特集|目利きたちが選ぶ、朝に聴きたいジャズ55選 SPICE No.2
1日のはじまりにジャズのスパイスを
特集|目利きたちが選ぶ、朝に聴きたいジャズ55選!
風のひんやり冷たい朝、目覚めを楽しい時間に変えてくれる1曲。ちょっと時間に余裕のある朝、ゆっくり取る朝食の時間をさわやかに演出してくれる1曲。通勤途中の足どりを軽やかにしてくれる1曲……。この秋、そんな1日のはじまりを楽しくしてくれる“朝ジャズ”を試してみてはどうだろう。あなたの朝にも、ジャズのスパイスを。
SPICE No.1/第1弾の17曲はこちら
SPICE No.3/第3弾の21曲はこちら
第2弾では、DJの大塚広子さん、GQ編集長の鈴木正文さん、EMIミュージック・ジャパン ジャズ&洋楽ディレクターの花村路津子さん、DJ敷島さんこと安治川親方、トランペット奏者の類家心平さん、そして音楽ライターの島田奈央子さんが選んだ、朝に聴きたいジャズ17選を紹介。
SPICE No.2/第2弾の17曲!
DJ/音楽ライター、大塚広子が選ぶ
ファイト一発! 朝こそ“ハード”にエネルギーチャージ
『God』に収録
Rip Rig + Panic
「Constant Drudgery Is Harmful to Soul, Spirit & Health」
パンク、ダブ、エスニックなテイストを容赦なくジャズに取り込んだアヴァンギャルドな音色は、一気に眠気が吹き飛ぶ痛快さ!
『Blow Thru Your Mind』に収録
Byron Morris & Unity
「Kitty Bey」
収録曲「Kitty Bey」は、どんなときでも起爆剤となる「ファイト一発!」的なナンバー。このイントロを聴くと、いつだって熱狂的なダンスフロアにタイム・スリップ!
『マネー・ジャングル』に収録
デューク・エリントン
「マネー・ジャングル」
荒々しいベースに破壊的なドラム。それに続くピアノがさらに強烈な喧嘩セッション! 同志ローチとミンガスの喧嘩を音で黙らせた巨匠エリントン! 熱気が凄すぎる!
大塚広子(DJ/音楽ライター)
毎月のThe Roomでのイベント『CHAMP』、六本木アルフィーでのメインDJをはじめ、日本中のパーティーに出演。ジャズ喫茶でのイベント・プロデュースなど、ジャズ界の垣根を越えたその柔軟なセンスで音楽のさまざまな楽しみ方を提示している。「FUJI ROCK FESTIVAL2010」、アジア最大級のジャズ・フェスティバル「東京ジャズ2012」(DJとして初出演)、BLUE NOTE TOKYOでのDJ出演や、TBSラジオの出演、雑誌、webレビュー連載、ディスク・ガイドブックやライナーノーツ執筆など幅広いフィールドで活躍中。日本のジャズ・レーベル「トリオ」(ART UNION)、「somethin'else」(EMI Music Japan)、「DIW」(DISK UNION)、「VENUS」(Venus Record)のMIXCDを手がけたほか、9月19日には、「Spice Of Life」レーベルの北欧ジャズコンパイル作品「Music For Reading」(ディスクユニオン)を発売した。
http://djotsuka.com
GQ編集長、鈴木正文が選ぶ
朝日のようにさわやかに。さあ、A列車に乗って行こう
『ラスト・コンサート』ほかに収録
モダン・ジャズ・カルテット
「朝日のようにさわやかに」
谷川雁の詩、「東京へ行くな」の冒頭は、「朝はこわれやすいガラスだから」という一行ではじまります。“softly as in a morning sunrise”という楽曲のはじまりは、僕にそれを想起させます。朝ってこわれやすいぐらいソフトなのだとおもいます。産まれたての赤ん坊とか、産まれたての恋心とか、産まれたての好奇心とか、産まれたての同情心とか、みな、ソフトでこわれやすいですよね。朝、そして朝日のように。
『エッセンシャル・デイヴ・ブルーベック』ほかに収録
デイヴ・ブルーベック
「A列車で行こう」
ハーレム行きの地下鉄はA列車だぜ、という歌詞ですが、ハーレムとはむろんニューヨークの黒人居住区であり、かつては成功者の黒人、そしてそのまえには成功した白人が住んでいたといわれる洗練を極めた街区でした。朝、僕たちはどこかへ向かうわけですが、目的地は散文的なところですよね、たいがいは。それが日常というものです。だから、そこに行くには、ハレム(アラビア語で、王の妃の住む「禁じられた場所」の意)に行くんだという希望が必要です。そして、その列車はA列車なのですね。
『ジャズ・セバスチャン・バッハ』ほかに収録
スイングル・シンガーズ
「インヴェンション ハ長調」
スイングル・シンガーズのスキャットによる軽やかな機知は、朝の、まだ1日の負荷をおわされていない軽やかな空気そのもののようです。タンタンタンタ、タタタタタタタ……といういう唄声に、僕は喜びとしての1日のはじまりを感じたい、とおもうのです。
朝ジャズコラム特別編「鈴木正文が語る、朝の思ゐ出」
僕が子どもだったころ、父は毎朝6時半にNHK第2放送の朝クラシック番組を大音量でスイッチ・オンした。むかしのラジオだから、音の質は悪かった。しかし、少なくとも、中学生になるぐらいまでは、僕は毎朝、音楽とともに目覚めたのだった。そういう習慣は、いまや久しく絶えてない。目覚めてテレビのニュースを見る、というのが辛うじて維持されている習慣だ。
今回を機会に、最近まったく聴いていない僕の好きなジャズCDのうち、すくなくともここに挙げた3曲にかかわるものは、朝に聴いてみようかな、と思った。ウィークデイというより、切迫した支度をしなくてすむ週末かな。朝は一日のはじまりであるだけでなく、個人にひきつけていえば仮死状態からの蘇りでもあり、わが命の蘇生を祝福するのに音楽ほどぴったりのものはない、といえるかもしれない。オヤジはだから、あんなに大音量でクラシックを聴いていたのか!
鈴木正文(GQ編集長)
英字紙記者を経て、二玄社に入社。自動車雑誌『NAVI』の創刊に参画し、1989年に編集長就任。数値だけでなく社会的、文化的な尺度で自動車を批評する自動車文化雑誌をスローガンに編集を行う。 99年に独立し翌年から男性ライフスタイル月刊誌『ENGINE』(新潮社)を創刊。2012年1月からは『GQ』編集長に就任して精力的に活動中。著書に『マルクス』『走れ!ヨコグルマ』など。6月には最新作『スズキさんの生活と意見』を出版した。
http://gqjapan.jp/
EMIミュージック・ジャパン ジャズ&洋楽ディレクター、花村路津子が選ぶ
思い出の地パリに想いを馳せながら、ゆったりすごす朝
『スマイル』に収録
ジャッキー・テラソン
「スマイル」
イントロで惹き付けられ、心が躍ります。主題のメロディの美しさが優しくてきらきらとした太陽のよう。窓を開けたときの清々しさと木々の緑も感じられる、都会の中の自然を感じる1曲。
『パリの詩(うた)』に収録
ステイシー・ケント
「3月の水」
シンプルなメロディに優しく乗るステイシーのウィスパー・ヴォイス。フランス語の柔らかい響きと軽快さで朝食の準備も楽しくなりそう。
『「世界でいちばん不運で幸せな私」オリジナル・サウンドトラック』に収録
ルイ・アームストロング
「バラ色の人生」
「“幸せ”ってこういうこと!」って気付かせてくれる(?)曲と演奏。コーヒーの香りやトーストの焼ける匂い、生活の音ひとつひとつが愛おしくて、そんな音にも馴染んでしまうようなサッチモから発せられる声も演奏もマジックです!
花村路津子(EMIミュージック・ジャパン ジャズ&洋楽ディレクター)
2001年、東芝EMI(現EMIミュージック・ジャパン)入社。テレビやラジオの宣伝担当を経て8年前より現職。
10月31日、ノラ・ジョーンズ『カヴァーズ~私のお気に入り』が発売。11月に7年ぶりの来日公演を行うノラ・ジョーンズの、子どものころからのフェイバリット曲のカヴァー集。また、シリーズトータル10万枚を売り上げるジャズ・コンピレーション”THIS IS JAZZ”シリーズからの最新作『THIS IS JAZZ Piano -night & day』11月28日発売!夜に聴きたいジャズ・ピアノと日中に聴きたいジャズ・ピアノの2枚組。
http://www.emimusic.jp/jazz/
DJ敷島こと、安治川親方が選ぶ
さっぱり、スッキリ、ときにロマンチックに。ジャズが彩る優しい目覚め
『夢のカリフォルニア~ノルウェーの森』に収録
バド・シャンク
「世界は愛を求めてる」
愛とは、求めるより与えるもの。求めてばかりいないで、愛を朝からばら撒きましょう(笑)。世界は愛を求めてます!
『マイク・コゾー・ウィズ・エディ・コスタ・トリオ』に収録
マイク・コゾー
「10A.M.」
朝ジャズというなら、白人的なちゃんとしたジャズのスッキリ感がいい。ちゃんとしたジャズという変な表現をしてしまうのは、私がこってりした黒人系が好きだから。この曲は、まさにわたしがイメージするスッキリした朝ジャズ。
『ジョージ・シアリング・ボサノバ』に収録
ジョージ・シアリング
「デサフィナード」
これは横に好きな人が寝ている、休みの時の朝というイメージ。ねっとりした朝もいいのではないかな。こんな日は朝からシャンパンとか呑みたいね。
DJ敷島(DJ/ボーカリスト/安治川親方)
元、西幕内筆頭敷島。平成10年三月場所四日目、同年五月場所十日目と、横綱貴乃花を初対戦で2場所連続破る記録を挙げる。音楽好きが高じて交友関係も幅広い。DJ、ボーカリストとして不定期に活動しながら、安治川親方として後進の指導をしている。(財)日本相撲協会 陸奥部屋所属。現在は11月11日から始まる九州場所担当として、九州にて活動中。九州場所のチケット注文電話は、092-291-9333まで(午前10時~午後4時、土日祝は休み)。
トランペット奏者、類家心平が選ぶ
起き抜けからの、ロック! フリージャズ! モンク!
『ジャック・ジョンソン』に収録
マイルス・デイビス
「ライト・オフ」
もうほとんどロック、ほとんどジミヘンですがマイルスのトランペットはどこまでもジャズ。月曜日の朝にフィットするパンチの効いた一品。朝からやる気が出ます。
『コンプリート・サイエンス・フィクション・セッションズ』に収録
オーネット・コールマン
「ハッピー・ハウス」
このサウンドそのものがエネルギーです。オーネットのサックスと朝日を混ぜて、苦めの野菜ジュースと一緒に。朝から元気が出ます。
『ソロ・モンク +9』に収録
セロニアス・モンク
「スウィート・アンド・ラヴリー」
朝からこのピアノの音で心洗われて素晴らしい一日を。ピュアで繊細なソロピアノが新鮮な気持ちに誘います。どの曲を聴いても鮮度の高いこのアルバムは雨の日にも晴れの日にもお勧めです。
類家心平(トランペット奏者/作曲家)
ブラスバンドでトランペットに出会いマイルス・デイビスに触れジャズに開眼する。高校卒業後、海上自衛隊の音楽隊でトランペットを担当。自衛隊隊退後、2004年にSONY JAZZからジャムバンドグループ「urb」のメンバーとしてメジャーデビュー。その後、自身のユニット「類家心平 4 Piece Band」を主催。2009年6月にファーストアルバム「DISTORTED GRACE」をリリース。前作から2年後の2011年9月、菊地成孔プロデュースのセカンド・アルバム『Sector B』をリリース。「菊地成孔ダブセプテット」、「菊地成孔DCPRG 」、元「ビート・クルセイダース」のケイタイモ率いる「WUJA BIN BIN」や「LUNA SEA」のギタリストSUGIZOが率いるユニットにも参加し活躍の幅を広げている。現在は、11月28日の新宿ピットイン、自身のユニット「SHINPEI RUIKE 5 Piece Band」でおこなう12月10日のモーションブルー横浜など、精力的にライブツアーをおこなっている。
http://ruike.daa.jp/