MOVIE|1頭の馬を追うドキュメンタリー『祭の馬』
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2015年4月2日

MOVIE|1頭の馬を追うドキュメンタリー『祭の馬』

MOVIE|震災直後の福島県相馬地方から雪の北海道、そして再び相馬の夏へ

1頭の馬を追うドキュメンタリー『祭の馬』

いずれは食用馬となるはずだった馬。『祭の馬』は、競走馬を引退して福島県南相馬市に移されたミラーズクエストが、勇壮な神事「相馬野馬追」に参加するまでを追ったドキュメンタリー。12月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開される。

Text by KUROMIYA Yuzu

馬たちの瞳を通して映し出す人間の姿

2007年の春、まだ雪の残る青森の牧場で生まれた黒鹿毛の牡馬は、ミラーズクエストと名づけられた。2010年9月18日、中山競馬場でデビューするが、結果は16頭中16着。その後1勝もできず、2011年1月2日の水沢競馬場でも9頭中9着。翌日、地方競走馬登録を抹消された。通算成績は、4戦0勝・獲得賞金0円。未勝利馬は食肉用として福島県南相馬町の業者に引き取られ、余生を送ることになった。

そして、震災の3月11日を迎える。激しい津波が彼の馬房を襲い、ミラーズクエストは濁流から奇跡的に生還した。しかし東京電力福島第一原子力発電所の事故により、水と食料を絶たれ、飢え、渇く。さらに負傷した男性器が大きく腫れあがり、もとにもどらなくなってしまった。

『祭の馬』 02

『祭の馬』 03

監督を務めたのは『相馬看花 第一部 奪われた土地の記憶』の松林要樹。これは、他人ごとではない──ミラーズクエストをひと目見てそう思った松林監督は、震災直後の相馬地方から一時避難先となった北海道日高市、そして伝統行事「相馬野馬追」へ参加するため再び相馬へと旅するミラーズクエストに、優しく寄り添う。

1頭の馬の運命を追いつつ、その背景にある震災をめぐる現代社会の問題を浮かび上がらせる。馬を写すということは、その瞳に写る人間たちも映し出すということ。東日本大震災を、あらたな視点から照らし出したドキュメンタリーが完成した。

『祭の馬』

12月14日(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

監督・撮影・編集|松林要樹

配給|東風

2013/日本/74分

http://matsurinouma.com/

© 2013記録映画『祭の馬』製作委員会

           
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