MOVIE|マークス・イムホーフ監督、ミツバチが消えた謎を追うドキュメンタリー『みつばちの大地』
MOVIE|マークス・イムホーフ監督、ミツバチが消えた謎を追う
ドキュメンタリー『みつばちの大地』
ミツバチと人間の深い関係と、その関係が脅かされる今日の状況を、最新の撮影技術をもって映像化したドキュメンタリー『みつばちの大地』。5月31日(土)より、岩波ホールほか全国順次公開される。
Text by YANAKA Tomomi
専用のスタジオを用意し、ミツバチの驚くべき生態を記録
緑豊かな大地と多くの生命を支えるミツバチ。人間が生まれるより300万年早い、500万年前もの太古の昔から植物の花粉を運び、地球上の生命を育んできた。そして、私たち人間が食べる野菜や果物の三分の一は、ミツバチの受粉の恩恵によるものといわれている。しかし、この15年ほどの間に、ミツバチが大量死したり、失踪する現象が世界中で起きるなど、ミツバチを巡る環境に懸念が広がっている現実がある。
ミツバチが消えた謎を追うとともに、驚くべき生態を見事に捉えたドキュメンタリー『みつばちの大地』が到着。代々養蜂をおこなってきた家庭に育ったというマークス・イムホーフ監督が、スイスやアメリカ、中国、オーストラリアへと飛び、ミツバチが直面する現実を浮き彫りに。さらにミツバチの生態をつぶさに記録するべく、専用のスタジオを用意。真っ暗闇の巣箱のなかに、黄金色に輝くミツバチの世界を作り出し、女王蜂誕生の瞬間やミツバチのダンスなど、普段は目に触れない巣箱内の様子をも捉えている。
世界各地を旅し、ミツバチが直面する現実を丹念に取材
世界中のミツバチがいなくなった原因を求めて旅に出たマークス・イムホーフ監督。その旅は、スイスの山岳地方に住む養蜂家にはじまり、世界へと広がっていく。アメリカでは、ミツバチが受粉のために全米を農園から農園へと長距離輸送されていく姿を取材し、オーストリアでは女王蜂を育て世界中へ発送している一家に会う。
文化大革命のときにミツバチが退治されてしまった中国では、花の受粉を人間の手でおこなっている姿を捉え、アメリカ・アリゾナ州では攻撃的で知られるキラービーの養蜂家に会う。
さらに旅はつづき、イムホーフ監督の娘一家がミツバチを研究するオーストラリアへ。ここではミツバチの大量死がまだはじまっていない。彼らは太平洋に浮かぶ孤島に人工交配させたミツバチを放っている。果たしてこの島は、ミツバチにとってノアの方舟になるのだろうか――?
かつて物理学者のアインシュタインは、「地上からミツバチが絶滅したら、人類も4年で滅びる」と語った。世界各地をめぐり、ミツバチの実情を丹念に取材したイムホーフ監督。人間の活動が、ミツバチだけではなく地球の多様な生命、ひいては自らの存在をも脅かしている現実を紡ぎだしてゆく。
『みつばちの大地』
5月31日(土)より、岩波ホールほか全国順次ロードショー
監督│マークス・イムホーフ
出演│フレッド・ヤギー、ジョン・ミラー、ランドルフ・メンツェル教授
配給│シグロ
2012年/ドイツ・オーストリア・スイス/91分
http://www.cine.co.jp/mitsubachi_daichi/
© 2012 zero one film / allegro film / Thelma Film & Ormenis Film