ハリアー特別仕様車に見る、美のフィロソフィー|Toyota
Toyota Harrier|トヨタ ハリアー
ハリアー特別仕様車PREMIUM“Style MAUVE(モーヴ)”に宿る美学とは(1)
6月2日より発売された、トヨタ ハリアーの特別仕様車PREMIUM“Style MAUVE(モーヴ)”。そのキャンペーンの一環として展開されているデジタルコンテンツ「H.H.360」の撮影を担当したのが、フォトグラファーの佐藤新也氏。紫をテーマにしたPREMIUM“Style MAUVE”の魅力をプロダクトデザイナーの角田陽太氏とともにひも解いてゆく。
Photography by KOMIYA KokiText by SHIBATA Mitsuru
むずかしい紫を表現する技術力の高さ
角田陽太(以下角田) 小さい頃からミニカーは好きでした。もともとクルマのデザインに興味があり、いまでも走っている姿に目を引かれることがあります。そのなかでハリアーはカッコいいクルマを象徴するイメージですね。大きなボディサイズにも惹かれるし、デザイン的にも気になるクルマです。
佐藤新也(以下佐藤) カメラマンにとってクルマは仕事道具として必需品ですが、ライフスタイルに合わせて考えると、ハリアーは山に遊びに行くとかイメージが膨らみますよね。そのシーンでの佇まいであったり、感性にもフィットします。
角田 今回のStyle MAUVEは色が特徴的ですね。デザインプロセスではID(インダストリアルデザイン)とCMF(カラーマテリアルフィニッシュ)が一致した時に良いものが生まれるといわれています。僕も色を決めるときには、とても気を使っていて、作品には白が多いのですが、白といっても無限にあってどれを選ぶかが大事。配合や階調、艶感にもこだわりますし、素材の質感やサイズによっても印象は大きく変わりますからね。
佐藤 そうですね。人間が目にする光も角度によってまったく違うし、クルマであれば昼間と夕方、天気などの条件で色味は変わります。人間の感覚も多様なので、僕が写真を撮る場合も、そのなかでどこにフォーカスして演出するかを常に考えています。
角田 Style MAUVEのインテリアでは、曲面がうまくつながっていることに感心しました。たとえばフロントのダッシュボ−ドの角度とか。親密感というか、ひとの琴線に触れる形状だとおもいます。囲まれる感じはコックピットっぽくもある。たとえば飛行機のファーストクラスのような、マユのように包み込まれる感覚に近いかな。それぞれを構成する曲線に意味があるのかって一瞬疑問に感じますが、まったく違う瞬間にその良さが発揮される。それが心の親密感にまで入り込んできている気がします。それにしてもインテリアのパープルって、あまり普段目にしない色ですね。ほぼ黒に強いのだけれども、紫が際立っている。
佐藤 それを内装で表現しているのに驚きました。
角田 すごいチャレンジングですが、デザイナーとしては色調整も楽しかったのではないかな。調色は最終的にはデザイナーに任されることが多く、これも難易度は高かったとおもいますよ。それこそ冠位十二階の最上級(笑)。そこにあえて挑戦するのだから。
ギリギリのラインを狙った、絶妙な色の表現
佐藤 角田さんは白のなかで選ぶのに苦労されるといいましたが、Style MAUVEの車内は高級感に加え、色やシボの入り方で表情が異なるんですね。今回H.H.360という映像表現ではいろいろなシチュエーションで撮影しましたが、自然のなかと人工物に囲まれたなかで見る紫の印象は違うし、内装への光の反射もあります。そこで大切にしたのは、こういう色でないといけないと断定するのではなく、ハリアーの空気感を出すこと。とくに、写真で説明し過ぎないという点にも気を使いました。
角田 最初は紫のインテリアってどうなんだっておもったけれど、違和感なくスッと入ってきた。それは素材をうまく融合させたからだとおもいます。その辺りがうまくて、ワインレッドのような芳醇さも感じさせるんでしょうね。
佐藤 確かに、いかにもワインの薫りがしそう(笑)。
角田 見た目だけでなく、そこまでどう表現するか。プロダクトデザインとは五感の総合得点だとおもっています。匂いまでも感じられるデザインですね。
佐藤 年数を経るとまた違った表情が出てきそうですよね。写真でもそうした意図で、シズル感を大切にしました。興味深かったのはステッチですね。どうやって作るんだろうとか構造的にも。ピッチも広くて、色も同系色でまとめているので洒落てます。
角田 それも極端に主張するのではないけれど、控えめさとのギリギリのところを狙っているように感じます。たとえばメーターの針色も高級感のある青であったり、ドアポケットの内側のラインや、ハンドルの親指のえぐれた部分のステッチなど細部にも同じ気の配り方を感じます。全体的にオーガニックな形状ですが、センターコンソールのカバー部分の鏡面仕上げなどは家具に近いですね。
ダークカラーがフレームとなり、見える景色が変わる
佐藤 このStyle MAUVEはダークカラーに着目し、さまざまなニュアンスのある黒のセンスをハリアーの世界感に取り入れたそうですが、上品さが伝わります。
角田 紫に漂う高貴な雰囲気というかな。本来はギョッとするような色だけど、すごく気を使ってやると上品に仕上がる。そんな印象ですね。
佐藤 それをうまく調和させるための素材であったり、ステッチだったり、ラインがあるのでしょうね。
角田 目先のトレンドを追うということではないのかもしれませんね。僕も普段デザインではトレンドとは真逆のことを狙っていて、いつの時代も使えるものを考えています。トレンド以上に最終的にはできたものが重要で、難しい紫に挑戦して美しくアウトプットできたことが評価できますね。しかもインテリアをうまくやらないとエクステリアの印象も変わってしまう。そこを乗り切ったデザイナーは本当に経験とセンスがあるとおもいます。
佐藤 走っていると何でもない風景が違って見えたり、気づかせてくれる。そんな生活のなかでの視点の変化を感じられるのがハリアーの魅力ですね。車内から外の景色を見るとき窓はひとつのフレームになります。ハリアーはその見え方も変わってくるんです。
角田 ダークカラーがひとつのフレームとなり、風景を演出するというのはおもしろいですね。デザインの世界というのは「なぜいいのか」ではなくて、「どこがいいのか」を追求することだとおもっていて、あえて理屈で説明することではありません。大切なのは気分であり、そこにいたるプロセスまでをデザインすることが仕事だとおもいます。パープルも本当に無限であり、ハリアーがダークカラーを突き詰めるというのは独創的な視点ですね。さらにその可能性を広げれば、ピアノのような色調があってもいいのかもしれません。ハイクオリティな生活を根底から支える色のあり方とは何か。それこそ膨らみのあるダークカラーであり、ハリアー独自のカラーチャートができるのではないでしょうか。
Page02.写真家佐藤新也が見た、360度の世界|Toyota
Toyota Harrier|トヨタ ハリアー
ハリアー特別仕様車PREMIUM“Style MAUVE(モーヴ)”に宿る美学とは(2)
Photograph by SATO Shinya(Location)Photograph by KOMIYA Koki(Still)Text by SHIBATA MitsuruSpecial Thanks BASCULE
写真家 佐藤新也が見た、360度の世界|Toyota
トヨタ ハリアーの特別仕様車PREMIUM“Style MAUVE(モーヴ)”の専用内装色スティールモーヴの室内を360度体験できるデジタルコンテンツが「H.H.360」。北海道や横浜を舞台に、フォトグラファーの佐藤新也氏がファインダーのなかから見た景色と制作秘話に迫る。
―― H.H.360の撮影に臨むに当たって、どのような準備をされましたか
通常一枚の写真で表現するということは、そこに制限があることで、じつはそのなかに見えていない部分まで想像させるということなんです。それに対して360度というのはすべてを見せることで、むしろその表現自体が狭まる可能性も秘めています。そこで今回取り組むに当たって、何が表現できるかを考えることから始めました。もちろん機材の構造特性や視点の位置を検証しないと見え方の印象も変わってしまうので事前に研究し、レンズのミリ数や限られた撮影日数での現実的な撮り方も詰めていきました。
―― とくに大変だったことはなんでしょう
本当の車内にいるような感覚になってもらうために、写り込みの色や光といった細部まで徹底しなければなりませんでした。しかもこのコンテンツでは、360度の空間が自分の手でコントロールできるので、車体が傾けば背景も傾いているように構成しなければ整合性が合いません。それは空間を作り出す初めての試みであり、トライする部分が多かったです。手探りで撮って検証してみないとわかりませんし、普段の平面図を空間的な認識として、意識的に切り替え、数学的な頭を使って現場で捉えていくのは新鮮でした。ロケ現場では360度の撮影をするため、普段は散らばっているスタッフが撮影している僕の後ろに真一列になってぐるぐる回りました。その姿は結構シュールでしたね(笑)。ロケハンしながら本番を撮るような慌ただしい撮影だったのですが、そうしたライブな撮影も嫌いではないです。
―― H.H.360という新技術について期待と完成後の達成感とは?
最初のアイディア出しでは、池の上にクルマが浮いていたらおもしろいとか、アイスランドのような場所で撮ったらいいね、という話もあったんですが、現実問題としていまのような構成になりました。現実離れした風景のなかでのクルマというのもひとつの絶景だと思いましたが、それをどうやって撮るんだ?ってことになりましたし、結果としてユーザーから見て興味を持つようなシチュエーションになったと思います。
そしてH.H.360では、普段は写真で表現していたものが、ウェブでの表現としてさらに進化した感じがしました。空間として写真が表現できるんだなっていうあたらしさ。それはおもしろいと思いました。ハリアーの空間を説明する手法としての新鮮さがありますし、未来の説明書のような可能性もあり、ハリアーだからこそ成立する恰好いい見せ方になったと思っています。
―― ご自身で気に入っているシーンは?
北海道の丘陵が好きでした。ハリアーのもつ世界観はH.H.360という見せ方に合っていると思います。こういう景色がみたいと思った時にハリアーが違和感なくなじみ、絶景として完成する。その位置づけは表現できたと思います。霧のなかの撮影もしたのですが、もしまったく見えなかったとしてもその存在への想像力をかき立てるのではないかとおもいました。そう思わせるのもハリアーがもっているキャパシティなのでしょうね。
―― 写真家としてとくにこだわった点とはなんでしょう
こだわったのはデジタルにおけるハリアーの写真集となることもそうですし、それぞれのシーンでハリアーの美しさをひとつひとつ検証したことです。ハリアーは雨に濡れたり、自然の表情に対して色っぽくて魅力的な表情をします。さらに車窓からの美しさや横を向いたらどんな風に見えるかを考えました。景色がインテリアの持ち味を崩さないようなバランスも気を使ったところです。
―― どのようなところを楽しんでほしいですか。
見ていただき、感じてほしいのは、小さなスマートフォンの画面にあの世界の広がりがあるというのはとても贅沢なことだということです。しかも指先のスクロールだけではなく、スマートフォンそのものの向きを変えるだけでも体感できるのは醍醐味だと思います。その窓がより一般的に広がればいいですね。見ればハリアーと一緒にそういう場所に行ってみたくなるんじゃないでしょうか。そこでH.H.360を現場で体験するのもおもしろいでしょうね。
静止画で撮ってますが、今後さらに技術が進んで動画で360°を見せることができるとしたならば、たとえば、窓からの波打ち際の風景でも波が動いたりしたらさらにおもしろいものがつくれるとおもいます。現場でアイディアが生まれることも多く、「ハリアーならこんな表現もおもしろいのでは。」 など、撮影の限界に挑戦したくなるクルマでした。
H.H.360
ハリアー特別仕様車PREMIUM“Style MAUVE”の専用内装色スティール モーヴを360度体験できるデジタルコンテンツ。WEBブラウザ上で3D表現が行える最新技術を使い、ゲームのコントローラーを操るかのような閲覧が可能。“都会”と“自然”、8つの異なるシチュエーションをハリアーの車内から、そしてハリアーがたたずむ姿の双方を360度で体験できる。
詳しくは、こちら http://toyota.jp/harrier/cp/hh360/
佐藤新也|SATO Shinya
1980年広島県出身。10BANスタジオ勤務を経て2007年 瀧本幹也氏に師事。2012年独立。同年、 写真展「RIGHT SANDS」実施。最近の主な仕事に、TOYOTA、CITIZEN、ソフトバンク、大和ハウス、POLA、Gaba、SUNSTAR、集英社「ナツイチ」 など。雑誌「PRESIDENT」では連載も担当。広告、雑誌、CF等を中心に幅広く活動する。
角田陽太|KAKUDA Yota
デザイナー。仙台生まれ。2003年渡英し、さまざまな事務所で経験を積む。2007年ロイヤル・カレッジ・オブ・アート(RCA)を修了。2008年に帰国後、無印良品のプロダクトデザイナーを経て、2011年、YOTA KAKUDA DESIGNを設立。
http://www.yotakakuda.com/
トヨタ自動車株式会社 お客様相談センター
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