あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──トヨタ自動車編
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2015年3月13日

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──トヨタ自動車編

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業――トヨタ自動車編

次世代の代替燃料車が担う役割とは?(1)

トヨタ自動車では、代替燃料車の新世代を準備中。2012年に、充電ができる新世代のプラグイン・ハイブリッドと、さらに電気自動車の発売を予定。トヨタが代替燃料車にかける意気込みをうかがった。

文=小川フミオ

2012年投入予定のあたらしいプリウス

ハイブリッド車プリウスの登場は1997年。当時は「近い将来、(水素を改質して発電し電気モーターをまわす)燃料電池車がメインストリームになる予定なのに、ガソリンエンジンと電気モーターの組み合わせにどれだけの意味が?」と海外などで揶揄された。しかし、いまだ環境への負荷が少ない乗用車としてトップを走りつづけている。

さらにクルマは進化をつづける――。現在、プリウスの近未来系として、プリウス プラグイン ハイブリッドが路上を走り出している(一般への販売は2012年を予定)。

くわえて、やはり2012年に、トヨタiQをベースにした電気自動車(EV)の発売も予定されている。次世代の代替燃料車(化石燃料以外のエネルギー源も使うクルマ)が担う役割とは? トヨタ自動車に聞いた。答えてくれたのは、広報部の技術担当だ。

進化するハイブリッド

――プリウスが発表されたときは衝撃的でしたが、今後、ガソリンと電気モーターを組み合わせた動力系を搭載するハイブリッド車には、大きく進化する可能性はまだ残されているのでしょうか。

これからはプラグイン ハイブリッドとして進化します。プリウスをはじめ、従来のハイブリッドではバッテリーへの充電はガソリンエンジンによっておこなうシステムでしたが、現在、プラグイン ハイブリッドといって、バッテリーへは電気コンセントから充電できるメカニズムを採用した電気モーターで走行するレンジが広くなっている新世代のプリウスを2009年から官公庁、法人など特定利用者にたいしリースで使っていただいています。2012年には量販する予定です。

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次世代の代替燃料車が担う役割とは?(2)

環境負荷を抑えるクルマの使用法

――電気自動車(EV)がいまメディアでは多く取り上げられています。そこにあって、ガソリンエンジンも載せたハイブリッド車にどんな意味があるのでしょうか。

ひとつには走行距離が長いこと。そしてガソリンは日本中で容易に手に入ることです。ガソリンエンジンなど化石燃料で走るクルマは1回の給油で約500km走ります。それにたいしてEVは200kmまで到達できません。かつ充電にかかる時間が、数時間と長い。外出先で充電場所を確保するのも容易でない場合もあるでしょう。現状では、使い分けをしていただくのが、環境負荷の少ないクルマの使用法だと考えています。

――では逆にEVには否定的な要素が多すぎるということですか。

もちろん、EVには大きな長所があります。発電方法と密接に関連しているので、一概にはいえませんが、クルマがCO2など有害成分を大気中に放出しないし、化石燃料を使わない。なので、トヨタ自動車も2012年には、日米欧で、トヨタiQをベースにしたEVを発売します。航続可能距離は100km程度の予定。バッテリーを大型化すれば航続距離は伸びますが、コストが上がり、乗員の居住スペースが圧迫される可能性もあるので、どこで線引きするかはむずかしい問題ですが、近距離用途として開発しています。

――電気モーターを載せるクルマは充電時に電気を使うから、社会のあたらしいインフラの発展と同時に考えていく必要があると言われています。

多くの家庭がPHV、EVをお使いになるようになって、いっせいに充電したら、たとえ夜間といっても電力消費量がいっきに上昇する可能性があります。試算によると一般家庭では、消費電力を約3割増加させるともいわれています。なので、自動車メーカーにとっても、近い将来の課題は、電力消費のピークを分散させて、EVの充電による負荷を下げるところにあります。そのために必要なのが、電気マネージメントシステム。コンピュータで制御してEVへの充電をふくめて電力消費のピークを分散させる社会的システムです。

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次世代の代替燃料車が担う役割とは?(3)

エネルギー消費を統合的にコントロールする「トヨタスマートセンター」

――いわゆるスマートハウスとスマートグリッドが、PHV、EVにとっても必要だと。

クルマと家庭と社会が一体化して、低炭素化社会の実現を目的に、効果的な電力消費を図る必要があります。そこでは通信技術を使ってクルマのバッテリー残量など情報をセンターで管理するのも有効でしょう。そのためトヨタ自動車では、住宅、クルマ、電力供給事業者とそれぞれを使うひとをつないでエネルギー消費を統合的にコントロールするトヨタ独自のシステム「トヨタ スマートセンター」を開発し、マイクロソフトと戦略的提携も実施しました。

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──トヨタ自動車編|07

2011年4月、トヨタはマイクロソフトとともにグローバルクラウドプラットフォーム構築に向け基本合意をした。写真左|マイクロソフト CEO スティーブ・バルマー氏、写真右|トヨタ自動車 CEO 豊田章男氏。

あたらしい時代づくりに取り組むひとと企業──トヨタ自動車編|08

「トヨタスマートセンター」の概要図

――車両とコールセンターをつなぐ現在のG-BOOKの発展形でしょうか。

2015年までにマイクロソフトと共同で、グローバルクラウドプラットフォームの構築を目指していきます。スマートグリッドへの取り組みの一環です。クルマと住宅をつなぎ、エネルギー消費を統合的にコントロールするシステム「トヨタスマートセンター」に、このクラウドプラットフォームを活用します。その先には、「トヨタスマートセンター」のグローバル展開を図っていきたいと考えています。

――充電式のEVとガソリンを使うクルマとの併用が最終形でしょうか。

たとえば水素と水素で電気を作り、電気モーターを駆動する燃料電池車(FCV)もひとつの可能性です。燃料充填に要する時間と航続可能距離が従来のガソリン車と同等で、かつCO2を排出しないというメリットがあります。電気モーターをホイールのなかに組み込むようになるなど、現状から大きく変わる可能性もあります。

           
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