ジャガー「Fタイプ」デザイナー インタビュー|Jaguar
2012 Beijing International Automotive Exhibition|北京国際モーターショー 2012
ジャガー「Fタイプ」デザイナー、イアン・カラム氏 インタビュー
北京国際モーターショーにおいてジャガーブースで注目を浴びた「Fタイプ コンセプト」。この新型コンセプトをはじめ、現在の「XJ」「XK」「XF」など躍動感あるあたらしいデザインを手掛けるカーデザイナー、イアン・カラム氏に九島辰也氏がインタービューを敢行。
Interview & Text by KUSHIMA Tastsuya
ジャガーのデザインに重要なもの
2011年9月のフランクフルトモーターショーで、ハイブリッドスポーツカーの「CX16コンセプト」を発表したジャガー。デザインを担当したのはイアン・カラム氏。現行型「XK」「XF」、そして「XJ」を手がけたデザインディレクターである。
そして、今年4月初旬。その市販バージョンともいえる「Fタイプコンセプト」がニューヨークオートショーでアンベールされた。そこで、およそその2週間後に北京で行われたオートチャイナ2012で、「Fタイプコンセプト」についてイアン・カラム氏に直接話をうかがった。
──「Fタイプ コンセプト」発表おめでとうございます。数年前に「Fタイプ」と名付けられたスポーツカーのコンセプトカーがありましたが、そちらはプロジェクトが消えてしまい、そのときはとても意気消沈されたそうですが?
ありがとうございます。Fタイプをこの世に出せることはとてもうれしいことです。昔のFタイプはもう10年以上経ちますね。あれはV8エンジンをミッドシップレイアウトにしたものでした。その意味では今回とはまったくちがいます。スタートはそこでしたが、新型はV6エンジンをフロントに置いてつくりました。
もちろん、アーキテクチャーもあたらしい。一部XKを使っているところもありますが、ほとんど新設計です。クルマにかんする法律や環境が変わっていますから、当時のものをそのまま使うことはできません。それにエンジンもよくなっているし、なにより私のチーム自体能力が上がっています。それはとてもうれしいことです。
──今回FR(フロントエンジン&リア駆動)なのは、ハイブリッドカーを見据えたからでしょうか?
そうです。ミッドシップでない理由はそれです。フロントコンパートメントはXKから流用しましたから、いってしまえばV6でもV8でも積めます。ただし、このクルマは販売価格も抑えたものです。なのでV8は価格が高くなってしまうので似合いません。XKのパーツを使ったのも開発費を抑えるためですから。サスペンションは独自のものを開発しています。
──Fタイプのデザインはトレンドと伝統がどのように融合されているのでしょう?
1950年代、60年代の価値は非常にシンプルでした。「美しさ」、「パフォーマンス」、「ドライビング」、というのがスポーツカーにたいする要求事項でした。それを具体的にすると、「2人乗り」、「フロントエンジン」、「エアロダイナミクス」といった感じになります。ただ、現代は安全性や環境問題にたいする意識も高まっており、当時にはないいろいろな条件が存在します。つまりそれが現代の価値であり、それを軽んじてはなりません。
そう考えると、必ずしもなにかを残すことがいいとはいえないのです。それよりも、1968年にリリースされたXJは当時としてはラジカルでモダンなデザインだった。そのセンセーショナルさがジャガーには重要なのです。
──そして生まれた「Fタイプコンセプト」ですが、反響はどうだったのですか?
おもった以上です。すごかった。CX16のときもそうでしたが、Fタイプはもっとでした。
──今回、Fタイプコンセプトを発表されましたが、カラム氏からみて自動車全体のトレンドはどうなっているとおもいますか?
クーペが戻ってきたという印象があります。各メーカー2ドアもそうですが、4ドアクーペもラインナップしています。つまり、クロスオーバーされたということでしょうか。デザイン的には複雑になっています。生産技術が上がっていることもあり、そういったデザインが可能となりました。
──最後に、いま他メーカーで興味のあるデザインをしているところはありますか?
そうですね、フォルクスワーゲンはすばらしいとおもいます。デザインをまとめているウォルター・デ・シルヴァ氏には敬意を持っています。シロッコもゴルフも好きです。日本のメーカーは……ホンダにがんばってもらいたいですね。かつてはアグレッシブなデザインをしていましたが、いまは保守的に見えます。
──機会があればホンダに伝えておきます。今日はありがとうございました。