ワインも食材も地元愛! ペアリングディナー初心者にぜひお勧めしたい、破格コスパの絶品イタリア料理|TRAVEL

「野菜畑」。アマランサスや雑穀のたかきび、エゴマなども添えられていて、ぷちぷちっとした食感も楽しく、また、この春は、「鶏肉のコンフィや豚肉のさまざまな部位を使い、テリーヌのように仕上げたものも入れさせていただいています」(鎌田さん)。

LOUNGE / TRAVEL
2022年6月11日

ワインも食材も地元愛! ペアリングディナー初心者にぜひお勧めしたい、破格コスパの絶品イタリア料理|TRAVEL

「知る」は、おいしい!リターンズ 星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳編(2)

オットセッテのスペシャリテ「野菜畑」

さぁ八ヶ岳の野菜畑を一皿で表現した「オットセッテ」のスペシャリテ、本日のスター選手、「野菜畑」がやってきましたよ。アスパラガスやビーツなど30種類の野菜を、色鮮やかなパプリカ、金美ニンジン、キャベツ、蕪のソースとともに味わいます。「食感を残す感じで軽く茹でたり、厚さにもこだわったりと、それぞれの野菜をいかに美味しく食べていただけるか、考えながら作っています」って、ちょっとー、鎌田さん、食べる前から次の季節も来たくなるようなこと言わないで〜(笑)。
多彩な表情を持つ、このスペシャリテに合わせるのは、先ほど伺った、「小牧ヴィンヤード」のソーヴィニヨン・ブラン(2019年)。「このヴィンテージは少し樽も使っていて、ソーヴィニヨン・ブランらしいさわやかさに樽の風味も加わり、いろいろなお野菜の味を引き立ててくれます」(長久保さん)。そのマリアージュの妙を全身全霊で体験したく、私はそっと目を閉じました。あ、寝てたわけじゃないんですよ。
「食感」。ふわっと優しく火入れされた虹鱒に、パリパリになった皮。まさに食感の妙。
「食感」と名付けられた温前菜は、「虹鱒と菜の花 ジュニパーベリー」。地元で獲れた虹鱒を低温でじっくり加熱し、ジンの原料として知られるハーブの一種、ジュニパーベリーを使ってスモークしています。卵黄などをベースにしたザバイオーネソースに、山梨の甲州味噌の上澄みで、コクを加えているところがまた心憎い(笑)。そんな、ほんのり赤みを帯びた虹鱒ちゃんに合わせるのは、山梨県北杜市のワイナリー「ラトリエ・ド・ボー・ペイサージュ」の「ツガネ・ラ・モンターニュ 2019」。
「ん?」と思った人も多いのでは? 映画『ウスケ・ボーイズ』で話題を呼んだ、岡本英史さんが作る、メルロー100%のナチュラルワインです。私がごちゃごちゃ言っても仕方ありません。長久保さんにそのマリアージュを紹介してもらいましょう。
「プルーンのような複雑な果実味と、和を感じさせる梅ガツオのようなニュアンスも併せ持っています。ジュニパーベリーの香りに相乗するような果実味とスモーキーさ、ほどよいスパイス感もあり、虹鱒に寄り添うように、その美味しさを引き出してくれます」
個人的にはこのペアリング、現時点における、“最高 of the year”のトップに君臨中です。
2 品目のパスタ料理は、目の前でグラナパダーノを削っていただきます。
パスタは2品。1品目は、山梨にある煮貝の文化に着想を得た、つぶ貝と4種の山菜(ウド、こごみ、うるい、行者ニンニク)を使ったスパゲティです。「芽吹き」という素敵な名前を持ち、個性的な味わいやフレーバーを持つこちらの料理に寄り添うのは、甲州種を19ヵ月ものあいだ、樽で熟成させた「光甲州 2019」(ルミエール)。ワインを口に含んだあと、たまり醤油の風味がより増したように感じたのは決して気のせいではなかったはずです。
2品目のパスタ料理、「恵み~鹿肉のパッパルデレ グラナパダーノ」も印象に残る一皿です。鹿肉を赤ワインやトマト、プラムやハーブなどとともに煮込み、チーズを絡めていただくラグーソースのパスタに合わせるのは、3種類のブドウ(プティヴェルド44%、メルロー42%、タナ14%)をアッサンブラージュした、「ドメーヌ・ルバイヤート 2018」(丸藤葡萄酒工業)です。酸は穏やかながらもタンニンは緻密で、鹿肉の風味にぴったり! 「今回はラグーに合わせましたが、メイン料理に合わせても遜色ありません」(長久保さん)。メインまで少しワインを残しておこうと思いましたが、私には無理な相談でした。
「湧水と大地」。岩魚はふっくらと焼き上げられ、旨味が効いた岩魚の出汁を泡状にした軽やかなソースと、ふきのとうのピュレと共に、私たちのテーブルにやってきました。
「湧水と大地」(魚料理)は、「岩魚のグリル ふきのとう 紫蘇の風味」が用意されていました。岩魚というと、少し身構える人がいるかもしれませんが、鎌田さん曰く、「山に近いところで摂れた岩魚は、くさみが少ないんです。みなさん、思っていたより、くさみがなかったと驚かれます」。合わせるワインは、「ふきのとうのほろ苦さも、岩魚の出汁の旨味も何も言わず受け止めてくれる」(長久保さん)、長野県の「ファンキーシャトー」の「ストラトゥ・キャッセ」です。蜜を感じる甘味を持つセミヨンを主体としたワインで、岩魚の出汁をたたえる、優美ささえ感じるスープに合わせたそうです。ふきのとうの苦味もやさしく和らげます。
「春の息吹」。噛めば噛むほど旨味を増す甲州産の牛肉が使用されています。
メインの「春の息吹」(肉料理)は、「牛肉のロースト グリーンピースのピューレと筍」です。お皿にはグリルした筍と、グリーンピースのピューレとエストラゴンを加えたコンソメのソースが添えられていました。春爛漫の肉料理に長久保さんが合わせたのは、勝沼の老舗「中央葡萄酒」の「あけの 2019」。「果実味を支える酸のバランスが絶妙なワインです。4種類のブドウを使っているのですが、それぞれの個性が垣間見られるところもすばらしい。春らしい青々とした素材によく合います」(長久保さん)。
お口直しのデザートに続き、メインのデザート(デザートだけで2品出ます!)は「爽快〜苺とクレソンのメリンガータ」でした。この2つのデザートに合わせるのは、山梨県塩山市の奥野田ワイナリーの「ラ・フロレットローズ・ ロゼ 2021」です。ワインが放つ、セクシーなバラの香りに包まれながら、2時間強の極楽時間を反芻します。
そもそも私、リゾートホテル内のレストランでありながら、10品のコースで1万2100円(税・サービス料込)って、かなりの掘り出し物件だと思うんですよね。9種類のワインペアリング(デザートは2種に1つのワイン)は、9500円(税・サービス料込)。すべて国産(しかも山梨・長野限定!)とはいえ、破格じゃないですか !?  朗らかでどこか凛々しさも感じる「オットセッテ」自慢の八ヶ岳イタリア料理。そして、ストーリー性があり、的確なワインペアリングは、テロワールの奥深さ、なにより楽しさを教えてくれます。
その日、鎌田さんが語った「まだまだ挑戦したいことはたくさんあります」という力強い言葉は、いつまでも私の頭のなかでリフレインしていました。

星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳

  • 住所|山梨県北杜市小淵沢町 129-1
  • 客室数|全172室
  • パブリック施設|波の出る屋内プール、大浴場、メインダイニング、20店舗のセレクトショップ
  • チェックイン/チェックアウト|15:00 / 12:00
  • 宿泊料|1泊1室 2万4000円〜(税・サービス料込み。朝食付き)
  • 交通|JR 中央本線小淵沢駅から無料シャトルバスで5分、中央自動車道小淵沢ICからクルマで5分
問い合わせ先

星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳
Tel.0570-073-055(リゾナーレ予約センター)
https://risonare.com/yatsugatake/

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