MOVIE|ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞『嘆きのピエタ』
MOVIE|昨年のベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞
鬼才キム・ギドク監督が贈るサスペンス・ドラマ『嘆きのピエタ』
昨年開催された第69回ベネチア国際映画祭で最高賞となる金獅子賞を受賞した、韓国映画界の鬼才、キム・ギドクによる『嘆きのピエタ』が6月15日(土)からBunkamuraル・シネマほかで全国順次ロードショーされる。
Text by YANAKA Tomomi
エモーショナルかつ静謐な“キム・ギドクワールド”
愛ゆえに強くも脆くもなる人間の姿を、キム・ギドク監督ならではの映像世界でエモーショナルかつ静謐に描き出す。『嘆きのピエタ』が日本でも公開。衝撃のストーリーがいよいよ幕を開ける。
監督を務めたのは韓国が誇る鬼才キム・ギドク。低予算かつ短時間で撮影された作品群は、そのストーリーの暴力性から発表されるたびに韓国映画界で物議をかもすものの、海外の映画祭ではつぎつぎと受賞を重ねるなど、熱狂的に支持されている。
息子役で借金の取立て屋を演じるのは若手実力派俳優のイ・ジョンジン。母の愛を知るにつれ次第に人間の心を取り戻していく男ガンドを猛々しさと幼児性を巧みに使い分けながら演じ、観る者を物語りに引き込む。一方、ベテラン女優のチョ・ミンスは、母親を名乗る女を、圧倒的な存在感と緊張感を持って演じきった。
二転三転のどんでん返し
ガンドは生まれてすぐに親に捨てられ、30年間天涯孤独に生きてきた借金取り。冷酷無比な取立ての日々を送る彼の前に、突然母親だと名乗る謎の女が現れる。
戸惑い、疑いつつも徐々に女を母親として受けれていくガンド。それまで「金でひとを試す悪魔」と呼ばれ、恐れられ蔑まれてきたガンドだが、母の愛に触れ、母への愛が芽生えることで人間的感情に目覚めていく。同時に守るべき大切なひとを失う不安と恐怖におののいてゆくのだ。そして、その危惧が現実となったとき、彼を待ち受けていたのは──。
十字架から降ろされたイエス・キリストを胸に抱く聖母マリア像のことを指す「ピエタ」。しかし、予想をことごとく裏切る二転三転のストーリーと、ガンドに突きつけられる驚愕の真実。さらに、魂の衝動が聞こえてくるような想像を絶するラストシーンは観る者を未曾有の衝撃と感動で打ちのめす。