スーパーカー イッキ乗り? ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加|Pirelli
CAR / IMPRESSION
2014年12月10日

スーパーカー イッキ乗り? ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加|Pirelli

Pirelli Cinturato P7 Blue|ピレリ チントゥラート P7 ブルー

スーパーカーイッキ乗り?

ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加

OPENERSでもおなじみ、大谷達也氏が、興奮したようすで、はるばるスペインから東京の編集部に連絡をくれた。なんでも、ランボルギーニ、マクラーレン、ポルシェのほこるスーパーマシンを、一堂にそろえたサーキット試乗会に参加してきたばかりとのこと。はたして、モータースポーツを愛する大谷氏はなにをしてきたのか?

Text by OTANI Tatsuya

サーキットにつどう、スーパースポーツカー

“地元の英雄”フェルナンド・アロンソが、経済危機で困窮するスペインの大観衆を前にして劇的な優勝をとげたF1ヨーロッパGP。その興奮も冷めやらぬ翌月曜日、我々はヴァレンシアにあるもうひとつのサーキットを訪れた。

現在、F1が開催されるのは、おなじヴァレンシアでも海沿いに位置する市街地コース。これとは別に、ほんの数年前までF1チームが熱心にテストをおこなっていたサーキットがある。F1用としては低速コースと位置づけられていたが、ロードカーであればどんなハイパフォーマンスカーであろうと走り応え充分のサーキット。しかも、当然のことながらクローズドコースなので、法律や周囲の交通を気にすることなく、おもう存分に走れる。試乗会としては、なかなか豪勢な舞台である。



しかも、ここに集まっていた試乗車の顔ぶれがまたすごかった。ランボルギーニは「アヴェンタドールLP700-4」にくわえて、「ガヤルド スーパーレッジェーラ」がある。その隣でエンジンを暖機させ、我々の試乗をいまかいまかと待ち構えているのは、見紛うことなき「マクラーレンMP4-12C」。おまけに3台も用意されている。その向こう側には2台の「ポルシェ911 カレラS」も用意されていたが、残念ながら完全に霞んで見えてしまう(いやいや、これが走らせて本当に楽しかったことは後述のとおり)。

まるできら星のようなスーパースポーツカーをとりそろえ、しかもこの種の試乗会にありがちな先導車もなく(ただしマクラーレンとポルシェにはインストラクターが同乗)、自分のペースで好きに走っていいという。これを聞いて胸のたかぶりを抑えられなかったのは当然といえるだろう。

ところで、これはなんの試乗会なのか? この日の本当の主役は、じつはタイヤで、「チントゥラートP7ブルー」と名づけられたピレリの新製品。

このタイヤ、ヨーロッパのラベリング制度(タイヤの転がり抵抗とウェットブレーキング性能をランク付けして製品の位置づけを明確にする制度)で“ダブルA”を得た最初の製品だという(一部サイズのみ)。その性能は試乗会の後半部分で確認するとして、「せっかくスペインまで来たのだから、まずはピレリのフラッグシップモデルである「Pゼロ」でサーキット走行を楽しんでください」という、いわばお楽しみの機会としてランボルギーニ、マクラーレン、そしてポルシェを集め、サーキットまで占有して特別走行セッションを用意してくれたのである。なんとも粋なはからいではないか。

Pirelli Cinturato P7 Blue|ピレリ チントゥラート P7 ブルー

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ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加(2)

恐怖のどん底に突き落とされた──アヴェンタドール

では、その印象はどうだったのか? まずはアヴェンタドールから。アウディ傘下に入ってからのランボルギーニはドイツの理性的なDNAを注入されたようで、スタビリティや取り扱い易さが強調され、かつての暴力的な印象がすっかり影を潜めていたが、アヴェンタドールに積まれた新開発のV12エンジンはドライバーを恐怖のどん底に突き落とすほどの爆発的なパワーを生み出す。

こう聞くと、野蛮な回り方をするエンジンを想像されるかもしれないが、そんなことは決してなく、じつにスムーズで洗練された印象を与える。我々に恐怖を与えるのは、そのパワーカーブだ。排気量6.5リッターもあるから、もちろん低速トルクは充分だが、4,000rpmを超えたあたりから留まることを知らないかのように巨大なパワーがわき起こり、そのまま一気にレッドゾーンまで到達する。



しかも、700psの最高出力は伊達ではない。タコメーターがトップエンドに突入すると、まるで車体がふわっと浮き上がったかのように軽く感じられ、それまでも充分鋭かった加速感に一層の拍車がかかるのだ。どんなハイパフォーマンスカーでもクローズドサーキットでは物足りなく感じるのが通例だが、アヴェンタドールだけは例外。正直、エンジンを味わい尽くすのに精一杯で、クルマ全体をどうこう語れるほど観察する余裕がなかったことを告白しておく。

Pirelli Cinturato P7 Blue|ピレリ チントゥラート P7 ブルー

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ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加(3)

これは本物だ──マクラーレンMP4-12C

アヴェンタドールにくらべれば、マクラーレン「MP4-12C」の625psは扱い易いといっていいだろう。エンジンのパワーカーブもどこかで急激に立ち上がることなく、一定のリニアリティを保ちながらクライマックスを迎えるので、恐怖を覚えることはない。

それだけに、関心は自然にシャシーへと向かっていく。まずはその快適性。ボディの無駄な動きをしっかり押さえ込みながら、なぜこれほど乗り心地がいいかといえば、それはダンパー間で油圧回路を結んだマクラーレン・プロアクティブ・シャシー・コントロールが効いているから。さらにはフルカーボンのモノコックがどんな衝撃もがっちり受け止めてくれるからだろう。



ハンドリングはどんなスーパースポーツカーとくらべても正確そのもの。しかも、ドライバーを変に驚かせようとすることなく、あくまでも上質に仕上げているのがいかにもマクラーレンらしい。ハードウェアのクォリティがすべての点で最高水準に到達していることにも F1チームの総帥をつとめたマクラーレンの会長ロン・デニスのこだわりが見て取れるし、エクステリア、インテリアのフィニッシュレベルにも文句のつけどころがなかった。本物の価値を見極められるエンスージアストにこそ勧めたいスーパースポーツカーだ。

Pirelli Cinturato P7 Blue|ピレリ チントゥラート P7 ブルー

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ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加(4)

今年25周年をむかえたピレリ Pゼロ タイヤ

この2台にくらべると、ポルシェ「911 カレラS」はまるでライトウェイトスポーツカーのように感じられる。ドライバーの操作にたいする反応、路面からの入力にたいする反応がすべて素直で、アヴェンタドールやMP4-12Cのようにフィルターがかけられている印象がない。それだけに自動車を操っているという感覚が強く、おもいきってサーキットを攻められる。おそらく、この日の私のラップタイムを計測したら、911がいちばん速かっただろう。この、実際に引き出せる性能の高さにこそ、ポルシェの魅力があるといっても過言ではない。

そうした世界の名だたるスーパースポーツカーから、ライン装着タイヤとして指名されているのがピレリ「Pゼロ」であり、「Pゼロ・コルサ」である。

ちなみに、マクラーレンMP4-12Cとポルシェ911カレラSにPゼロがライン装着される比率は100パーセント。それだけ信頼が篤い証拠といえる。

この日のサーキット走行でも、30度を超える猛暑のなか、本来公道走行のためにつくられたタイヤにもかかわらず、Pゼロは一切音を上げることがなかった。また、前後方向と左右方向のグリップレベルの設定が適切なほか、滑り出しのフィーリングが掴みやすかったことも特筆しておきたい。

聞けば、初代ピレリPゼロがデビューして今年で25年を迎えるという。その間、たゆまぬ改良がおこなわれたのは想像にかたくないが、これだけ優れた特性をそなえているのだからこそ、長期間にわたってトップ・オブ・ザ・レンジの地位を守ってこられたのだろう。

Pirelli Cinturato P7 Blue|ピレリ チントゥラート P7 ブルー

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ピレリ チントゥラート P7 ブルー試走会に参加(5)

すぐれたウェットグリップ性能をもつチントゥラートP7ブルー

さて、ここまで濃密な経験をしたところで、ようやくこの日の主役である「チントゥラートP7ブルー」を試すことができた。その位置づけは、ドライコンディションのパフォーマンスではPゼロのやや下に位置するものの、前述のとおりウェットグリップでは優れた性能を獲得し、転がり抵抗も低く、省燃費に貢献するというもの。ちなみに、モデル名の最後につけられた“ブルー”は、同社が供給するF1むけのウェットタイヤに因んでいる。それだけウェットグリップに自信があるのだろう。いっぽう、ハードコンパウンドのF1タイヤに用いられるシルバーの名を冠した「Pゼロ・シルバー」がすでに発表済みなので、F1由来のネーミングはチントゥラートP7ブルーが2作目ということになる。

チントゥラートP7ブルーを試したのはウェットハンドリング路。ヴァレンシアサーキットの内側に設定されたテクニカルセクションに水を散布し、そのウェット性能を体感させようという趣向である。

ここには“格上”のPゼロも用意されていたが、チントゥラートP7ブルーとは装着されている車種が微妙にことなるので、直接的な比較的は難しいようにもおもわれた。しかし、それは幸いにも杞憂に終わった。言い換えれば、それだけウェットハンドリング路ではチントゥラートP7ブルーのアドバンテージが明確だったことになる。

とにかく、チントゥラートP7ブルーはウェットのグリップレベルが高かった。しかも、アンダーステアが出始めてからも、Pゼロよりスリップアングルが小さく、ドライバーにコントロールの余地が残されている。ここからさらにペースを上げて完全にグリップを失わせても、グリップ回復力は強く、素早く舵が効くようになる。つまり、ドライグリップであればかなわないにしても、ウェットグリップならばトップモデルのPゼロを上まわるほどのパフォーマンスをチントゥラートP7ブルーは備えているのだ。



また、チントゥラートP7ブルーでは素材を見直すことにより、充分な強度を保ったままサイドウォールをより薄くすることにも成功。走行に伴うサイドウォールの発熱を抑えることで転がり抵抗を23パーセントも低減させたという。これによって燃費は5.1パーセントも改善できるとピレリは主張する。

ピレリ・チントゥラートP7ブルーは2013年に日本に導入される予定だ。

           
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