジから考えれば、直接のライバルはもちろんポルシェ「911」シリーズということになるだろう。

新型車としての斬新さ、そしてその流麗なスタイルに包み込まれた最新のメカニズム、さらにはイタリアン スーパースポーツにも共通する、官能的かつ情熱的な走り。それはあるいはスーパースポーツの世界における、ファーストチョイスとなる可能性を秘めたニューモデルといえるのかもしれない。日本の地で、ふたたびそのステアリングを握る日が楽しみだ。

Mercedes-AMG GT S|メルセデスAMG GT S
ボディサイズ|全長 4,546 × 全幅 1,939 × 全高 1,288 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,680 / 1,651 mm
重量|1,570 kg
エンジン|3,982 cc V型8気筒 直噴 ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5:1
最高出力|375 kW(510 ps)/6,250 rpm
最大トルク|650 Nm/1,750-4,750 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(AMGスピードシフトDCT-7)
ギア比|1速 3.40
2速 2.19
3速 1.63
4速 1.29
5速 1.03
6速 0.84
7速 0.63
最終減速比|3.67
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|265/35R19 / 295/30R20
0-100km/h加速|3.8 秒
最高速度|310 km/h
燃費(NEDC)|9.4 ℓ/100km(およそ10.6km/ℓ)
CO2排出量|219 g/km
トランク容量|350 リットル
価格(19パーセントの付加価値税込み)|13万4,351ユーロ

Mercedes-AMG GT|メルセデスAMG GT
ボディサイズ|全長 4,546 × 全幅 1,939 × 全高 1,287 mm
ホイールベース|2,630 mm
トレッド 前/後|1,686 / 1,651 mm
重量|1,540 kg
エンジン|3,982 cc V型8気筒 直噴 ツインターボ
ボア×ストローク|83.0 × 92.0 mm
圧縮比|10.5:1
最高出力|340 kW(462 ps)/6,000 rpm
最大トルク|600 Nm/1,600-5,000 rpm
トランスミッション|7段デュアルクラッチ(AMGスピードシフトDCT-7)
ギア比|1速 3.40
2速 2.19
3速 1.63
4速 1.29
5速 1.03
6速 0.84
7速 0.63
最終減速比|3.67
駆動方式|FR
サスペンション 前/後|ダブルウィッシュボーン / ダブルウィッシュボーン
ブレーキ 前|ベンチレーテッドディスク
ブレーキ 後|ベンチレーテッドディスク
タイヤ 前/後|255/35R19 / 295/35R20
0-100km/h加速|4.0 秒
最高速度|304 km/h
燃費(NEDC)|9.3 ℓ/100km(およそ10.8km/ℓ)
CO2排出量|216 g/km
トランク容量|350 リットル
価格(19パーセントの付加価値税込み)|11万5,430ユーロ

           
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