MOVIE|美しいモノクロームの世界で描かれるジプシー初の女性詩人の生涯『パプーシャの黒い瞳』
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2015年4月3日

MOVIE|美しいモノクロームの世界で描かれるジプシー初の女性詩人の生涯『パプーシャの黒い瞳』

MOVIE|美しいモノクロームの世界で描かれるジプシー初の女性詩人の生涯

クシシュトフ・クラウゼ監督の遺作『パプーシャの黒い瞳』

ジプシーで歴史上はじめての女性詩人、プロニスワヴァ・ヴァイス(愛称パプーシャ)の生涯を見つめたポーランド映画『パプーシャの黒い瞳』。4月4日(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショーされる。

Text by YANAKA Tomomi

ポーランド映画界を代表する女優ヨビダ・ブドニクが熱演

美しいモノクロームの世界で描かれるひとりの女性の生涯。良質な映画の産地として知られるポーランドからまたひとつ、心を響かせる名作が届いた。

監督を務めたのは、『ニキフォル 知られざる天才画家の肖像』などで知られるクシシュトフ・クラウゼとヨアンナ・コス=クラウゼの夫妻。残念ながら、クシシュトフ・クラウゼ監督は昨年末に61歳で永眠。『パプーシャの黒い瞳』は彼にとっての遺作となった。

パプーシャの黒い瞳

パプーシャの黒い瞳

人形を意味する“パプーシャ”の愛称で呼ばれる詩人のプロニスワヴァ・ヴァイス役には、ポーランド映画界を代表する女優ヨヴィタ・ブドニク。またポーランドが誇るベテラン俳優のズビグニェフ・ヴァレリシや、人気俳優のアントニ・パヴリツキらが出演。奥深い世界をつくりあげている。

詩で心の翼を広げていくパプーシャ

ジプシーの赤ん坊として生まれてきたプロニスワヴァ・ヴァイス。人形が好きなまだ幼い母親は、その子に“人形”を意味するパプーシャと名づけるのだった。書き文字をもたず、文字を「よそ者の呪文」「悪魔の力」と忌み嫌うジプシーの一族に生まれながらも、幼いころから言葉に惹かれ、文字に惹かれたパプーシャ。彼女は詩で心の翼を広げていく。

パプーシャの黒い瞳

15歳で自分の意思に反して結婚させられるなど、ジプシーの社会で生きてきたパプーシャは、あるとき警察に追われるひとりの詩人の男と出会う。彼と交流を深めるなかで、ジプシー女性として初の「詩人」として、その才能を開花させる。

しかしその才能は、外部者に秘密を漏らさないことを掟とするジプシーの社会においてさまざまな波紋を呼び、彼女の人生は大きく変わることに――

美術家の奈良美智が「流れるモノクローム映像は、時の流れを緩やかにする。旅する人々が奏でる音に、心は静かに高まるが、哀しみに向かって話は進み、ただただ美しい映像の中、その哀しみだけが主人公の孤独に寄り添っている」とコメントするなど、国内でも各方面から絶賛されている本作。モノクロームの美しき映像がパプーシャの詩の世界へと私たちを招き入れる。

『パプーシャの黒い瞳』
4月4日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開
監督・脚本│ヨアンナ・コス=クラウゼ/クシシュトフ・クラウゼ
出演│ヨヴィタ・ブドニク、ズビグニェフ・ヴァレリシ、アントニ・バブリツキ、アルトゥル・ステランコ
配給│ムヴィオラ
2013年/ポーランド/131分
http://www.moviola.jp/papusza/

© ARGOMEDIA Sp. z o.o. TVP S.A. CANAL+ Studio Filmowe KADR 2013

           
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