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2020年9月1日
「知る」は、おいしい! 星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳|TRAVEL
TRAVEL|星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳
遠出がはばかられる2020年夏、ワインリゾートをコンセプトとする「星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳」(以下、リゾナーレ八ヶ岳)に行ってきました。もちろん飲んで、食べて、ワインを満喫するためです(キリッ)!
Photographs by OHTAKI Kaku|Text by HASEGAWA Aya|Edit by TSUCHIDA Takashi
ニッポンの豊かなテロワールを、これでもか! と堪能し尽くす怒涛の11品
南アルプス連峰の雄大なロケーションに抱かれたリゾナーレ八ヶ岳は、山梨・長野県境の標高960メートルに位置。イタリアの巨匠マリオ・ベリーニ氏が建築デザインを手掛けており、雄大な自然のなか、彼の故郷であるイタリアの山岳都市の街並を彷彿とさせる空間が広がっています。
リゾナーレ八ヶ岳(旧・リゾナーレ小淵沢)は、2001年に星野リゾートに運営権が移行。2006年からは、自然に逆らわない醸造方法にこだわる近隣のワイナリー「ドメーヌ ミエ・イケノ」と提携し、ワインリゾートとして新たなスタートを切りました。山梨県は国産ワインの発祥の地であり、リゾートのある北杜市は、2008年に日本で初めて「ワイン特区」に認定された場所。周辺には小規模ワイナリーがいくつもあります。
そうです、日本におけるワイン天国なんです、ココ。
今回のお目当ては、同リゾートのメインダイニング「オットセッテ」が誇る「Vino e Verdura」(ヴィノ・エ・ヴェルドゥーラ)。ヴィノがワイン。ヴェルドゥーラが野菜。そう、“ワインと野菜”という名前の通り、前菜、メイン、そしてデザートに至るまで、野菜を主役とした全11品の料理と、山梨・長野、両県産の10種ワインのペアリングで構成された珠玉のコースです。
とはいえ……全皿野菜が主役って!? ワインは山梨&長野限定などなど、おや?おや? という疑問を抱きつつも、まずはいただいてみようじゃありませんか! コースはその時々で最も美味しいものを提供しているため、素材およびペアリングワインは時期によって変わりますが、2020年初夏にいただいた「ヴィノ・エ・ヴェルドゥーラ」のハイライトをピックアップしてご紹介していきますね。
乾杯のしゅわしゅわは、甲州種をシャンパーニュと同じ製法(瓶内二次発酵)で醸造した「キザン・トラディショナル ブリュット2017」(※上の写真の左端)。きめ細やかでクリーミーな泡、軽やかだけれど長く続く余韻など、ひと口、またひと口とグラスを傾けるごとに、その実力を実感します。日本のスパークリングワイン、やるじゃん!!
最初の前菜は「自然」。八ヶ岳を育む"水"土"森"太陽"をテーマにした、小さな4つの料理で構成したもの。土を模したじゃがいものパウダーの下で、フレッシュなラディッシュと蕪のムースとが手を取り合っている“土”、シャーベット状にしたソースに、体が目覚めるようなトマトの冷製カッペリーニ“太陽”といった料理は、ペアリングワイン共栄堂「K19 AK_DD」と共に。果皮を醸して作られる橙(だいだい)と呼ばれるワインは、香辛料のような香りに加え、渋味もあり、4つの料理すべてを抱擁しつつ、自らの存在感もしっかりと放っていました。
続いての前菜「恵み」は、30種類の地元野菜たちが華麗に競演を果たす、「ヴィノ・エ・ヴェルドゥーラ」のフィロソフィーを体現するようなひと皿。夏の野菜畑のような華やかなルックスに食べる前からメロメロです。
「フレッシュ、マリネ、ボイルなど、野菜のポテンシャルを最大限に引きだす調理法でご提供したいと考えています」と語るのは、料理長の鎌田匡人(かまた・まさと)さん。例えばカリフラワーは食感が残るようにボイルし、ビーツは「それぞれの味わいの違いを楽しんで欲しい」と、生とボイルの両方が用意されていました。
それぞれ個性のある野菜をひとつひとつ噛みしめながらいただくのが楽しいこと! ソースは、小松菜と、クミンシード風味の人参の2種。3種の雑穀も添えています。ワインは、日本では珍しいアルバリーニョというブドウ品種で作った白ワイン「ドメーヌ・ソガ アルバリーニョ2019」。ミネラル感と、しっとりとした果実味が、野菜に寄り添っていました。
そもそもの質問なんですけど、なんで八ヶ岳の野菜って、こんなに美味しいんでしょう? と、おそるおそる聞いてみると、「水もいいし、寒暖差もあり、野菜が美味しく育つ環境が整っています。これからの季節はキノコもいいですよ」(鎌田さん)と登場したのが、「松茸よりも香りが強い」(鎌田さん)香茸で出汁をとったスープ。チチダケ、タマゴタケといった、季節のキノコとともにいただきます。キノコの野性味に合わせるワインは「ツガネ・ラ・モンターニュ・トランス2018」。お出汁を思わせるような土のような香りが特徴のメルローでした。
パスタは茄子を主体としたオイルベースのもの。アクセントに、葱と茗荷、そしてアンチョビが効いています。「茄子はゆっくりとローストし、旨味をしっかり引き出しソースにしています」(鎌田さん)。そしてヴォータノ・ワイン(塩尻市)の「ケルナー2018」は、若いヴィンテージでも熟成感があり、ねっとりした茄子の甘みを引き立てていました。
八ヶ岳の大地で育った、旬のヤングコーンは、「シンプルにロースト」(鎌田さん)しています。「焦がしバターと赤ワインビネガーで酸味を加え、ローストしたくるみを加えてコクを出しました」(鎌田さん)。甘く、瑞々しく、青春真っただ中といった風情のヤングコーンは、シャキシャキとしたヒゲさんが顔をのぞかせます。
そしてこのひと皿とのワインマリアージュが、また鼻息荒く絶賛したい素晴らしさでした。ブルゴーニュで修業を積んだ、女性醸造家が手がけるキスヴィン・ワイナリーの「シャルドネ2018」は、雑味のない清廉とした果実味が印象的です。このワイン、ステンレスタンクとフレンチオーク樽で熟成したものを合わせているそうで、ソムリエ長久保 正邦さんによれば、「焦がしバターやナッツのフレーバーと、ワイン樽の香ばしさに共通点を感じて」、ペアリングしたとのこと。なるほど焦がしバターが香るヤングコーンの青々としたクリーミーさが、より重層的になります。ワインを合わせることで、ヤングコーンは確実に華やぎを、そして「同じ土壌で育った、野菜とワインが合わないわけはないんです」という料理長 鎌田さんの言葉が説得力を増します。
そしてメインはなんと! じゃがいもです。
ぱっと見わからないかもしれませんし、大切なことなので二度言いますが、メインとなるじゃがいもは、じゃがいもの皮と、赤ワインのパウダー、竹炭で作られた“土”に埋まったままテーブル席に届けられます。サービスのスタッフが恭しく掘り起こして、“収穫”してくれました。