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2022年4月4日
食わずに死ねるかーっ! と、唸ります。天才総料理長によるイノベーティブフレンチ|TRAVEL
TRAVEL|星のや軽井沢
「知る」は、おいしい!リターンズ 星のや東京編(2)
つづくは、「ずわい蟹とリ・オレ」
こちらは渡り蟹を使用したコンソメジュレ、フレッシュチーズと、さらに、乳酸発酵酒粕を使い、仕立てたライスプディングのリ・オレの上に、ずわい蟹のほぐし身を散りばめた、華やかな料理。
ジュレを借景に、きらきらと輝くずわい蟹は、「僕は鳥取県の境港のあたりの出身なのですが、実家から10分くらいのところから仕入れています」と、浜田さん。東京に来てからの浜田さんの料理は、どこか海が感じられるところがあったのですが、なるほどそういうわけかと膝を打ちました。気高く清らかな味わいの蟹は、カリフォルニア州北部、ポッター・バレーの、辛口のリースリングにぴったりです。
さぁ、メインは小鍋仕立ての「鴨と焼ねぎのすき鍋」。ローストした鴨のムネ肉と焼ねぎに、熟成酒粕を使用した割下を合わせています。そして、なんとフォアグラも! 安土信長ネギやまいたけ、タルティーボといった野菜はくたくたになるまで煮込むのがお勧め。マダガスカル産のヴィチペリフェリペッパーもよいアクセントになって、そのすべてが混然一体というか、オーケストラから繰り出される交響曲のように重層的です。
秀逸だったのは、浜田さんが「僕はずっと前から、フォアグラは鍋に入れるとめちゃめちゃ美味しいと思っていたんです」と語ったフォアグラちゃん。熟成酒粕を加えることで旨味がパワーアップした割下がしみ込み、和の要素を身にまとったフォアグラ……いいです、いいです、とてもいいです。和出汁と、こんなに相性が良かったんだ……。
デザートは、筒状にかたどった薄い飴に、スポンジやクランブル、フレッシュなあまおうを重ね、最後にクレーム・シャンティ(生クリームを泡立てたもの)を注いだ、「苺とクレーム・シャンティ」。クレーム・シャンティは、軽やかな酸味が特徴のレ・リボというフランスブルターニュ地方の伝統的な発酵乳製品と、ホワイトチョコを合わせることで香り高い上品な甘みのあるものに仕上げているのだとか。さまざまな食感が楽しめるのも魅力です。
「Nipponキュイジーヌ ~発酵~」は、日本が誇らしくなり、フランスへの思慕が募る、そんなコース料理でした。そして、浜田さんの愉快な人柄も、料理に反映されているとお見受けしたのですが、いかがでしょうか(笑)。
最後になりましたが、「星のや東京」についてもご紹介しますね。えーっと、何から書こうかな(笑)。ここ、ホント、お伝えしたいことがたくさんありすぎるんですよね。そもそも「星のや」とは、「夢中になる休息」をコンセプトに、各施設が独創的なテーマで、圧倒的非日常を提供する施設であり、創業108年目を迎える「星野リゾート」のフラグシップブランドであるということ。なかでも「星のや東京」は大手町駅直結、かつ東京駅からも歩ける場所にあるというのも大きな利点だと思います。
開業は2016年。地下2階、地上17階建の建物で構成される“塔の日本旅館”です。樹齢300年以上ともいわれる青森ヒバの大きな木扉をくぐり、靴を脱いで足を踏み入れれば、そこは圧倒的な非日常空間。ああ、あのヒバの木扉は、ある意味、結界だったのかもしれません。エレベーターの音に拍子木を使うなど、ほっこりした気持ちになれる仕掛けも。最初、聞いた時は「何ごと?」と耳を疑いましたよ(笑)。
客室は各フロアに6室。フロアごとに、その階の宿泊者だけが利用できる「お茶の間ラウンジ」があり、ソフトドリンクやちょっとしたお菓子が置いてあります。客室の特徴は、なんといってもこだわりの「畳ソファ」。畳に慣れていない人も増えている、現在の生活スタイルに合わせ、家具はテーブルやソファを取り入れつつも、座った際、正座をしたときと同じ目線になるように作られているのだとか。……そう言われたら座りたくなりますよね。ふむふむ。たしかに、やっぱ日本人はコレだね、と言いたくなるような座り心地の良さでなかなか立ち上がることができませんでした。
そして、忘れちゃならないのが(忘れないけど)、地下1500mから湧き出る「大手町温泉」の存在です。私はここのお湯の大ファン。泉質は、含よう素-ナトリウム-塩化物強塩温泉。“太古の海水”とも称される塩分濃度の高い温泉です。塩分が強い温泉って、「うわあ温泉に入ってる」感がしませんか? 内風呂をぐいぐいと進んでいくと、露天風呂につながっています。高い壁に囲まれていますが、その塀で四角く切り取られた、東京の空も風流ですよ。
これもお伝えせねば! 東京の酒蔵の日本酒と、おつまみが無料で提供されます。お酒もおつまみも季節によって異なり、私が訪れた2月は、日本橋の老舗「神茂」のはんぺんが入った、おでんが楽しめました。東京にはまだまだ食べたことがない、美味しいものがあるなあと驚かされます。
季節ごとの、また東京ならでは体験ができるアクティビティも充実しています。私が今回チャレンジしたのは、平安時代の貴族たちが山を賭けるほどに夢中になった香道。星のや東京では、現代版の香炉を使い、3種の香木のかすかな違いを聞き分ける「今様香り合わせ」(有料)が楽しめるのですが、これがなかなか難しい! 私、以前も別の場所で体験したことがあるのですが、当たった試しがありません。今回も惨敗! ほんと山を持ってなくてよかったです。そして、スタッフが香道の歴史をわかりやすく解説してくれるのも面白かったなあ。
近隣のビルの屋上で行う剣術の動作と深呼吸を組み合わせたオリジナルの稽古「天空朝稽古」(無料。要予約)もぜひ参加したかったのですが、取材日は雨天により断念。地上160メートルで行う朝稽古は、間違いなく記憶に残る体験になるはずです。無念ですが、次回のお楽しみとしてとっておきましょうかね。
星のや東京
- 住所|東京都千代田区大手町一丁目9-1
- 客室数|全84室
- パブリック施設|温泉、ダイニング、スパ、講堂
- チェックイン/チェックアウト|15:00/12:00
- 宿泊料|1泊1室11万2000円~(税・サービス料込、食事別)
- 交通|東京駅丸の内北口出口より徒歩10分、東京メトロ大手町駅A1もしくはC1地上出口より徒歩2分
問い合わせ先
星のや総合予約
Tel.0570-073-066
https://hoshinoya.com/